38:ボーリング調査をしよう!(温泉を求めて)
本日投稿二話目、先に一話目を上げてますので未読の方はそちらからどうぞ!明日は更新お休みするかも?
「それ本当!?」
近い!クレイさんの顔が近い!
話の流れでこないだの山菜採りこと食料集めの際の仔たぬきズの様子を話していたのだけど、仔たぬきズが嫌がった場所の事でクレイさんが食いついたのだ、あ…もうちょっとでキスできそう
「近かった?」
「いえ、そんな事は」
近くても嫌じゃないですよ、私は目を閉じて…
「そっか~近くないのかぁ~」
残念そうな声、何の話をしてるの
「近ければいいのになと思ったんだけど」
あ、これ臭い場所のことか
「あ、ごめんなさい近いです子供たちでも歩いていける場所ですから」
「ん?じゃあさっきのは?」
「か、勘違いです」
「何を勘違いしたのかな~」
ニコニコとした笑顔これは判ってて言ってる顔だ、意地悪
ん!
ちょっとした意趣返し、私の方からキスをすればクレイさんの目が見開かれた
「ちょっと意地悪だったねごめんね、でも嬉しい」
してやったりなのです
「ちょっと杭打ちの親方のところ行ってくる」
あれ?行っちゃった
こないだも杭打ちの親方さんに交渉していたのは温泉という地面から熱湯が出る穴を掘れないかという事だったっそう、親方さんは片手間で井戸掘りもしていてボーリングという穴を掘る仕事もできる人
でも親方さん曰く、親方さんが掘ったこと有るのは地質調査のための100メートルくらいまで、温泉とは日本では1000~2000メートルほど掘るのが平均らしいしそこまで掘ったから絶対に温泉が出るというわけでも無いんだとか、親方さんの経験もそうだし機械もそこまでは掘れねぇんじゃねえかと言うのが二人が神妙な顔で話していた内容
目に見えない地面の下の事だから親方さんがいい顔しないのも仕方がないかな、でも岩盤までの深さを測れる機械が工場には有ったはずあれじゃ駄目なのかな?
ボーリングで掘削するためのロッドこれと穴を守るための鋼管は複製されるがロッドの先のビットと呼ばれる刃に当たる部分は複製されない、それはドワーフに作ってもらうにしても
深くなればなるほど機械に必要とされるパワーが増えるそうだ、かなり古い機械だし元々温泉を掘るような機械じゃない事を考えれば100メートルの二倍か三倍の300メートルも掘れれば御の字じゃないかそれ以上は未知数とのこと
なんでそこまで温泉にこだわるのか?
クレイさんは昔温泉街と呼ばれる街のそこら中に温泉があるという場所で働いて居たことがあるそうで、その街では道の下に温泉を通してその熱で雪を溶かしていたんだって、温泉も知らないので想像するのが難しい
それを利用してビニールハウスを温められないかというのがクレイさんのアイデアだったんだけど親方さんの話を聞いて諦めかけていたところに仔たぬき達の、くちゃいくちゃいの話、たぬきという生き物は私が思った通り嗅覚が優れているので、もしかしたら…
というわけである
しばらくして帰ってきたクレイさんの顔を見れば許可が降りたんだろうなと直ぐに判った
「や~」
「くちゃいのや~」
一番匂いのきつい場所を探してもらうために連れて行く事になった子供達はごねにごねた
子供たちには大将さんの家…お店でリサちゃんと一緒にやきとんパーティーで手を打った、そろそろ寒くなってきたのであの絶品モツ鍋食べたいなぁ〆は雑炊かラーメンか
親方さん達も一緒に現場を視察、GOサインは出ているけど子供たちの鼻だけを頼りにしたこの話を信じてくれているんだろうか?
「「「「「「い~~~」」」」」」
鼻をつまみながら子供たちが指を指す場所にクレイさんが目印の杭を刺す
「本当にここなのかなぁ~全然匂いとかしないんだけど」
「「「「「「ここ!」」」」」」
全員一致、疑いの声にう~!と唸る子供たち、悪い悪いとクレイさんは子供たちを撫でようとして
「くちゃい」
手をぺちっと弾かれる
「リサちゃんとパーティー!」
「早くパーティー!」
子供たちの意識は既にパーティーに飛んでいる
「まあ昔からたぬきには不思議な力が有るって言うからな、信じて掘ってみるよ」
確かに日本の昔話にはたぬきが出てくることが多い、親方さんも信心深いと言うかなんというか
「それによ、子供たちを信じてやるのも大人の仕事だ」
やだ、格好良い!
「さて、他も探すか?」
「え、今子供たちを信じるって」
「そりゃあ信じているさ、他ってのはボーリングで周りの土地が安全かどうか調べる場所のこった」
目的の場所を掘るだけではなく周りも確認するために数か所調査するのが良いということだった
その日から温泉が出ると指定されたエリア数カ所に鉄パイプで組まれた櫓が組まれ順次ボーリングの調査が行われることになった
その頃には先遣隊も一時的に調査を中断してボーリング調査の護衛に回り、道路の延伸も中断になった
掘ってはサンプリングと行って地中の様子、地盤の硬さや地層の境界を10メートル毎に確認するためにサンプルを取り出している
「地面と言ってもずっと同じ層ってわけじゃねえ、土・砂・粘土・岩・砂と粘土が交じる層だったり同じ顔はしてねえもんだ、それを振動や音で感じながらマシンを操作していくんだ、初めは誰だってわかんねぇから失敗を気にすんな、わかんなけりゃ聞け」
弟子のオークにそう教えながら掘り進める親方さん
秋の終わり頃には周りの地盤のN値と呼ばれる硬さの指標?は大丈夫らしくいよいよメインの掘削が始まった
おそらくの限界は300メートル、それ以上は未知数で平均とされる1000メートルはまず無理、出来れば100メートルくらいで出てきてくれればという、仔たぬき達の鼻を信じての温泉堀り
工場の方でも道路やビニールハウスのそばや下に温泉を通すための鋼管が始まっていた
雨季を乗り切ったというのに今度は本格的な冬までに間に合わせる突貫工事、つくづく穏やかに一年はすぎてくれないものだと木枯らしに当てられながら私は思うのだった
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