42:サプライズ大作戦!
本日投稿二話目、明日は病院なので一日お休みをいただきます
うふふ
用事があるわけでもないのに寒い冬の場内を歩く
「クリシュナちゃんおはよう、お!耳のそれあったかそうだねぇ」
夜の警備を終えたまっちゃんさんが挨拶をしてくれる
「おはようございます!わかります?これクレイさんが編んでくれたんです」
「器用だねぇ~、旦那お手製か」
そうなのだ、何を編んでいるのか教えてもらえなかったものは毛糸で編んだイヤーウォーマー
耳が赤くて寒そうだったからだって!
用事もないのに歩いているのは自慢したいからという子供じみた事なんだけど見てもらいたいの
「おはよう、耳あったかそうねぇ」
「そうなんです、クレイさんが~」
次々と出会う人達に自慢する
ご機嫌で事務所に戻るとこちらも夜勤警備帰りのメーベがストーブで暖を取っていた
「おはようございます姫様…」
「そう!判る!?クレイさんが編んでくれたの」
「いえ、何も言ってませんが」
この侍女いけずだ、絶対に気づいてるのに
「ほう、手編みですか器用ですね、で姫様からは何をお返しするんですか?」
「え?」
「貰うだけでお返しはされないおつもりですか?」
「うっ…」
確かにそうだ、それに日頃もカレーだったり煮物系の料理を作ってはストーブで熟成した旨味たっぷりなものを頂いている
「既に何人かは日頃の料理に感謝してお返しを考えてるようですが、まさか姫様に限って浮かれていて何も考えてなかったなんて有りませんよね?」
「も、もちろんよ!」
なにそれ聞いてない!まずい!非情にまずいわ!どうしよう!
「まあ、他の子達もお返しに一月くらいかかるみたいだから急がずとも」
「そうなのね」
はぁ~とため息を付くメーベに気づくこともなくお返しプレゼントを考え始めたクリシュナなのでした
「クレイちゃんの好きそうなものねぇ~」
一番中の良さそうなノウミさんに聞いてみる
「軍艦とか戦闘機とか兵器一般かな?スポーツも観るのもやるのも好きだし車も好きだよね、料理も好きだしキャンプもやるし動物はサメが大好きだね」
ん~軍艦や戦闘機は私は見たこともないものだ難しい、手芸から軍艦まで幅が広すぎるよクレイさん、サメが好きなのはクレイさんの映画コレクションを見れば判る、でもサメだけじゃなくてワニも好きだし熊も好き、基本攻撃的というか強い動物が好きみたいだけど
「でもさ~、クレイちゃんが欲しいものもいいけど、クリシュナちゃんがあげたいと思うものも良いんじゃないかなぁ」
私があげたいもの…か、ノウミさんにお礼をして事務所に戻る、事務所のストーブからは良い匂い、今日はホワイトシチューだ、辛さがない分子供たちはカレー以上に好き嫌いなく食べる好物メニューなのだけどクレイさんはデスクで何やら難しい顔
「どうかしました?仕事でなにかトラブルですか?」
「いやトラブルとかじゃないんだけど」
どうやら里の人達の食糧事情のお話、食事が偏っているのを改善したいみたい栄養失調とかにはなっていないけどいつも同じものばかりだとメンタル面がやられるから楽しいものにしたい
言われてみれば私達の食事はクレイさんのお陰で毎日が違っていて食事は楽しいものだ他の種族特にオークに対しては申し訳ない気持ちもある、カレーやシチューのルウや味噌なんかは使ってもこの丘の特殊な力で減らないのだから、今の大将さんに頼りっきりな状態から一品か二品でもいいからレパートリーを増やしたいというのがクレイさんの考えだった
「まあ直ぐにどうにかできるものでもないし、今年さえ乗り切れれば来年にはまともになると思うけど…」
言葉ではそう言っているけどその感じからして直ぐにでもなんとかしたいんだろうなとわかる
これかもしれない!クレイさんが欲しくて私があげたい…あげられるかもしれない物
「検討よろしくお願いします」
工場事務所に研究申請書、というより今回は製品作成の申請
「これはまた…そういうことですか、おいホシノ!」
工場長さんに呼び出された品管主任さんは申請書に目を通す
「このサイズの一品物ですかぁ~」
眉間にシワを寄せてるこの顔は駄目…ではなく既に計算している顔だ、半年以上いつも研究棟で一緒に働いてるのだ段々と判るようになってきた
「あれ?今日は研究棟じゃなかったっけ?」
ドワーフの鍛冶屋でばったりとクレイさんと出会ってしまった
「ああ…あはは~ちょっと必要なものが有りまして~それじゃ!」
「あ、ああそれじゃ…」
鍛冶屋には型枠をお願いしに来ていたけど見られてなかったよね
クレイさんに隠れてのお仕事は大変だ、何処に現れるかわからないというか何処にでも現れるから!正に神出鬼没!
バレないようにしなくては、えっと見本が欲しいとドワーフのゲンさんに言われたんだった家の台所の下にあったはず、事務所には~クレイさんは居ない今がチャンス
思った通り台所の下に有った今のうち今のうち、わたしはそれを持って…結構重いわね、階段を降りて事務所の前を
「シュナ~」
「ひゃい!」
事務所のデスクにはいつの間にかクレイさん
「なにそれ?重いなら持とうか?」
「だ、大丈夫です~あはは~、じゃ!急いでるから」
箱に入れたままで良かった中身はバレてない
工場にも鍛冶屋にも口止めはしてあるから決定的なところさえ抑えられなければバレない…と思う
工場では品管主任さんが耐火に適したモルタルの選定をしてくれていてそこに私が魔法陣で更に耐火性を上げる事になっているのだけど、モルタルに直接書くのではなく試しに魔法陣を刻印した型枠を作ってみようと言うことになった、これができれば今後は製品の量産にも利用されるそのためのテストケースに選ばれたのだ
「こんにちわ~」
「「「こんにちわ~」」」
今は保育園に来ている、保育園の飼育小屋ではスライム、レッド、グリーン、ブルーの三種類が飼育されていて子供たちが餌やりを担当して飼育教育をしているのだ
スライムたちは無害で森の中になら何処にでもいる森の掃除屋さん、色の違いで食べるものが違うくらいで生態は同じだ、彼らは排泄はせずに脱皮を繰り返す脱皮で出た皮膜を利用させてもらっている
レッドの皮膜は耐火性が有り、グリーンは強度が強くビニールのように使える、ブルーは耐水性が有る
研究でコンクリートに貼るコーティング剤としてよく使っている素材、重ね貼りも出来る万能素材を取りに来たのだ
台車に皮膜を乗せて押す帰り道でクレイさんに出会うがこれはよく使っている研究素材、焦る必要はない
「ずいぶんといっぱい持っていくね手伝うよ」
「ありがとうございます、それじゃお言葉に甘えて」
「良かった」
「何がです?」
「いや、なんか最近避けられてる気がしたからさ」
ぎくぅっ!
「そんな事ないですよ!クレイさんの事大好きです」
避けられてると思われて嫌われたら元も子もないじゃないですか
「良かった~」
ほっとするクレイさんを見て心配させてしまったことを申し訳なく思う
もうちょっと、もうちょっとですから待っててくださいね、きっちり仕上げてクレイさんを驚かすのだ、クレイさんに見えないように私は拳をぐっと握るのだった
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