85:国体護持
シェリルの名前が一部フェリシアになっていたので修正(フェリシア一体何処から出てきたw)
小火演翌日の朝、まだ少し具合の悪いクレイさんはお休み、私もお休みを貰っておうちで看病
なんだけどマスクをしたクレイさんがじっと外を見てる
「ねえシュナ、教えてほしいんだけどさ、外に自由の女神像見つけて絶望してる人みたいな猿みたいなの居るんだけど小火演にICBMとか無かったよね」
「なんですかそれ?無いですよ、まだ具合悪いんですから立ってないで横になって下さい」
「うん、横になるから後でちゃんと教えてね」
旦那が素直だ、ちょっと心配になる
いつもならもうちょっと駄々をこねるとか教えて攻撃してきそうなのにあっさり過ぎる
結局のところ、あそこまでフェデンさんが真っ白に燃え尽きているのは、サンダン王国の貴族というのは魔法の使える家系であり、魔法は絶対的なステータス
ノブレス・オブリージュって言うんだっけ?
サンダン王国では魔法が使える貴族にとって平民は護るべき対象であり逆はあり得ないそうで、護る見返りとしての年貢であり税
魔法も魔力も使わずに対等以上の力を平民に持たれてしまっては、国体も維持すらままならなくなってしまうと考えて絶対に認められないというのかな?受け入れられない?みたいな
サンダン王国は三百年近くその体制でやって来たというのなら骨の髄まで浸透しているはずだものね
私の読んだ日本の歴史の本でも太平の世が長く続いた後に旧体制側と新体制側で争いが起きていたしあんな感じなのかもしれない
一方で同じ貴族のはずのベルザードさんは同じ様に衝撃を受けたものの魔法に変わる武器に興味を持ちあれこれと聞いて回っているみたい
貴族とは言ってもピンキリ、フェデンさんの家に比べてランクが低く跡目を継げるわけでもないらしいベルザードさんの方が柔軟に考えてる
「しゅ~なぁ~、おしえて~」
子供か!なんか教えたら熱ぶり返しそうと思いながら寝室へと向かった
======
公衆の面前で殴り飛ばされ地面に転がるベルザード
「貴様!王国貴族としての矜持も捨てたか!」
「矜持で国が滅ぶのならば捨ても致しましょう!貴族は民の為にこそ存在するのです」
血の付いた唾を吐きフェデンを睨みつけるベルザード
「跡目も継げぬ小童の分際で…おのれぇ、もう我慢なら!ぶへッ」
起き上がりざまにフェデンの顔を殴り返し
「まだ解りませんか、今こうして魔力を封じられている私達に出来るのは無様に殴り合い踊って見せるだけしか出来ないではありませんか!これでどう民を護ると言うのか!」
「まだ言うか!」
殴りかかろうとしたところでオークたちに取り押さえられ一時的に以前ゴブリンたちを閉じ込めた牢へ二人共連行されて行った
======
俺と入れ替わりでベッドに顔を赤くしてぼーっとしているシュナ、無言で俺達二人に非難の目を向けるメーベが口を開く
「せめて風邪が治るまで待てなかったのですか?」
「何のことでしょうか?」
俺は正座したままとぼけて見せる
「しらを切るならそれで結構、御夫婦なのですから営みに口を出すのも無粋ですからね」
(言ってる事が今まさに無粋なのでは?)
こっちを見るメーベと目を合わせられない…怖いんだもん
「姫様の看病は私がしますので、クレイ様はフェデン様の説得に向かって下さい」
「え~…はい!喜んで!」
メーベって眼力だけで人殺せそうだよね、命令に従って独房へと向かう…あれ?俺って姫様の旦那でメーベって姫様の一応部下なんだよねなんで命令…深く考えてはいけない、メーベはメーベという存在であって考えてはいけないのだ
「で、どうしてこんな事になってるんですか?」
通訳で言葉を返すシェリルの態度もこころなしか冷たいし、本人は老け込んじゃってるし、簡単に話は聞いているけど詳しく聞かないと動きようがない
うんうん、言葉は解らなくても暑苦しいまでの情熱は声で判る、話を聞いている内に予想していたことと違う事が出てきた
この男の事をもっと権力欲にまみれた貴族だと読み違えていたことだ、俺達が銃を輸出すれば国では混乱が起こり血が流れ、王を君主とした現在の国のあり方が崩壊することを恐れていた、その間自分の地位や名誉に関しての話は一言も出てこなかった
俺こういうのに弱いんだよなぁ
「フェデンさんさぁ、おたくの国って建国から三百年以上在るんだよね?」
突然なんだという感じでこっちを見て
「三百どころではない!それは今の形になってから、起こりから考えれば五百年は下るまい」
「約二千七百年、俺達が転移してくる前に居た国は皇紀で約二千七百年、とは言っても諸説有って千七百年位じゃないか千五百年位なんじゃないかって話も聞いたことが有る、正確な国の起こりがいつなのか歴史が長すぎて今でも学者研究者が解明しようとしているくらい長い」
五倍近い年月に言葉を失い固まるフェデン
「国の政治体系も変われば内戦が百年近く続いた時代も有った、それでも王族は一度も途絶えたことはない、戦争でコテンパンにされ国中を焼け野原にされ、一発の爆弾で二十万人の国民を焼き殺され、降伏しても王の血は続き、今も陛下と親しみと尊敬の念を込めて呼ばれていらっしゃる、陛下だけでなく時代時代で国体を護りぬいた者たちが有ってこそ成し遂げた奇跡と言ってもいい…この話、興味はないかい?」
そう言って俺はにやりと笑ってみせた、シェリルも通訳してにやりと笑ってみせた
シェリルってこんな子だったけ?俺達の笑みにフェデンはゴクリと喉を鳴らすのだった
ブクマや評価をしていただけると作者が大変喜びます!続きを書く活力になりますので
『ページの下にある☆マークでの評価』
よろしくお願いします!