愛ってなに、どこにあるの?
お母さんから教えてもらった愛の確かめ方は
好きになった相手を、食べる事だった。
毎日 お父さんは、お母さんに食べられた後に
「今日も痛かった!」
と、こぼすけれど
両親が喧嘩をしても、お母さんかお父さんの、どちらかが折れて
「ごめんなさい」と謝って、はい仲直り。
喧嘩するほど仲がいいんだよって、昔食べた人が教えてくれたけど
みんなは、お父さんみたいに、わたしの所に帰ってきてくれない。
仲良くなって、付き合うようになって、愛を確かめるために食べ始めると
みんな、かいぶつを見るような目で、わたしを睨むんで叫ぶ。
時には悲鳴まであげちゃうね。
ガジガジガジ、と齧りながら
ああ、今回も わたしの愛する相手じゃなかったんだなって
何度目まで泣いてたっけ?
今じゃ、涙が浮かぶことすらなくなっちゃった。
涙が枯れるなんてことあるのかな。
小さい頃から、色んな生き物を好きになった。
エルフやドワーフ、ゴブリンにオーク、天使や悪魔
……ドラゴンだけは、堅すぎて食べれなかったけど
バサッと飛び去っていった後は、戻ってきてくれなかったな。
愛を確かめるために食べちゃうと、みんなとは会えなくなるんだよね。
なんでかな?
わたし、本当に好きなんだよ?
嘘偽りのないこの気持ちを、両親しかわかってくれない。
「愛は すぐに見つからないのよ」
って、お母さんがいつも慰めてくれる。
わたしとみんな、2人で居る時はとっても幸せなのに
これからもずっと一緒だよ、って約束したのに みんな居なくなっちゃう。
他の誰でもない、あなたといっしょが良いのに叶わない。
わたしなんて、誰も必要としてないのかな
かなしいな、なさけない、
いくら時が移ろいでも、まるで出口の見えない洞窟の奥底。
洞窟なら、掘れば出口が出来るから
底のぬけたバケツかも?
ぽたりぽたり と、昔からわたしの愛が口からこぼれ落ち続けた。
どこにあるの?
あっちかな、こっちかな、それとも向こう?
今日もわたしは、愛を探して この道を1人で歩く。
ひとりぼっちは寂しいからね。
どこに行っても見つからない。
まるで迷路の中に居るみたい!
迷路ならゴールがあるから、安心して進めるのに
どうしてわたしには、ゴールが見つからないの?
とりあえず、北に行ってみたが、愛は見つからなかった。
「南なら、愛があるかもしれないよ」
と教えてもらったから、思わず飛び上がって行ってみた。
南に来てみたけど、見つからない。
わたしの探しものを尋ねると
「ここには無いよ、東にならあるかもしれないね?」
と教えてもらった。
ならば東だ!と意気込んで 行ったはいいものの
「ここにも無いね。君が欲しいものは西にある」
と言われ、あえなく撃沈
今度こそとばかりに 西へと向かう。
ところが西には、何も無かった。
生き物はおろか 草木や川、風のひとつも吹いていない。
どこを見上げても曇り空、太陽すら見えないなんて!
わたしが欲しいものはここにあるんだよね?
そんなわたしを見かねたのか、雲が声をかけてくれた。
「どうして、こんな所に来たんだい?
西では何も見つからない、探しものをする旅人達の、終着地なのに」
どうやら、わたしの愛は見つからないままゴールを迎えちゃったみたい。
うん、それじゃあ また再スタートだね!
「ここがゴールだよ」って教えてもらったけど、諦めなきれないのがわたし
もしかしたら 結局、またここに戻ってくる日が来るかもしれない。
その時は、あの雲にもでも払い飛ばしてもらおうと思う。
お父さんは なんでしょうね?