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本日投稿二話目、よろしくお願いします
結論から言って先遣隊はそのまま北進を継続
今日は仔たぬきからは一番おとなしいルディ、見た感じは興味と外に出た不安が入り混じっている様に見えるけど隙あらば冒険したがるアーミンとは違った意味で私は不安だ
道路の敷設は中断し標石探しに人を割くことになった、チェンソーはエンジン式と電動式の二つしかなく一つは先遣隊のノウミさんが電動、もう一つのエンジン式はスワンザ
残りの人々は斧や草刈り機で標石と標石を直線で結ぶように伐採や草刈りなので遅いがそれでもオークの怪力のお陰で私や人族だけで整備するよりも速い
「このエンジンってやつ作れるもんなら作ってみてぇなぁ」
参加しているドワーフは作業そのものよりも草刈り機の仕組みの方が気になっている、もうこれは種族としての遺伝なのではないか?
「おい、これ…」
工場から応援に来た従業員さんが声を上げる
「間違いないね…コンクリートだ」
一面見渡す限りの森の中で見つかったコンクリート、此処には明らかに何かがある
北へと急ぐ先遣隊からもレシーバーから連絡が入る、クレイさんにこっちに来て欲しいという事だった
「クレイちゃんあれはトーチカ?」
ノウミさんが開口一番そう言った
「これは見張所だと思います」
小高い所の木々の隙間から見える人工的なものを見てクレイさんが答えた、私でもかろうじて見えるかどうかなのにこの距離からなんの建物か判るのか、恐るべしクレイさん
見張所と呼ばれた場所へはここから階段が続いていて木の根に覆われている事からもだいぶ昔から此処にあったものではないかと考えられる
階段もコンクリート製で明らかに私達こちらの世界で見たことの有る技術ではない
「詳しくは断定できないけど多分一次大戦以降のものだと思う」
いえ充分詳しいと思いますけど…少なくともこの中では一番、ノウミさんはノウミさんで某映画の天空の城っぽいとか言ってる
男の人ってそういうの好きよね、まあコンクルザディアの人基準だけど
喜び勇んで見張所とやらを見に行くのかと思ったのに
「じゃ」
と一言だけ言ってクレイさんは戻ろうとする
「見ないんですか?」
「うん標石で範囲が絞れれば後からしっかりと見にこれるからね」
範囲を絞り込む方が大切みたいだ、目はキラッキラしてるから興奮はしているみたいだけど
「おそらくきっと此処が軍道だねスワンザお願い」
うっす!とチェンソーを取り出し木を切り始める
軍道とは狭くても3~4メートル程の幅を持った道のことで当時の軍隊が物資を搬入できるように山や森の中に作った道のことだと教えてくれた
標石や軍道といった手がかりを頼りに全貌を解き明かそうとするクレイさん、標石の分布図からおおよその範囲も絞っているようで
「ねえシュナ、この辺なんだけどさ」
自作の地図を見せてきてアドバイスを求めたり、標石の近くに有るであろうものを探しておいて欲しいと言われた、全く見つけられなかったけどね
使える人員総出で二週間かかって敷地の範囲が判った、まあ~そこからのクレイさんの暴走…じゃなかった探索の凄いこと凄いこと、大部分は土に埋まり蔦や木々が巻き付いていたがその中から見つかったのは弾丸を製造するための機械、ゴブリン達のトップが何者かは判らないが先に手に入れられたのは行幸
探索はクレイさんに任せ道路の延伸も再開され優先してこの陸軍の土地に道を敷くこととなった、早く道路が敷設され見つけた様々な道具を持ち出すのを心待ちにしているクレイさん
道路ができればショベルカーなどの重機によって更に何かが見つかると踏んでいる
このエリアを奪われないためにもコンクリートの壁作りが再開され、工場には久しぶりに活気が戻りつつあった
食糧事情もビニールハウスでの栽培により徐々に改善しつつあり、一品また一品と食卓に上がる食材の数も増えてきている
「ガルシアおじさん、これってもう収穫しても良い?」
「それは後一日待とうか」
オークやドワーフの子供たちは日々大きくなっていく野菜が面白くてたまらないようだ、毎日の世話やりを楽しんでいる
ガルシアさんは子供たちの相手をしながらタブレットを片手に毎日の収穫を入力している、集めたデータは工場でプリントアウトされて紙媒体で保存、この頃にはツァーミだけでなくオークの女性やドワーフの男性の事務員さんも生まれ日々データが蓄積されて始めていた
収穫量も増え始めた事で第一の半分の敷地しかない第二ビニールハウスもだいぶ手狭になってきていて、休ませていた第一の方にも植える検討が始まったところだ
ゲラ鳥の養鶏とヤンゲの酪農は、養鶏の方は順調に数が増え卵も取れるようになってきたそして彼らの糞は大切な肥料として再利用される
酪農の方は中々数が増えないが乳が取れそれを保存できるようにとチーズ作りの研究が進んでいた、こちらの糞も肥料に役立てられていて無駄なくサイクルが出来上がっているのは人族の知恵なのだろう
私達エルフも少量の農業は営まれていたけどこんな風に理論立てて農業をしたことはなかった、ドワーフにしても同じだろう、彼らの麦も収穫量が年々増えていて今年の収穫が今から楽しみだと教えてもらった
彼ら人族がこの世界に現れて三年目、コンクルザディア建国一年目の春は活気に満ちつつあった
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