82:リザード族とお馬さん
続・お馬さん回
子供たちがはしゃぎたいと驚かせたくないの葛藤しながらお馬さんを見ている間にリザードマンのコータローさんに話しかけた、もちろんシェリルに通訳を介してもらいながらね
「その言語って、あの…猿人族?とあなた達は同じなんですか?」
「…共用語って言えば判りますかね、その猿人族というのはエパール族でこの言葉はエパール語と呼んでいますね、私達自身はリザード族です」
どうやら猿人族側の言語で話しているが母国語、母族語?は違うらしく試しにリザードマンの言葉で離してもらうとシェリルでもちゃんとは解らないみたいだった、うちの嫁はこちらには加わらず俺があげたスマホでお馬さんを撮りまくっている、邪魔しちゃ悪いだろうからそっとしておいてあげよう
「でもこの言葉はエパール語と近いですね、その発音とか区切り方とか」
言語オタクとでも言えば良いのかシェリルは興味津々
「そうです良く判りましたね、我々リザード族は昔から共生関係に有ったそうで年月を経て互いに近い言葉になってきている様ですね、その頃はもっぱら私達リザード族が攻撃を担ってましたが魔法が発達してからはサポートメインです」
シェリルがなるほどと相槌を打つ、もう一つ気になった事を聞いてみた
「疑問に思っただけなんで悪く思わないで欲しいんですが自分の知識というか想像だとリザードマンと馬という組み合わせがなんか不思議な組み合わせに見えてしまうんです、馬とリザードマンって当たり前の組み合わせなんですか?」
「当たり前ではあるんですが昔、本当に昔の話ですがそれこそエパール族と共生関係が始まった頃に神が我々に遣わしたという神話が有るのでそれ以前は当たり前では無かったみたいですね」
神話ってことは数百年とか千年以上前とかなんだろうか?
「それってどれくらい昔とか判ります?」
「ん~、サンダン王国が興ったのが最低でも三百年前ですからそれ以前ですかね、共生関係は国になる遥か前な事を考えるとその倍以上じゃないかと」
ん?なんだろうなんか違和感がある、なんだ?
「あの~」
突然声をかけられたというか考え事してたから突然と感じただけだろうけど、振り向くとユカリ先生が申し訳無さそうに
「お馬さんは触らせてもらうわけには行かないですよね?」
先生の後ろでは期待に満ちた目で子供たちが様子を見守っている、シェリルが訳すとコータローさんは馬に向かって話しかけた、信頼関係築けてるんだなぁ~なんて思ってたらお馬さんが、うんと頷くように頭を下げた
「良いそうですよ、でも叩かないでって言ってます…鞍を持ってきてくれれば乗せてあげてもいいって」
その返事に無言でぴょんぴょん飛び跳ねる子供たち、嬉しいけど声は我慢しているのか…コータローさんは鞍を取りに厩舎に戻っていった
あれ?もしかして…
鞍を取って戻ってきたコータローさんがセッティングし終わるのを待って聞いてみる
「あの、すいませんもしかして馬と会話してます?」
「ええ、向こうからは念話ですけどね」
まじか、でもうちの嫁さんもエルフ同士は念話出来るんだし…
「なので馬の世話は私達リザード族の専売特許と言ってもいいです」
「エパール族は?」
「出来ませんね、お陰で魔法が発達した今でも我々の種族はお払い箱にならずに済んでます」
「なるほど…馬とリザード族は切っても切れない縁が有るんですね」
「ええどれだけ年月が過ぎようとも馬達とは永遠の友です」
「、、、そうか!」
「びっくりしたぁ、どうしました?」
驚かせてしまって申し訳ない
「それですよ年月!年月の概念が有るんですね!」
「そりゃあもちろん有りますよ」
それがもちろんでも当たり前でもないんだよなぁ~シュナ達エルフもコンクルザディアにいる種族はみんな年月の概念がなかった
「ちなみに何歴とか有りますか?」
「何歴?今はサンダン歴二百九十四年です」
「ごめんなさい聞き方が悪かったです、太陽暦とか太陰暦みたいな暦の算出方法です」
「ん~申し訳ない、そこまでの学は無くて…」
「いや、大丈夫ですよ、逆に質問ばかりで申し訳ない」
確証はないけど『神』扱いされているのって地球から転移してきた人間達の可能性が出てきた、憶測でしか無いけど神が馬を遣わしたというのなら転移した人間は馬ごと、繁殖を考えれば複数の人間と複数の馬が転移してきたんじゃないだろうか?リザード族の『コータロー』という名前からして転移してきた異世界人は俺達と同じ日本人っぽいよなぁ~
そしてリザード族が馬とコミュニケーションを取れることを知って任せた…妄想の域を出ないけどサンダン王国と上手く付き合えれば資料が有るかもしれない、出会いは最悪だったがこれは是が非でも国交を結んで情報を得たい、工場長にも事情を説明して譲歩出来る所までは折れてもらった方が良いかも
事前のお約束のお陰か、はしゃぎはするが度を越したはしゃぎっぷりでもないしお馬さんもこころなしか楽しそうだ
「喜んでますね」
リザード族の表情は人族の俺にはまだ感じ取れないがほっとしているような気がした
馬達も死んではいないが、衰弱するくらい放置されたんだ身体とは別に子供たちが心の傷を薄めてくれるのならふれ合いは有ったほうが良い
それにしても馬の声が聞こえるのか、向こうの人間ならリザード族に転生したいと思う人間が少し…いや結構居そうだな
「クレイさーん!」
すっかり子供たちと打ち解けた馬に乗りこちらに手を降る嫁に手を振り返し、微笑ましく思うのだった
ブクマや評価をしていただけると作者が大変喜びます!続きを書く活力になりますので
『ページの下にある☆マークでの評価』
よろしくお願いします!