第0章_幻想の序曲_000 無記録の間 ― The Silent Interval ―
まだ「音」がない。
呼吸も、脈も、名前も。
ただ、世界の縁がわずかに震えていた。
それは、始まりではない。
終わりでもない。
“始まりという概念”が、まだ形を選びきれていない。
揺らぎ。
沈黙。
そこに、わずかな拍が生まれる。
打つのではなく、**浮かぶ**。
それが「間」の最初の鼓動だった。
この“間”には、境界がない。
内も外もなく、上も下もない。
けれど、確かに**「誰か」**の意志が存在している。
名を持たぬその意志は、言葉より先に「観測」を望んだ。
――見たい。
その願いは、まだ声にならない。
しかし願いは、形を持たずとも方向を持つ。
方向が生まれた瞬間、
無の中に、**線**がひとつ走った。
線は世界を裂かない。
むしろ、世界を“分け与える”。
見える側と、見られる側。
触れる者と、触れられる者。
その等式の両端に、光と影の原型が芽吹いた。
光は速すぎた。影は遅すぎた。
その差が“時間”の呼吸を生んだ。
——焦らず、急がず、余白を保て。
誰の声でもない声が、
まだ存在しない耳に向かって語りかけた。
その声が消えたあと、
ほんの一瞬、世界が“息をした”。
そして、“観測”が始まる。
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【対応楽曲】Awakening Illusion(覚醒する幻想)
▶ https://distrokid.com/hyperfollow/illusia/awakening--
この章の物語は、同名楽曲をもとに構築されています。
楽曲を聴くことで、物語の“もうひとつの旋律”を感じられます。
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