48:鉄板とオークの鎧作り
本日投稿二話目、午前中に一話目を投稿してますのでまだ読んでいない方はそちらからどうぞ~
バチッジジジジジ
アーク溶接…ではなくアーク切断、クレイさんが鉄板を溶接機で鉄板を切断している
本当に何でもするなうちの旦那
大将さんの二号店用の鉄板作りなのだけど切れ端を更に切断、細かくなった切れ端はドワーフの細工のために提供されるのだ、最初から板状の鉄はドワーフにとって願ってもない素材無駄になど出来ない
本来は重機の下敷きに使われる鉄板、使っても使っても元の枚数に戻るのだからコンクルザディアの貴重な資源
お陰でドワーフの工房からとんとんカンカン音が途絶える日はない、突然現れた人族と友好関係が築けた要因の一つだろう
ドワーフはそれまでは、鉱山で働く者と工房で働く者に分かれていて道具作りというやりたい仕事が出来ない者も多かった、それを最初から鉄が手に入る様になったのだ喜んだに違いない
友好の証として鉱山まで道を敷いたけど誰も行かなくなっちゃったとはクレイさんの言
今までは専らほそぼそと自分たち用に道具を作り、たまに訪れる他種族と物々交換する程度が今では豊富な鉄に機械で作りたいと思っていた物に資材も道具も手が届くようになった
こういうのを『文明開化』とか『産業革命』というのだ、本に書いてあったから間違いない
人に比べて体の大きいオークにはコンバットシャツやボディーアーマーがない、その代わりとしてドワーフに鎖帷子と鎧をオルドアさんがお願いしてみると飛びついた
新しい物や複雑な物を作るという事に至福の喜びを感じるドワーフには堪らない注文だったようで向こうの世界の鎖帷子を参考に即試作作りが始まっていた
要領としては銃のボルト部分のスプリング作りの応用で軸棒にコンクリート製品の骨に使われている3ミリの太さの針金を巻いていく、コイルが出来上がったらそれを一周毎に切り輪っかを作っていく試作品はオーソドックスタイプと言われる4in1という組み方で編まれていく
「目が痛い…」
おびただしい輪っかの連続に流石のドワーフも手を焼いているけど職人の意地が諦めることを許さないみたい
「なにもセルフブラックすることないのに…」
少し悲しそうなクレイさん、しかし自分たちを追い込んででも良い物を作りたいのがドワーフの血らしく二週間もすると試作の小型モデルを作り上げてきた
いつもの広場に試作品が飾られオーク達が構造を見たり改善点を上げたりとやいのやいの
それを見た工場長さんがなにやら考え込んでいる
「何か気になるのかの?」
「いえね、日本には五月人形といって、子どもの成長を願う政というか祝い事があるのですよ、それをちょっとお思い出したのですよ」
遠い目の工場長さん日本でのお子さんのことを思い出しているのかな?
「それは面白い政じゃの、どんな事をするのかのぅ?」
そういえば、家に日本の鎧を着た人形が有ったあれがそうなのかもしれない
工場長さんが説明している間に家から車に載せて持ってきて見せる
「これこれ、社長の息子さん用だからかなり高いやつだね」
兜だけだったり、実際には着れないサイズだったり色々とあるそうでこれはその中でも全身着れて刀と弓も付いているタイプ
「工場長、物は相談なんだがこの祝い事ここでもやらんか?」
「それは構わんですがどうしてです?」
「これは本物のサイズより小さく、技術を磨くには最適じゃと思ったんじゃよ、子供を祝えて技術も向上する良い事ずくめじゃ、どれ試しに」
オルドアさんに頼んでオークの子供、まだ小さく二歳くらいだろうか?に着てもらうと周りがざわめき始めた、主に男の子達が
「かっけえ!」
「とうちゃんあれ俺も着たい」
「オークだけずるい!ドワーフ用も欲しい」
「お父とお揃いで着たい…」
さっきまで喜んでいた工場長さんの顔が曇る
「嫌かの?」
「いえそうではなくてですね、これは男の子の祝い事なのですがこうなったら女の子の祝もしないとと思いまして」
「そんなのも有るのか、なら一緒にすればよかろう」
「それがですね…女の子の祝い事、ひな祭りというのですがそれはそれでまた趣が違いまして作るのも大変といいますか…」
作るのが大変という言葉に族長の目が光る、しまったという工場長さんの顔
「ほうほう、それはどんなものかの詳しく」
食いついた…雛人形は家にあったかしら?後で倉庫を調べておこう
大人のオーク用の鎧が出来たらですよという釘を差されたけど、男の子の端午の節句も女の子のひな祭りもやろうという事で落ち着いた
もっともひな祭りに関しては全種族の女性がやる気になったのでオークの鎧とは別に女衆がこぞって雛人形について保育園のユカリ先生を講師に勉強会まで開かれるまで盛り上がってしまったのだけど元気がないよりは良いわよね
ちなみに仔たぬきズの鎧は特注で日本式の鎧を工場長が注文、女の子たちには着物をと無茶振りしたため着物を来たがる女子が爆増したため、後にコンクルザディアでは紋付袴と着物で七五三と呼ばれる祝い事まで風習になるのだけどそれはずっと先のお話
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