69:雨季の暇つぶし
「うがぁぁぁ!」
「アーミンよっわ」
テレビの画面には爆弾を置かれて八方塞がりになったアーミンのキャラ
「出せ!出しやがれ」
「判った」
ルディが容赦なくボタンを押しアーミンのキャラは爆発霧散、その後も次々とカールやロルフのキャラもやっつけられてしまう
今日は久しぶりにエルフ達の住む運送部の事務所…の二階に来ている
雨季の長雨で
「つまんない!外でた~い!」
と不満がたまり気味の仔たぬきズの事をクレイさんに相談したらゲーム機を貸してくれることになったのだ、セッティングの為にクレイさんも一緒に来てくれている
「いいか、ゲーム機を壊すんじゃないぞ!此処で壊したら二度とゲームは出来ないんだからな…特にアミ坊!」
レトロでレアなゲーム機らしい、まあこの世界ならどんなゲーム機でもレアだと思うけどね、さっきから負けてばかりでコントローラーを振り回すアーミンに注意が飛ぶ
「だってこれつまんねーんだもん」
「お前が下手くそなだけだ、貸してみろ」
メンバーを入れ替えて再度殺し合い…じゃなかったゲームが始まる、さっきの勝者ルディは続けてできる権利があるので続投だ
次々と撃破されていく子供たち、最終決戦はクレイさんVSルディの一騎打ち、お互い敵の動きを読んで爆弾を置いて行くが中々当たらない、手に汗握る展開に子供たちはルディに声援を送る
「なかなかやるな」
「クレイ兄ちゃん…強い!」
普段はおとなしいルディだけどさっきから互角の戦いをしていて顔はすごい楽しそう
「負けました」
悔しそうなルディを見たのは初めてかもしれない
「いい腕してるわ、まあ負けないけどな」
子供相手にドヤ顔のクレイさん、こういう時絶対手を抜かないのよね…
隣の部屋では別のゲーム機でアネットとヒルデの女の子組が遊んでいる、こっちはアドベンチャーゲームと呼ばれるジャンルらしい、さっきからイケメンの歯が浮くようなセリフにキャーキャーと喜声が上がってる
これ…クレイさんがプレイしていたのかと思うと複雑な気持ちになるわね
メーベはゲームには興味を示さず奥の部屋で筋トレ、この部屋にはそういった器具が沢山あるのよね社長の息子さんが使ってたものらしいけど
「雨季でも身体を鍛えられるのはありがたいな」
「そうですね、こんな狭い部屋でも十分に鍛えられる器具というのも凄いです」
先遣隊から軍へと配置換えになったミュレッタも一緒にトレーニングに励んでいる
「同じものを駐屯地の方にも欲しいです」
「そうだな姫様から進言してもらうように言っておこう」
そうね、軍隊として身体は資本だものドワーフ達に言えば作ってくれそう、あ!でもこれは最初からここに有ったのだから丘から出せば複製出来そうね、鉄アレイとか
「シュナ?」
「あ、はいなんです?」
「ゲームの時間は決めて上げてね、無制限にはやらせないように」
「「えー」」
男の子達だけでなく女の子達からも避難の、「えー」が上がる
「お手伝いをするとか勉強をするとか条件を付けてあげた方がいい」
これはぼそっと小声で私に教えてくれた、なるほどね
ゲームについては一通り説明も終わったので運送部の事務所を後にして養鶏場へと向かう、暇なこの時期はゲラ鳥の闘鶏が盛り上がる
しっかりとした闘鶏場も出来上がり、入場するためにはチケットとバンドが必要でチケットは五枚綴りの賭け札になっている、バンドは魔法で一度着けると一日はずれない仕組み
胴元はこの国コンクルザディア、国が管理する公営ギャンブルで以前は賞品に肉などだったけど今はお金に変わっている
そして一番変わったのは潰すゲラ鳥ではなく、各々が育てた闘鶏用のゲラ鳥が出場する様になった事
強い鳥には交配を求めてお金が支払われたり、同じ血統の雛が売り買いされたりとコンクルザディアで一番のエンタメになっている、安全に賭けが行われるように賭け金の上限と賭けられる回数、そしてバンドによって再入場をさせない仕組みになっているのだ
私達は賭けをするわけではなくて闘鶏場の管理人になったオークのガルダンの様子を見に来たのだ
「ガルダン調子はどう?」
「今時期は盛況すぎて疲れるよ」
苦笑いを浮かべてはいるけどしんどいといった感じではなさそうなガルダン、賭け事という特性上管理には腕っぷしのあるオークが選ばれたのだ
「登録者数はどんなもん?」
「あ~ちょっと待ってくれ今集計中だ」
闘鶏に参加するには最初に登録が必要になり初回時に写真も撮られる、一部からはめんどくさくなったとの声もあるが不正が行われないように厳密になった感じ、育てたゲラ鳥を参加させる者にも当然登録義務が有る
実をいうとこの制度、コンクルザディアで導入予定の戸籍制度の実験も兼ねていたりする
いきなり戸籍制度を始めようとしても作る側が初めてでは頓挫する可能性が高いからこうやって実践経験を積ませているのだ
ここで手に入れたノウハウを元に戸籍制度自体の問題点の洗い出しも出来て一石二鳥というわけ、商売も届出制にする予定らしいけどそっちは大将さんと工場の経理さんをアドバイザーにして進んでいるみたい
先日の子供たちのパン作りで使われたパン屋も公営だけどいずれは民営化といった感じで基礎を作ったら民間に解放していくと言うのがコンクルザディアの方針でいずれは税の徴収も行うようにするつもりなんだって、工場長さんもといコンクルザディアの国王様はマメだからねぇ段階を何段階に分けるのかわからないけど先は長そう