76:狂気を喰らえ
割とグロい回?
小雨が降り出し視界が悪くなってきた、天候を操る魔法そんな物があるかどうか知らないがタイミングが良すぎる、だが向こうも視界が悪くなっているはずだ、そう考えると普通に天気が悪くなっただけかもしれないが確かめる手段はない
「お待たせ!」
レシーバーからノウミさんの声、ドローンの充電が終わったのだろう
「了解位置はどうですか」
「ちょいまち」
「C9に1・C8に2、スワンザの方はD4・C4、それから中央のAの5と6に3人は居る、どうするもう少し様子を見るか?」
隠れている魔法使いが他にも居ないか確認するかという事だろうがコンクルザディアの方にも向かっているかもしれないと考えると時間がない
「コンクルザディアの方は連絡尽きました?」
「城壁の警備からは特に異常の報告は入ってない」
「駐屯地も気をつけてくださいよ」
「判ってるって、こっちより自分のこと考えろって今一番危ないのはそこに違いねえんだから」
「了解、C9を潰します」
「了解!いや待ったD9にもう一人もしくはグループが居る」
「あぶな!眼の前じゃないすか」
「だから様子見るか?って聞いたろ」
「そうでしたね」
敵との距離が近いと判ったからか、呼吸が浅い、落ち着け俺
一度立ち止まり座り込む一緒に来た連中の顔を見れば種族関係なく怒っているのか泣きたいのか緊張しているのかまぜこぜな顔、俺もそんな顔してんのかねぇ
落ち着けって思ったのに落ち着いつちまうとくそったれな戦場で素に戻るのは悪手だと気がついた、さっきまでも散々弾をばらまいて殺しただろうに、これから人を殺すんだと冷静に考えて落ち込む馬鹿らしさ、狂ってるくらいがちょうど良いなんて思っちまう
周りの奴らに笑って見せる、笑えてたかしらんけど
冷静に狂う、戦場に求められることはそれだ、冷静にぶっ殺してぶっ殺してぶっ殺して味方を救うそれだけを考える
「行くぞ」
小さく呟いてチームに散解のハンドサインを出した
岩の上で両手を上げて立っている人物、この距離からじゃ性別も種族も判らない、これから頭を打ち抜くんだ知る必要もないか、生きている敵だとだけ解ればそれでいい
自分の右手でピースサインを作って自分の両目を指すジェスチャーをしてその手を反対に向けて左から右に振る、本物のハンドサインがどんなものか知らんが周りを監視しろって意味だ
こんな物は伝わればいいんだ公式だろうが亜流だろうが知ったこっちゃない
問題なく周りをチームで見張るが他には隠れている敵は居ないみたいだ
距離にして50mか30mかまあそんな所だ射線を気にするほど離れちゃ居ない、そういや頭じゃなくて身体の中心線を狙った方が良いんだっけか
照門と照星を重ね敵の胴体に狙いを定めて引き金を絞る
崩れ落ち動かない敵、念の為もう一発動かない的に向かって打ち込んだ
終わり、次だ今の銃声で奴らも森側から来ている事を知るだろう、これで迂闊に魔法は撃てないはずだ、こっちも向こうも撃てば居場所を知らせるようなもんだからな
「火魔法が止まった」
ノウミさんからの入電に胸をなでおろす、思ったとおりだここからは軍人将棋いや違うな映画にもなった戦艦ゲーだ可哀想なのは向こうはドローンで丸見えってことだがな
雨は本降りになり視界はおろか音すらかき消されてしまう
もう塹壕で揺動をさせる意味もない、左右に分けてすり潰しながら進めばいい
問題はコンクルザディアと駐屯地に別働隊が行っていないかどうかだ早く全てを片付けてシュナの下に帰りたい、帰ってシュナを抱きたい、生きて帰ったのだと実感したい、シュナの笑顔が見たい
「クレイ殿!」
一拍遅れて声に気づいたときには火弾が目の前、強烈なタックルでふっとばされた俺の代わりにチームの一人が燃え叫び声が耳にこびりつく
「クソガッァァァァ」
銃を構え引き金を引く、ぼんやりとオレンジ色に光る場所目掛けて撃つ撃つ撃つ、撃った場所へと俺は走り出す
味方も何処かへ向かって発泡している
倒れている黒い影目掛けて銃床を叩きつけ何度も何度も殴る
「お前が!お前が!クソックソックソガァァ畜生、ちくしょうぅ」
「クレイ殿、止めてくださいもう死んでます」
ハァ、ハァ…ハァハァ…
「すまない…」
「いえ…」
周りには他に二人の男?顔は鱗に覆われていて爬虫類の様だった
振り返れば俺をかばったドワーフから煙が上がっているがなんとか生きている、応援を呼び彼を下がらせて救護班に任せる
俺の所為だ、でも嘆くのは今じゃないボルトを引き換えの弾倉を詰める、二度と同じヘマはしない
「クレイ、大丈夫かクレイ」
レシーバーからの声がやけに遠いまるで耳鳴りの中で声を聞いているような感じだ
「問題ないですよ、スワンザの方はどうです?」
「もう3チーム潰したよ、そっちも魔法使いだけじゃなくてチームが居ると思ったほうが良い」
「速いですね、こっちはまだ1チームだけですよ」
「ゲームじゃないんだ、クレイお前本当に大丈夫か」
どうだろ大丈夫っちゃぁ大丈夫だし駄目かと言われれば駄目かもな
「返事しろ!」
「大丈夫っすよ、それでコンクルザディアの方は?」
「問題ない、念の為見張りも増やしたし住民も丘まで避難させてある、蟻一匹入れねぇよ」
ふうぅぅぅぅぅ…長い溜息が漏れる
パンパンと顔を叩いて気を取り直す
「すまなかった、もう取り乱したりしないここから先は慎重に行く、聞いてくれ」
応援の兵士たちも集めて作戦を伝える
「大変なのは判っている、だが後手に回りたくない、誰かそこのトカゲ野郎の種族が判るものは居るか?」
残念ながら魔法使いの方は頭が潰れて判別不可能…自業自得だな代わりにトカゲ野郎の死体を指差し情報を求めるが
「見たことのない種族です」
誰も知らない種族とりあえずリザードマンとでも名前を付けておこう
爬虫類、爬虫類の特性は何だ、必死に知識を手繰り寄せる
変温動物
卵生
違う今は関係ない
横隔膜がない
これもどうでもいい、弱点になる部分は何だ!
視覚と聴覚はどうなってた…
「ノウミさん、爬虫類の特性教えてもらえないっすか?」
「唐突だな」
「敵に人型の爬虫類っぽいのが居るんですよ出来れば生け捕りにしたい」
会話を聞いてぎょっとする兵士たちだが、落ち着けと手で制す
「蛇ならピット器官とか?」
ああそうだ、熱に反応するってやつだったなどこぞの人間狩りする宇宙人みたいな感じか、武器は弓だったみたいだが背中にしょったままのところを見ると攻撃はしようとしてない?
もしかしてトカゲ野郎が俺達の体温を感知して魔法使いに教えてるのか?だから俺の位置を正確に狙えた?
「ノウミさんシュナにお願いがあるんだ大至急伝えてもらいたい」
雨が頬を伝い俺はニヤリと笑い口角が釣り上がる
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