51:暇な精霊様(白無垢のエルフ)
これにて二章終了
ちょっと体調がすぐれないのでしばらくは一日一話投稿になりそうです
「「おめでとうございま~す」」
神社へと続く参道にメーベを始めとするエルフの子達からの祝福の言葉が飛ぶ
コンクルザディアで初めて行われる結婚式、周りには族長やエルフだけでなく珍しい異世界の結婚式を見ようと沢山の人々
丘の上の神社で行われている神前結婚式
私は白無垢と言われる人族の結婚式で着る民族衣装だという真っ白な着物、隣には羽織袴姿のクレイさん、衣装は宮司さんが神社から貸出してもらった
細かいしきたりなんかわからないエルフの私でもとても神聖な気持ちになれるのは何故だろう
厳格な神前結婚式には程遠いんだろうけど宮司さんも世界が違うのだからとゆる~い感じで認めてもらってる、お仕事とかはお硬い日本人だけどこういったところは柔軟なのはすごい助けてもらってると思う
「なにやら楽しそうじゃのう」
神社の上から突然の声にざわめきが起こり出す、見上げれば淡く光りながら降りてくる人物
「えっと、申し訳ありませんがどちら様でしょうか?」
羽の生えた女の子のようなその人物は
「わらわか?そなたらが大森林と呼ぶ森の精霊とでも言えばいいかのう、最近になってドワーフ共の里が騒がしいと思って見ておったのじゃが、そこな男お主は神の使いか?」
精霊を名乗る人物が宮司さんに声を掛ける
「そのようなものだと思っていただければと思います」
「なんじゃはっきりせんのう」
「この世界の神とは違いますので…」
「殊勝な心がけじゃが神には変わらぬのじゃろう、神事だと言うのに神がおらぬのはちと寂しかろうて、どれわらわが見届けてやろう」
精霊は高位の存在で私も初めて見る、でも精霊と神を混同しても良いのかしら?私が考えている間に
「ありがたく存じます」
宮司さんがオッケー出しちゃった、それでいいの?
「なんじゃ、不服か?久しぶりに白無垢とやらが見れたから祝ってやろうと思ったのに」
久しぶり?どういう事
「精霊様ありがとうございます」
ここは任せてとクレイさんがウインクをしてみせた、とりあえず流れに身を任せてもいいってことよね
とんだ飛び入り参加もあったものの精霊様が見届けてくれたのなら私としても嬉しい、叶わないことは判っているけど父様と母様にも見てほしかったな…
ふわふわと浮かぶ精霊様が見守る中、結婚式は無事執り行われ出来上がったばかりの新居へと向かう、
沿道にはコンクルザディアの人々、いつ準備していたのか紙吹雪を撒く仔たぬきズ
「シュナお姉ちゃん綺麗~おめでとうございます!」
「「「おめでとうございます!!!」」」
おめかししたリサちゃんと仔たぬきズからも祝福の言葉
「ありがとうリサちゃんたち」
新居に着くとそこからはホームパーティーのような形で披露宴、此処から先は各種属のリーダーや仲の良い人限定だ…精霊様もついてきてるけど
お色直しで着物を脱いで大将さんの奥さんから借りたドレスに着替える、タキシードはなかったクレイさんも大将さんから礼服を借りている
白無垢は綺麗では有るけど少し動きづらかったから披露宴ではこのスタイル
「それでは改めまして」
ノウミサンが司会進行でクレイさんがスピーチを始め披露宴が始まる
「これは美味いのう!」
「精霊様!まだ駄目だよ!」
進行に関係なく食べ始めた精霊様をリサちゃんがたしなめている
この精霊様、食事が目当てなのでは?なにかしてくれるわけでもなく大将さんの料理に仔たぬきと一緒に舌鼓をうっているだけだ
ノウミさんはいつも通り飄々としていて精霊様が好き勝手してても気にもせずにどんどん進行していく
「では誓いのキスをどうぞ~」
事前に聞いていたけど沢山の人の前では恥ずかしいな
私達がキスをすると沢山のフラッシュときゃーきゃーと黄色い声、主にエルフからだった別の意味で恥ずかしいから辞めて欲しい
いつ誰が撮ったのか私とクレイさんの写真がプロジェクターで映し出されちょっと恥ずかしい、最初は和やかだった披露宴も酒が入り段々とただの宴会に近づいていく、披露『宴』だからそれでも良いのかな?
宴も酣になりもうそれぞれが酔って騒いで出来上がってきた頃
「精霊様、お聞きしたいことが」
クレイさんが切り出した
「さっき白無垢は久しぶりと仰っていましたが何処でご覧になったのでしょうか?」
「お~、あれか?いつじゃったかの~」
この精霊様酔っ払ってる…クレイさんが酒を足してあげる
「お~、お~くるしゅうないぞ、あれは確かおい!お主!お主は覚えておらんのか」
え!私?突然何を言うんだこの精霊
「いえ、私は何も」
「お主の里でのことじゃと言うのに嘆かわしい」
はぁ?
「それはいつ頃のことでしょうか」
「そんな事覚えておらんわ」
駄目だこの酔っぱらい
「そうじゃお主の里に褐色のエルフ共がおったじゃろ、あれらの母親、う~ん先祖じゃ、それの結婚式という場であったわ」
褐色?ダークエルフのことよね
「お前の旦那の様な黒髪の男とエルフが結婚して出来た子らがあの褐色のエルフたちじゃ」
とんでもないこといい出した、その話が本当なら私達の子もダークエルフに…一抹の不安からクレイさんを見る
「そうでしたか」
なんでもないといった顔で精霊様にお酌をするクレイさん、これで結婚を辞めると言われるんじゃないかと思うと怖い
「大丈夫!そんな事気にしないから」
クレイさんがぎゅっと私の腰を引き寄せて抱きしめる
「見せつけてくれんねぇ~」
まっちゃんさんの冷やかしに顔が赤くなってしまう、リサちゃん相手に私達の真似をしようとしたアーミンたちを目の座った大将さんが堰き止めていてちょっと怖い
披露宴も終わりお見送り、感謝の意味を込めて握手をして送り出した
「ふぁぁ、疲れたぁ~」
「私もです」
二人してどさりと結婚祝いのドワーフお手製ソファーに腰を下ろす
やっと二人きり、精霊様もちゃんと帰ったわよね?聞きたいことは沢山あるけど今は帰ってて欲しい
少しの間無言が続き
「精霊様の言ったこと気にしてるの?」
「はい…」
少なくともダークエルフに攫われたことの有るクレイさんは彼女たちに良い感情はないはず…
「どんな子が生まれようと俺達の子供に変わりはない」
じわりと涙がこみ上げてくる、嬉しくて抑えが効かなくなった私からキスをする
「証拠を…ください…」
クレイさんが私を抱き上げ寝室へと向かう
その日私は身も心も妻になれたのだった
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