90:お兄ちゃんとお姉ちゃんの気持ちは複雑なのです
本日投稿二話目
私だけでなくコンクルザディア王国ではにわかに妊娠する女性が増え始めていた
理由で一番大きいのはやっぱり食料問題が解決に向かっているからじゃないかと噂が立っていた、実際に十分な寮の蓄えが出来たこともそうだけど、将来の事が安心できると…っていう心理的なものかもしれない
私の場合はそういうのじゃないとは思うけど、そっかママ友って言うんだっけ今まで接点が無かった人とも繋がりが出来そうでちょっとワクワクしてきた
普段なら冬に向かうに連れ減るはずの仕事だけど今年はちょっと忙しそう、それも一つの分野だけじゃなくて城壁などのコンクリート部門もだし子供の祝用の甲冑なんかも予約がひっきりなし、中でも兵器部門は突然の最盛期がやってきたみたいで、えっと何だっけチハ君と同じ砲の固定バージョンに、三八式歩兵銃も量産体制、結局また弾薬が追いつかない状況…クレイさんは何も教えてくれなかったけどまた戦いが有るのかな…凄い嫌だ、思わずお腹を擦り念話でメーベを呼んでしまった
『姫様、どうされました、クレイさんと何か有りましたか?』
『有ったわけじゃないんだけど、ちょっと気持ちが落ち着かなくて』
『判りました直ぐに伺います』
『でも今仕事中でしょ、そのまま話を聞いてくれるだけでいいから』
『そんな事言われたら、逆に事故を起こします、幸いワンさんの手が開いてますから変わって貰います』
強引だなぁと思うけど正直やせ我慢だったから助かる、というかメーベには敵わないぁ
『出来ればエルフ寮だと良いんだけど』
『問題有りません』
玄関まで軽トラでメーベが迎えに来てくれてエルフ寮、名前が変わっただけで運送部の二階の元社長宅へと連れて行ってくれる
最近は運送部の事務所で仕事はしていても二階のエルフ寮に行くことは減った、たぬきの子供たちには会うけれど以前の様に一緒に住んではいないので寂しさも在る
「クリシュナママだ!」
部屋に上がった途端にハイテンションのお出迎えはアーミン、それを皮切りに集まってくる子供たち、やっぱり寂しかったんだと思う申し訳なさと喜んでくれている姿に嬉しさが同時に込み上げてくる
本当は悩みをみんなに聞いて貰いたかったのだけれど、ちょっとそれは止めておいたほうが良さそうね
「あなた達!」
一喝するメーベを手で制して
「この子達にも聞いて欲しいことだから」
そう言うと渋々といった感じでメーベも納得してくれた
テーブルを囲んで今居る全員で座る、アーミンは私の膝の上でにこにこ
渋い顔はメーベだけでなく女の子達アネットとヒルデもだ、私の膝の上に乗りたかったんだと思うと離れても好かれている事を実感出来て申し訳ないと思いつつ嬉しくも有った
思えばこの子達とは産まれた頃から一緒だったのよね一年とちょっとの関係だとはとても思えない
「みんなに報告…と言ってもエルフのあなた達には伝わっているからアーミン達にだけど」
「なに?クレイがママいじめたの?」
いやいやいや、なんでだかこの子は他の子と比べてもクレイさんに当たりがきついのよね
「ママに意地悪するクレイは僕…俺が懲らしめてやるんだ!」
そういって、ふんすと鼻を鳴らすアーミン
「違うわむしろ逆よ、あのねお腹の中に赤ちゃんが居るの、ママの子供だからあなた達の妹か弟になるわ、だからお兄ちゃんお姉ちゃんとして」
アーミンが私の膝から降りて
「嘘だ!」
「嘘じゃないわ、アーミンこっちを向いて、ちゃんとママの話を聞い」
「やだ、やだやだやだ!絶対やだ!嘘つきのママなんか嫌い」
アーミンは走り出して部屋から出ていってしまう、どうしてこうなってしまうのかしら…
冗談で拒絶する振りをされたことは有ったけどあれは本気の『拒絶』だった
「ママ?赤ちゃんが居るの?」
アネットが心配そうに言う
空気が空気だから喜んでも良いのか他の子達も戸惑っている
「ええそうよ、クレイさんの子よ」
何かを気にしているのか、少し浮かない顔をしているように感じた
「ママはもう私達のママじゃ無くなっちゃうの?」
そうなってしまうのか、そんな事はもちろんない、子供達の不安を取り払ってあげないと
「そんな事無いわ、さっきも言ったけどあなた達はこの子のお兄ちゃんお姉ちゃんになるの兄弟が祝ってくれるとこの子も嬉しいと思うのだけれど」
「ママもその子も嬉しいならもちろん!」
「ママももちろん嬉しいわ」
やっとほっとした顔を浮かべると私にお腹を触って見てもいいか聞いてきた、もちろんオーケーよ
子を宿すという女性特有の状況だからか、女の子のアネットとヒルデはとても気になるようで男の子のカールとロルフは気になるけど触って良いのかおっかなびっくりといった感じ
あら?周りを見渡すがアーミンだけでなくルディも居ないあの子も嫌だったのかしら…ちょっと悲しい
『アーミンとルディが心配だわ、メーベお願いできる?』
念話で二人を探しに行って貰おうとしたお願いした直後
『姫様大変です!アーミンとルディが!』
工場に居るツァーミから焦った声で工場に来てくださいと呼び出されたのだった
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