閑話:オーク相撲・其の一
オークが味方についた頃から相撲取らせたいと思ってたので満足
「よいしょぉぉぉ」
クレイさんが掛け声とともに高々と上げた足を下ろしてばちーんと音が鳴る
「「「よいしょぉぉぉ」」」
ドゴォーン
沢山のオークたちが持ち上げた足を下ろして地鳴りのような音が響く
四股と言うらしい…
事の始まりはオークのリーダー、オルドアさんが工場長に冬の間の運動不足の解消について相談したことから始まった
「オークの皆さんの体つきを見るとね…」
「やっぱ力士ですよねぇ、体つきだけじゃなくて優しくて力持ちな所も力士っぽいですから」
良くわからないけど人族的にはオークの容姿性格共に力士らしかった
日本の男性なら遊びで一度はやったことは有るくらい認知度が高いそうだけどルールはシンプル
円の中から出ないこと、足の裏以外が地面に着かないこと、分かり易い
クレイさんが地べたに座ると今度は両足を開いて身体を前に倒した…身体柔らかいなうちの旦那
べたーっと胸から腹まで地面に着いてる
「いたたた」
「くぅ~」
「ふはッ」
対してオークの方々は苦しそうだったり、全く前に身体を倒せなかったり…お腹が出てるから仕方ないのでは?
クレイさんが言うには違うらしい、日本のプロの力士さんはお腹が出ててもこれが基本で出来るというのだけれど本当かなぁ~、日本に行けないので私には確認しようがないけどちょっと半信半疑
続いてすり足と呼ばれる独特な歩き方、クレイさんを見てると簡単そう何だけどテンポとバランスがオークのみなさんとは明らかに違う、何ていうんだろう、こう、ずっ…ずっ…ずっずっずずずずずみたいな感じで凄いスムーズに姿勢が変わっていくのようちの旦那
クレイさんのお父さんが相撲で島で一番強かったみたいで高校と呼ばれる学校機関にも推薦っていうただで入れるシステム?で入ったくらいなんだって
実家には小さい頃のクレイさんが大関って呼ばれる人に抱っこされてる写真も有るんだって自慢してた、なんでも大関さんはクレイさんのお父様の後輩らしくて島に巡業に来た時に実家に泊まったそう
イマイチ相撲が判らないから
「へぇ~」
って返したらすごい悲しそうだった…
慌ててクレイさんも相撲してたのかと聞いたら、身体が小さかったから相撲の代わりにレスリングっていう競技をお父様に無理やりやらされたって今度は苦い顔…どうすりゃいいのよ!
レスリングも相撲みたいに取っ組み合うんだけど倒れたり足の裏が着いても負けじゃなくて相手を仰向けにして両肩を着けて2カウント取れたら勝ち、子供は3カウントまでだったらしいけど今はどうかは判らないんだって、肩が着けられなくても技が決まればポイントが入って時間切れならポイントが多い方の勝ち
こう聞くと相撲は本当に勝ち負けがシンプルで観てる人にも分かり易い気がする
だから人気だったんだよとクレイさんは教えてくれたけど、その後に
「勝敗はシンプルだけど奥が深い」
から始まって眠るまで相撲を語ってた、あれから相撲の話をしないから諦めた?それか嫌がる事はしたくないクレイさんだから気を使っているくれているのか…
相撲とオーク相撲でのルールの違いに顔面にフェイスガードを付けてもらう、牙が生えてるからね怪我の防止で禁止
当たり稽古が始まるとクレイさん参加せずにこっちにやって来た
「ぶちかましされたら死ぬ」
というのが理由、確かにそんなんで旦那殺されたくない
ばちこーんとオークの巨体がぶつかり合っている姿が恐ろしく見える
クレイさんは着々と制作が進む土俵に目をやっている
「クレイさんあれってビール瓶ですよね?」
「そうだよ、なんでだったか忘れたけどビール瓶が土俵作りに良いんだって昔テレビでやっててね試しに使ってみてるんだ」
ビール瓶と土俵にどんな関係があるのかクレイさん自体もわかってないみたいだけど、土俵作りの職人さんが使ってたんならたしかに意味はありそう
最初は総当たりでみんなが戦って徐々にランク付け、一定以上の成績で階級分け
階級は下から序ノ口、序二段、三段目、幕下、十両、幕内
そこから各付けと言って最上位の幕内の中での序列
下から前頭、小結、関脇、大関、最高位が横綱という序列なんだって、なるほど子供の頃のクレイさんを抱っこしてくれた力士さんは上から二番目の強い力士さんだったんだ、それは自慢したくなるわね
「と言ってもそこまで人数いないから何処まで同じ様になるかわからないけどね」
「細かいんですね」
冬場の運動不足解消がなんでこんなに大事になってしまうのか…旦那に日本人を持つ身だけど日本人のやる気スイッチが何処にあるのかまだまだ判りそうにない…
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