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攻めんといて!俺達は異世界にコンクリートで専守防衛国家を作りたい  作者: くろすおーばー
四章:初めての戦争
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77:捧げ銃

クレイ達のチームが居る場所とは見当違いの場所に火弾が炸裂し木々が燃え上がる


木や岩に魔法陣を彫って魔力を込めては移動を繰り返す、火弾は馬鹿の一つ覚えのように魔法陣目掛けて飛んでくるもうそこには誰も居ないのに


次第に辺りは雨だと言うのに消えることのない火がそこかしこに存在を主張するように燃え続け口論する声が聞こえてくる言語は判らんが、戦闘の最中だと言うのに馬鹿なのか?


ご自慢のピット器官(赤外線センサー)が役に立たず相当ご立腹の様だ、テント用の断熱シートに身を隠して様子をうかがえば口論の為に密集し始めた?好都合では有るが相手の能力もわからないだろうに下に見すぎだろ


だがお陰で判ったことが有る、リザードマン二人と魔法使いで1セット、リザードマンのコンビが左右に展開してピット器官で敵を補足、二人で同じ標的を補足してより正確な方向と距離を魔法使いに教えているのか


まあいい、詳しいことは捕まえてから聞き出してやる


捕獲用のネット銃を構えさせ三方向から撃ち込んでやった、もがきながら何か言っているが判らない、魔法を唱えられても面倒なので口を塞ぐ、こいつの種族は猿か?ずいぶんと身なりが良いが自由の女神が出てきて七百年後の地球でしたとかねえだろうな


口汚く罵り合って…(何を言っているか判らなくてもなんとなく判る)いた所を見れば念話は出来ていないだろうが同じ種族同士なら出来る可能性もあるできる限り情報は秘匿した方が良いだろう


ズタ袋で頭を覆い捕虜として応援の兵士に連行させる


どんな手品もタネが判ってしまえば油断しなければどうということはない、スワンザのチームも同じ手法で他の連中も捕まえてもらう


ゾンビのように何を考えてるかもわからない魔物たちと違ってこいつらのやった事は明らかに意思を持った敵対行為だ、何のためにこんな事をしたのかじっくりと聞かせてもらうし手に入れられるものは情報も技術も根こそぎいただくつもりだが文句はあるまい


残党狩りも魔法使いたちも方がつき最後の確認のためにドローンが飛ぶ


通常の魔物討伐ならば素材採取が行わるがおびただしい量の魔物の亡骸に辺りは一面の血の池、疫病などの発生を防ぐためにも焼却処分が妥当、ホイルローダーで数か所に集め、未知の魔物の検体を除いて灯油を掛けて火を付け辺りはなんともいえない臭気に包まれた


終わってしまえばたったの半日で終結した戦いだが今後数週間は警戒態勢を取り続ける、タイミング的には秋の終わりまでは続くだろう


引き上げた兵士たちは駐屯地の施設で検疫と言っても医者じゃないので専門的なことは出来ないが衣類は全て回収、熱湯での洗浄、兵士自身も汚れを洗い流し消毒液による消毒を徹底する、一連の流れが不可逆的に進められる事を考えると、やはりここは軍の施設と言っても検疫所だったのではないかと思えてくる


当然捕虜たちも同様の検疫を受けてもらう


猿人とリザードマンは独房の代わりに拘束着を着せて種族ごとに少数で隔離室に入れてある、食事など接触する際は必ず数的優位保つように徹底させた


自分自身の検疫を終えて俺の代わりに火弾を受けた兵士の見舞いに向かう、本物の軍隊はこんなときも決まりがあるのだろうか?一体どんな顔をすれば良いのか解らない、俺が知らないだけかもしれないがきっとどんないくさ、戦争でも勝っても負傷者、死傷者0ということはまず無いだろう


上に立つ者としてどう振る舞うべきか、しかも俺自身は所属としては軍人ではない一応外交担当、人がいなすぎてその辺もめちゃくちゃ戦争になったから表に立った


いや今は身分どうこうよりも人としてどうするかだ


病室にノックをして入る、薬が効いているのか身代わりになったドワーフ兵士の目は虚ろだ

「感覚を麻痺させる薬草と魔法を使っているので今はまともに話すことは出来ませんが一月もすればリハビリを開始できると思います」

看護に当たるエルフ、オルアさんがそう言ってくれた、向こうの世界で兄が交通事故で死にかけたことが有ったがリハビリまでもっと時間が掛かった、容態は違うが医療はこちらの世界の方がよっぽどチートだと思う


包帯でぐるぐる巻きだというのに無理やり起き上がろうとするドワーフ兵を手で制してベッドの隣に座り無事な左手を握る、どれくらい間があっただろうかやっとの思いで

「ありがとう」

そう一言絞り出すのが精一杯だった


ノウミさんの待つ発令所へ報告に行けば柄にもなくハグされて驚いたが命のやり取りの現場から帰って来たんだと実感した


労いの言葉もそこそこに報告を始める、部屋の中にはミュレッタだけでなくもう一人エルフのシェリルも居た、今までは仔たぬき達の家での世話係がメインで外にはあまり出なかったのだが本格的に駐屯地が稼働するようになってからは事務を担当している


シェリルが今日ここに居るのは口頭でのやり取りを書き留める為、戦闘報告は出来るだけ記憶がしっかりしている内にするようにと予め決めていたのだ


やり取りをしていく内にノウミさんの顔が暗くなる、圧倒的な戦果だからといって命の奪い合いに楽な戦闘など無い、結果がそうなっているだけだ


「それでノウミさん、戦死者は何名ですか?」


「ホビットが2名、ドワーフが3名、オークが1名、どれも義勇兵で全員で6名だ」

5000程の敵を相手に6名なら戦果としては上出来…完勝、喜ばなければいけないことは判ってる

「葬儀の方は?」

「軍で執り行う予定だ」



======


完勝に終わった初めての戦争…と呼んで良いものなのか自分には判断ができないが、終わった後に凱旋パレードの様なものは行われなかった、喜びよりも初めての戦死者の為に喪に服す気持ちの方が皆強かった


止まない雨の中葬儀が執り行われる

「捧げーーつつ!」

6人の遺体の入った棺を前に三度、空砲が響き渡る


軍関係者は傘を差さないことになっているが国王である工場長も差さずに雨に打たれている

形式は自分の知っている範囲の日本海軍のものを真似た、もちろん慣れておらず空砲もバラけ素人だと詳しい人間なら直ぐに判るだろう


泣き崩れる遺族の姿に唇を噛みしめる


いつかしっかりとした捧げ銃が行われる様になってしまうのだろうと考えると辛かった

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