57:癒やしの小人族
本日投稿二話目、よろしくお願いします。明日は多分一話投稿になると思います
見たこともない種族が化け物の中から現れ呆然としている小人族
気まずい空気が流れる
「あの…敵対するつもりはないんです」
言葉が通じていないのか不安になるクレイさんに助け舟として私が出ていく、小人族とは交流もないので言葉が通じるのか私にもわからない
「#%&+*}}」
あ~…これは私にもわからないどうしよう
「##&&’%」
よかったドワーフのヤノットは話せるみたいだ
「全部は判らん、親父…族長ならもっと話せると思うが」
とりあえず助けに来たこと、敵意はないことを伝えて貰うとやっと彼らも安心したようだったが顔には疲れが見える、無理もない仲間が死に里もめちゃくちゃにされたのだから
後から来た部隊と一緒にゴブリン達の死骸を里の外へと出していく、小人族は亡なった仲間たちを埋葬するために集めていた
あれ?クレイさんの姿が見当たらない、探していると人気のない木陰で見つけることが出来た、声をかけようと近づいた瞬間倒れ込んでクレイさんが吐いた
「クレイさん!」
慌てて駆け寄ると
「ごめんみっともないところ見せちゃったね」
泣いていた…
ガタガタと震えるクレイさんを抱きしめる
「魔物を殺したことは有るから大丈夫だと思ったんだけど…」
「もう喋らないで」
張り付いた大量のゴブリンたちを重機で殴り、踏み潰しその感触が重機越しにも伝わってきたんだという、向こうの世界で言えば大量殺人のようなものだ、魔物を倒したことが有ると言っても生き残るための仕方がない行為と一方的な虐殺では平和な世界で生きてきたクレイさんの中で整理がつかないんだと思う
「落ち着きましたか?」
「うん、ありがとう」
震えは完全に収まっていないし顔色も悪い、私はノウミさんに言ってクレイさんと一緒にこの場を離れさせてもらう、他の人達に自分の殺したゴブリンの片付けをさせるわけには行かないとごねたけど強引に連れて帰った
工場長さんには事情を話してお休みを貰い家で休ませる、クレイさんは眠りについたと思えば汗びっしょりで起きてしまう日が続く、私はできるだけ一緒の時間を増やして側にいるようにした、時々寝言で
「仕方がなかったんだ」
とうわ言のように呟くクレイさんを抱きしめる、この人はこの世界で生きていくには優しすぎるのだ
起きている間でもふとした瞬間にフラッシュバックというのだろう思い出して食べたものを戻してしまう、日に日にやつれていくクレイさん、もう肉は見るだけで吐いてしまうので仕方なく野菜とパンばかりの食事になる
このままではいけないと分かっているのにどうすれば良いのかわからない
それから数日たったある日、コンコンと扉をノックする音が聞こえてきた、誰だろうかとのぞき窓を見ても姿は見えない、ドアを開けると小さな男の子と女の子が手を握って立っていたが人であれば赤ん坊くらいのサイズ、ドワーフの子どもと比べても小さいそこでやっと私はその子達が小人族の子供だと気づいた
「コンニチハ…」
一生懸命覚えたのだろう私たちの言葉を使っている小人族は結局、里を捨てざるを得なくなってここにやって来るとは話は聞いていたけどずっとクレイさんに付き添っていた私は彼らが到着したことを知らなかった、彼らがたどり着けたと知って安心した
少しためらったけど身振り手振りでお礼を言いたいという二人を招き入れてクレイさんに会わせる
見知らぬ来訪者に少し驚いたベッドの上のクレイさん、小人族だと察したようだけど言葉が判らないから戸惑っていると二人はぎゅっとクレイさんの手を握り
「オニイサン、アリガト!」
「アリガト!」
「&%%$#’’!%&$##”%&!」
身振り手振りと彼らの言葉で何かを言っている、きっと感謝の言葉だ顔が笑顔だもの、二人の頭に手を乗せて撫でてあげればもっと柔らかい表情になる、つられてクレイさんの顔も少しほころんだ
二人はクレイさんの手を握ったまま何かを呟くと二人の手が淡く光りクレイさんはそのまま眠りについてしまった、これは精霊魔法?
二人は一生懸命何かを伝えようとしてくれたけどたぶん癒やしか何かの精霊魔法を使ってくれたんだと思う、伝わったかどうか不安なのだろう私も二人の頭を撫で
「ありがとう」
と言えば良かったという顔を見せて手を振って帰っていった
この日を境に状況はゆっくりと良くなり始める、あの兄妹に限らず小人族は毎日訪れては感謝し祈りにも似た魔法を掛けていく、まだ完全に回復したわけじゃないけど食事も取れるようになり室内も外へも出れるようになった
歩けないほど体が弱っていたのではなく精神的に外へ出れなかったのだ
「どうじゃ?そろそろ問題なかろうて」
精霊様だ、いつも通り唐突な来訪
「精霊様が小人族に教えてくださったのですか?」
「うむ、わしにも力はあるがそれは森の為に使われる、それにわしにポンと癒やされても心の方が癒やされぬじゃろう、助けた相手に癒やされてこそ自分のなしたことに整合性が取れるというものじゃ、あやつは確かにゴブリン共を殺した、しかしそれは我が森の民を救ったと言うことでも有るそれをしっかりと自覚することが本当の癒やしにつながるのじゃ」
なるほど、癒やしの力自体は一時的なものでその間に心を癒やさなければ元に戻って繰り返しなのだ
「気を使っていただきありがとうございます、あの素朴な疑問なのですがゴブリン達は森の民には含まれないのですか」
「ん?あやつらは違うぞ、元々森の民ではないしこの世界の外から来た者たちの成れの果てじゃからな」
驚愕の事実だ、じゃあクレイさんたちと同じだってこと?こちらの考えを読んだのか
「成れの果てと言ったじゃろう、もう魂が汚れ種族として固定されておるのじゃ、この里におるゴブリンたちを見ると少しは浄化されまともになるようじゃがな」
「もう一つよろしいですか?」
「質問が多いの、用も済んだしそろそろ帰りたいんじゃが」
はたから見ればイヤイヤしている幼女にしか見えない
「今回見つけた陸軍…遺跡については精霊様はご存知で」
「ああ、あれか、あれはどれくらい前じゃったかのう」
見た目の年齢には似合わない大人びた仕草で顎に手をやり精霊様は話し始めた
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