閑話:ガッチャとワイヤー(ドワーフ視点)
本日は病院なので投稿は一話のみです
これはまだエルフたちもオーク達も後にコンクルザディアと呼ばれるこの国に来る前の話
我々ドワーフにとって人族の転移は神の思し召しであったと言って良いだろう
見たこともない道具に機械、困難を極める鉄作りをせずとも手に入る鉄に素材、これで作りたいと想像した…いや今まで想像することすら無かった物までアイデアが湧いてくる
それに輪をかけて彼らの知識に気質、正に物作りの神が遣わしてくれたとしか言いようがない、その殆どにおいて彼らは秘匿しないのだ
機械を使いたいと言えば親切に使い方、素材の性質、これによって起きた事故に至るまで聞いていない事まで教えてくれる
儂らにとって技術は命のようなものだ他所に教えるなどまずありえない、なんなら息子にでさえ目で見て盗めと思っていたのだが…
その中でも特に気に入ったのは彼らがガッチャと呼ぶ道具だ、小さな力で物を持ち上げ、荷締めもできる画期的な道具、これも仕組みが知りたいと言えば分解して中身を隅々まで見せてもらったのだが儂らの技術では到底作れないとショックを受けたものだ
そしてこのガッチャと呼ばれる道具はこの丘の持つ不思議な力、丘から持ち出すと増えるという謎の現象の適応外、彼らもよく判っていないがどうやら複数の部品で構成されているからじゃないかということだった、そうなると自分たちで作るしかないのだが
そこから更にショックを受ける
「作れるのなら自由に機械使っていいから作ってほしい」
これだけのものを持っておいて作り方までは知らないと言われたことだ、こんな物を見せられて好きにしていいなんて言われたら断る理由うなんて何処にもないではないか!
彼らの仕事を手伝う事を条件に仕事の合間や後に機械を使わせてえもらえることになり、それこそ寝る間も惜しんで…止められた
彼らは神経質なくらいに仕事の時間を気にした、早死するぞ!とまで脅される
確かにこれだけの道具が使えるのに早死するのは勿体無い、彼らのルールに従うことにした
一度、オーク達が来る前だったか酒の席で何故ここまで教えてくれるのかと聞いたことが有った
「向こうの世界ではですね…」
豊かになった後に子供を生む人間が少なくなり昔のようになり手が多く、選り好みしても勝手に才能がある者が残る時代ではなくなり、少数のなり手にしっかりと教えることを余儀なくされたのだという
子供が減るなど少々理解に苦しんだが道理は通っている
作る人間が居なくなれば技術は失われる、儂らドワーフにとって想像するだけでも恐ろしいことだ
「はいこれ」
といって渡されたのはガッチャの分解図、ここまでされて作れなかったと有ればドワーフの名折れ
ドワーフ総出でガッチャ作りが始まった
まずはガッチャそのものではなく作るための機械づくり、彼らのように電動と呼ばれるものは無理だが人力で動くものから始めていった
嬉しい誤算…表立っては言えないがちょうどその頃にエルフたちがやって来た、彼らにとっては嬉しいことではないが
エルフの登場によりボルト・ナットを作る機械の強度や魔力を動力にすることにも成功し、小さいものならプレス機と呼ばれる押しつぶして成型する機械も作れた
こうしてガッチャが出来上がると大型の弓、バリスタの制作に移りバリスタの弦を引く動力としてガッチャが利用されることになる
そしてもう一つバリスタに用いるねじりばね、これには彼らの持つ強靭なワイヤー、金属製の縄だこれをバラして構造を確認すると驚いた!隠れていた中心部は金属ではなく繊維、どうすればこのような発送に至るのだろうか?そしてこのワイヤーも丘の力で増えることはなかった
ワイヤーついてはノウミが詳しかった
ワイヤーは中心に1本の繊維その周りを6本の鉄の側線がねじられながら一つの束になっていてこれをストランドというのだそうだ、そのストランドを7本用意して中心に1つ置き周りを6つのストランドをねじりながら巻いていくこれでやっと1本のワイヤーになる
どれも同じ様に見えるワイヤーも編み方が有りそれを『より』と言って編み方でワイヤーの特性が変わる、主にノウミが教えてくれたのは『並行より』というもので金属疲労に強いのだという、じゃあもう一つの『交差より』はなんのためかと聞けば作りやすい分、強度は落ちるが安価なのだとか
ノウミはワイヤーの先を解き器用にワイヤーに編み込んで輪っかを作り引っ張ってみると結び目もないのに輪っかはほどけること無く輪っかの状態を維持している
細いとはいえ鉄を編み込むのだなんともすごい光景だ
なんとかしてこれを増やしたい、これが有れば…試しにワイヤーをバラし一つのストランドで丘の外に出して試すとストランドの状態では増えた、ということは構成部品が七つまでなら増えるということなのかもしれない今度はストランドを二つで試すが増えない…仕方がないストランドを丘に出すだけで一束は増えるのだから良しとする、増やして増やして七束できればワイヤーとして編んでいく
それからというもの丘の境目でストランドを出し入れするという知らないものが見れば不思議な行動が見られたが、どんどんと増えていくストランドを見れば奇行なんてなんでもない
それを見たノウミがそれならばとベアリングと呼ばれる小さな玉をバケツに入れて何度も丘の境目で出し入れしてベアリングの玉を増やしていた、一体何に使うのかと思えばノウミの武器の玉作り、散弾銃に使う散らばる玉だった
とりあえずは増やせるものは部品七つまで、この仕組みを知ってからは、丘の境目にレールが敷かれ前に後ろに移動させて資材を増やすのは日常の光景になったのだった
今まで書かれていなかった、丘における物の増やし方でした。ちなみに食べ物のように例外も有るので色々とみんなで今でも研究しているようですね
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