56:墨俣の一夜城
言語が違うのに普通に小人族が会話しちゃってたので修正しました
見つかった陸軍の敷地までの道が繋がった
「オーライ、オーライ、オーライ、オライライライ」
クレイさんのオーライがゲシュタルト崩壊してる
トラックからは爪を器用に使ってショベルカーが自力で降りてくる、見てる方がハラハラするけど操縦士さんはなんでもないようなすまし顔
いきなりゴリゴリと土を掻き出すのかと思ったんだけど、別途で持ってきていた鉄板を溶接機で加工し始めた
土の中に不発弾や爆発物が無いとも限らないから重機に鉄板のガードを付けるんだって、確かに映画で見た爆弾の威力は凄まじかった、クレイさん曰くあれは映画用であそこまで見た目は派手じゃないらしい、でも人を殺すための道具であることには変わりはないのだから用心するに越したことはない
鉄板は一枚ではなく二枚重ね、銃の性能からしてその厚みならもし銃弾が何かのはずみで暴発しても貫通できない厚みなんだとかクレイさんって此処に来るまで銃は握ったこと無いって言ってたのに詳しいのよね、この世界にはないけどいんたーねっととやらのお陰で情報収集できたんだって、便利な世界
でも技術が進歩しすぎて本物と変わらない様に見える嘘の情報とかも有るから良し悪しらしい
結局調べ始めるまでに準備に一週間もの時間も要し、まずは屋根以外埋まっている施設周りの土砂の排除が始まったのだけど…
「クリシュナ様」
まだ土砂の掻き出し二日目、先遣隊のはずのミュレッタが一人でやって来た
「なるほど、既にゴブリン達に占拠されているのですか」
ミュレッタの話から相当数のゴブリンによって小人族の里は占拠状態、死者も出ているとのことだった
「武器が足りません…」
数百は居るというゴブリンを相手にするにはいかにこちらの武器が強いと言っても数でゴリ押しされてしまっては取り囲まれてしまう、エルフの里のときのように隠密で動いたところで倒せる数はたかが知れているしその間に小人族も殺されてしまうだろう
一気に殲滅が可能な作戦が望ましい状況
「ミュレッタさん、ゴブリン達の武器ってどんなものですか?」
「武器ですか?拾い物のショートソードや弓くらいでしょうか」
顎に手を当てて考え込むクレイさん
「ここから小人族の里まで出来るだけ平らな土地はありましたか?」
「おそらくクレイさんが言う軍道と呼ばれる道の跡がありますね」
「墨俣の一夜城…」
クレイさんがポツリとそう呟いた
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平和であったであろう小人族の里は変わり果て、ゴブリン達は小人族たちを嬲り暴虐の限りと尽くしていた
「ゲゲッしっかり運ばねぇとおめえの姉ちゃんおっ死んじまうぞ」
「そんなんじゃ今日も飯がもらえねぇどゲヒッ」
下卑た笑いを浮かべて土を運ぶ小人族を小突く
「##$$$%%&&!」
「ゲギャ、何を言ってるのか判らんが反抗的な態度が気に入らねぇ、おい!お前」
無理やりゴブリン達の昼食を作らされていたのだろう、鍋を持っていた小人族の妻が髪を捕まれ前へと引きずり出される
「’&%%$#””!」
「こんな楽しいこと止められるかってんだ」
ゴブリンは容赦なく小人族の女性を殴った
「”%#&%$!#(’&%&」
女性は夫に助けを求めるが、夫も地べたに押さえつけられ抵抗できない
女性の喉元にぼろぼろのショートソードを突きつけ
「抵抗したてめぇが悪いんだゲゲ」
ゴブリンが女性を切り裂こうと
ガガガガガガッ
轟音とともにメキメキと木々をなぎ倒し鈍い光を放つソレは現れた
「ゲェ!なんだあの化け物!てめぇら出てこい」
その大声にわらわらと外へと飛び出してきたゴブリン達、その数は優に百を超えまだまだ集まってくる
「グゥ!弓だ!弓を撃て」
見たこともない生き物に慌てながらも指示を出しゴブリン達は力のかぎり弓を放つが悲しいかな矢は一つとして化け物には刺さらない
化け物は気にすることなくゆっくりと突っ込んでくる、小人族を使って作った木の柵も鎌首をもたげたかと思えば容赦なくなぎ倒しみるみるうちに近づいてきた
「飛びかかれ!」
取り付いてしまえばどうにかなると思ったのか、それとももうそれしか策がなかったのかおそらく後者だろう
飛びかかったところで傷すら与えられない、それでも数で押せと言わんがばかりに張り付いて化け物が見えなくなったが、張り付けずに奇妙な足に巻き込めれて潰される者、その首に殴り飛ばされて死ぬ者、殺されない場所にしっかりと張り付いても
バァーン
どこかからした音の後、取り付いていたゴブリン達がバタバタと剥がれ落ちる
何が起きたのかも解らぬまま音がするたびにゴブリン達が死ぬ
やがて取り付いていたゴブリンだけでなく別の場所にいたゴブリン達もバタリバタリと倒れていきそこかしこから音が聞こえてくる
見えないなにかと迫ってくる巨大で気味の悪い鳴き声を上げる化け物、小人族の女性の首にショートソードを付きつけたまま
「来るな、来るんじゃねぇグギャ…」
女性を掴む手から突然力が抜けて、ゴブリンが倒れた
「ヒッ!」
女性がそんな声を上げるのも仕方がない、ゴブリンは眉間から緑色の血を流しもう事切れていたのだから
恐怖にかられたゴブリン達は散り散りになりながら逃げていくが音は容赦なく逃げるゴブリンたちをも殺していく
ゴブリン達の姿が見えなくなってもしばらく音は続き、何が起こっているのかわからない小人族達はとにかく耳を抑えてこの暴力の嵐が過ぎ去るのを待った、化け物も動き続けていて生きた心地ではない
どれくらいの時間が経ったのだろうか、とても長く感じる時間が過ぎると化け物から不気味な鳴き声が消え一人の男が出てきた
男は両手を上げて近づいて来る、武器らしい物は持っていない
「あの言葉わかりますか?」
化け物から出てきた男の声は穏やかだった
クレイさんの言っていた墨俣の一夜城というのは豊臣秀吉という武将の逸話で一夜で城を築いたという話だったけどクレイさんが注目したのは城の方じゃなくて、築城の際に使った工法の方だった
斧を使わずにノコギリ、まあ静音性の高い電動チェンソーだけどそれと倒れる際の音もオーク達の怪力で消したのだそうやって武装ショベルカーを侵入させたのだった
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