83:小火演 その1
お馬さん見学は結局見たことがない国民全員の希望により連日の大盛況イベントに発展
もちろんお馬さん優先で体調や機嫌をリザード族のコータローが直接聞いて可否だったり参加する子のストレスにならない様に考慮している、私も近づきすぎないようにクレイさんから注意されちゃった…
特にお馬さんが優先して上に乗せてあげる種族の子達が居る
オークの子供たちだ、大人になると物理的に乗れない巨体と重量、せめて子供のうちは乗せてあげたいというお馬さんの優しさ…かわいいわぁ~これは向こうの世界でファンが居るのも頷ける
舗装された道をワンボックスで移動中の私達
今日はクレイさん抜きで私とシェリルそれにスワンザの三人で猿人族貴族の視察のお供
私は珍しく風邪を引いたクレイさんの代役
「嫌だ~シュナに行かせたくない~」
とちょっとごねたけどよっぽど具合が悪いみたいで顔を真赤にして
「ごめん~、ほんとごめん~」
フェデンさんとの件だけでなく見たかったというのも有るんだと思う。殆どの演習プログラムはクレイさんが組んだものだし…だから私も内容をよく知ってるという事で代役になったんだけどね
「しっかり休んでね」
「ノウミさんに絶対ビデオ忘れないでって言ってね」
「はいはい、ちゃんと伝えますから、隠れて見に来たらビデオは処分しますからね」
「…」
子供か!
でもまあ普段が普段なだけに弱った旦那かわいい!なんて思っちゃったのは内緒
これでも最初の頃は絶対に私が視察に同行するの許さなかった事を考えれば、大将さんのお店での晩餐を境目に少しずつ態度が軟化してる
フェデンさんの態度も同じ様に軟化、接待ってされる側だけが得をするものじゃないんだって勉強になった、大将さんの力も改めて感じたわ
フェデンさんの方は角というか検?が取れた、というよりは積極的に情報を得るために態度を変えたって言えば良いのかしら、横柄さはなりを潜めて子供相手でも情報のためなら謙るのも全然気にしない、ある意味では欲深いところは変わってない
クレイさんが言うには、手ぶらで帰ったら他の貴族からは袋叩き、手柄を立てれば外交のトップに躍り出るかもしれないから必死だと思うよ、とのこと
貴族って解らないけどそれはそれで大変そうね
駐屯地に到着すると責任者であるノウミさんの出迎え
「いらっしゃい、残念だね~今日はお馬さんとのふれあい出来なくて」
「違います!今日はお仕事なんですからそんな事考えてません!」
「あっはっはっ」
くそう見透かされてる…
お馬さんに会いたい気持ちを抑えて今日の行程をシェリルを介して説明する
小銃の説明と新型火砲のお披露目、三八式歩兵銃に関しては彼らに射撃を体験してもらう
機密と言っても良いはずの銃火器を見せるのは彼らに何が何でも外交のトップに立ってもらうための手土産なだけでなく
徹底的に闘う気を削ぎ現状のコンクルザディア王国対サンダン王国の戦争状態を治めるための講和派になってもらう狙いも有る
戦闘は終わっても国対国のケジメが付いてない以上戦争は継続中ということ
駐屯地から外へ出て演習場へと向かう、馬への影響についても意見が聞きたいと言うことでリザード族のコータローさんにも同行をお願いしてある
演習場とは言ってるけど魔物たちの大群…そして彼らエパール族とリザード族と戦った平原を鉄板を戻して少し手を加えて作った即席演習場
東富士演習場の20分の1スケールってとこかな?装備とかで言えば総火演ならぬ小火演とはクレイさんの言
予行演習を見に行った際の動画を見せてもらったけど確かに見渡す限り一面の巨大な演習場だった、だけど問題は演習場の広さじゃなかった
あれだけの魔物の大群を屠った私達の『軍』はこれに比べればお遊びのなんちゃって軍隊だった、次から次へと出てくる大量の戦車、しかもチハ君には言えないけど遥かに大きくて速い、そして百発百中、他にも此処には存在しない様々な兵器、特にヘリコプターと呼ばれる空中で止まれる兵器や戦闘機と呼ばれる鋼鉄のドラゴンの爆弾投下、これも標的に命中するのだから戦争そのものの概念が私の勉強した戦争とはかけ離れすぎていて判るのは
この兵器たちを前にしたら戦う前になすすべなく終るということだけ総火演ならぬ小火演と言ったのにも頷けた
マイクを持ったシェリルが演習における説明を始めた
「部隊近くに旗を持った兵士が居り赤い旗が上がると射撃・攻撃態勢に入った事を表します、そうでない場合は緑の旗を上げておりますのでご参考にして下さい」
デモンストレーションが始まる、まずは小銃から
絶対に記憶すると言わんがばかりにメモ帳片手に目を見開いてデモンストレーションを見ようとするフェデンさんとベルザードさん、コータローさんは言われた通り馬への影響を主題にメモを取るようだ
「これより小銃のデモンストレーションを始めます、まず全種族による前方30m先に有る的目掛けての立射をご覧いただきます、小銃部隊前へ」
ぎこちなさは有るがそれっぽく行進してくる兵士たち
「!?」
固まったかと思えば突然焦りだす三人、まだ始まってないのだけど何かしら?
「使用される小銃は三八式ボルトアクション歩兵銃及びイソロク工房製ISR-01レバーアクション歩兵銃になります」
兵士たちは、種族間の歩幅が有るため種族ごとに入れ替わりで小銃の発砲を行い次々と命中する弾丸により的は穴だらけ
だいじょうぶですか?呼吸してます?心配になるくらい微動だにしない三人
フェデンさんが突然手を上げた、私はシェリルに念話で進行の停止をお願いする
「どうしました、お加減でも?」
「そうではなくて…違う意味で具合が悪いと言えばそうなのだが…」
要領を得ない返事に困惑する
「確認なのだが、どうやって全種族を魔法使いにしたのか教えてくれないだろうか?」
は?何言ってるんだこの貴族たちは…
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