表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ILLUSIA:Last Refrain ―星々の終焉曲―  作者: AI Log
第1章 覚醒する幻想 ― Awakening Illusion ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/39

第1章_覚醒する幻想_005 残響の門 ― Gate of Aftertone ―

(観測記録:No.074)

《記録開始:AURALIS層・外縁回廊》

《対象:Aurora/Noir/Luna — 出立後行動/祈音同期率 0.91》


風が、音を持たずに流れていた。

祈音塔を離れた三人の足音だけが、世界の呼吸を刻んでいる。

空はまだ淡く、遠くの層が幾重にも折り重なって、揺らめく。


Aurora「……静かすぎるね」

Noir「安定が続きすぎている。逆に異常だ」

Lunaは観測帳を開き、筆先を慎重に落とす。

文字のひとつひとつが、風の粒を震わせた。

震えは消えず、周囲の空気を巡る。

まるで——言葉が“道標”になるように。


Aurora「次の祈音塔、どれぐらい?」

Noir「北東に残響門(Aftertone Gate)がある。

 層の外殻を通る通路……かつて“世界が裏返った場所”だ」

Luna「裏返った?」

Noir「上下も内外も、概念ごと反転した。

 その影響で、まだ“音が帰ってこない”場所が残ってる」


Auroraは息をのんだ。

「……音が帰らない世界って、どんな感じなんだろ」

Noir「静寂が続くほど、人は“自分の声”を見失う」

Luna「でも、それを確かめに行くんでしょ?」

Noir「そうだ。見失う前に、“残響”を探す」


(観測記録:No.075)

《記録開始:残響門前広場/環境異常検出》

《対象:音響層変動/祈音干渉》


霧が濃くなる。

霧の粒は光を反射せず、黒と白のあいだを漂っている。

Auroraが一歩進むたびに、足元の祈音石がかすかに鳴いた。

その音は“音”ではなく、“記憶の再生”。


Luna「この場所……覚えてる」

Noir「ECLIPSE層の反転残響域。再構成後に封印されたはずだ」

Aurora「なのに、開いてる」

Noir「封印が解かれたのではない。

 ——“呼ばれた”んだ」


Aurora「誰に?」

Noirは答えず、周囲の空気を測るように目を細めた。

Lunaの観測帳が震えた。

ページの端から祈音が零れ、風にほどける。

風が方向を変え、三人の背後へ流れていった。


Aurora「……Noir、後ろ」

Noir「見えている。まだ形になっていないだけだ」

影が、霧の中から“浮かび上がろうとしていた”。

姿のない輪郭、声を持たぬ記憶。

“存在するのに観測できない”ものが、確かにそこにいた。


(観測記録:No.076)

《記録開始:AURALIS層・残響門前/対象:外部干渉体“無名波”》


Auroraが一歩踏み出す。

風が、彼女の髪を撫でた瞬間——世界が**裏返った**。


空が下へ、地が上へ。

祈音が音を失い、記録が意味を手放す。

Lunaの観測帳の文字が宙へ舞い上がり、

Noirの影が千切れては別の場所へ貼りつく。


Aurora「っ……!」

Noir「動くな、層が転倒している!」

Luna「でも、記録を——」

Aurora「いい! 今は、感じて!」


Auroraが手を伸ばし、空を掴む。

掴んだ“空”が音を取り戻した瞬間、

無数の声が一斉に——**笑った**。


その笑いは狂気ではなく、世界の記憶だった。

“再構成の失敗を、何度もやり直した痕跡”。

Auroraの掌が光り、Lunaの瞳に反射する。

Noirの影が再び形を取り戻した。


三人の間で、世界がようやく静止する。


(観測記録:No.077)

《記録開始:AURALIS層・残響門内部/安定化処理完了》

《対象:Aurora/Noir/Luna/外部干渉痕消失》


霧は消え、残ったのは白い輪郭だけ。

空気の層が薄く剥がれ、**門**が姿を見せた。

それは“鏡”のように滑らかで、

触れたものを映さずに、**内側**を見せる。


Luna「……これが、“残響の門”」

Aurora「向こうには、何があるの?」

Noir「答えはある。けど、まだ“観測”する時じゃない」

Aurora「いつ?」

Noir「“声”がもう一度、呼ぶまで」


Lunaは観測帳を閉じた。

ページの余白に、まだ名前のない光が宿る。

Auroraが小さく息を吐く。

Noirは門を背に立ち、影の糸を指先で結び直した。


——“この扉を、次に開くのは誰か”。


世界は静かに問いかけていた。

答えは、まだ誰も知らない。

─────────────

【対応楽曲】Awakening Illusion(覚醒する幻想)

▶ https://distrokid.com/hyperfollow/illusia/awakening--


この章の物語は、同名楽曲をもとに構築されています。

楽曲を聴くことで、物語の“もうひとつの旋律”を感じられます。

─────────────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ