36:保護者参観日と課外授業(遠足という名の食料集め)
本日投稿二話目、朝に一話目を投稿してますので未読の方はそちらからどうぞ
仕事終わりビニールハウス農園を訪れた
ビニールハウスの中はまだまだ暖かく、作物達も順調に育っているけどもうすぐ秋、これは人族の暦ではなく私達エルフの感覚
冬も作物を育てたいけどビニールハウスも万能ではなく寒くなれば流石に育たない、出来る限り保存が可能な食べ物を今のうちから蓄えないといけない
大将さん発案で毎日釣った魚も一定数が天日で干され保存食として加工されているしお肉も干し肉へと加工されている
オートクレーブ養生の釜の蒸気で温められないかという案も出たけどそれだって一日中稼働させられるようなものじゃないし稼働させて壊れたら元も子もないと却下、正直言ってジリ貧、過酷な冬になるのは想像に容易い
先遣隊のお陰で道路の延伸に森の中の魔物の分布なども把握でき始め、安全なエリアにおいては護衛を付けつつも山菜採りに出かけるオークやドワーフ達も居るくらいだ
大将さんの養鶏も徐々に数が増え始めているけど今は残飯を餌にできているけどこの先残飯すら出なくなれば増え始めたゲラ鳥もゼロ羽に逆戻りも有り得るそうならないことを祈るばかり
足の早い野菜を少しばかり頂いて家路につく
家の中では仔たぬきズがはしゃいでいる、明日は遠足であり保護者参観日…という名の山菜取り、護衛はママたちにスワンザ達オークというVIP待遇、もちろんパパである工場長さんは明日も仕事を休む
はしゃぎすぎる子供たちを見ているとちゃんと今夜は眠ってくれるだろうかと心配もしたがはしゃぎすぎたせいであっさりとそれぞれのママと一緒に眠ってくれた
「朝だー!」
「遠足だー!」
初めての門の向こう仔たぬきズは朝から元気爆発、くれぐれもこないだの様に勝手にママたちから離れないことと注意をする
「「「は~い」」」
返事は元気だけど大丈夫かな…私を含めたエルフママ達は頷き合って目を離さないことを確認しあう
「はっはっはっは」
ルディを肩車しているパパはごきげん、アネットはミュレッタがヒルデはメーベが肩車している
カール、アーミン、ロルフの三人はリサちゃんにベッタリでそれを大将さんが見定めるように三人を見ているけど…
私にとっては何でもない景色も子供たちには初めて見る門の外の景色が何でも新鮮に見えるのだろう、ユカリ先生も同じような目をしていることからも人族だからといってみんながみんなこの環境に慣れているのでは無いことも感じられた
森の中でも少し開けた場所へ出ると
「ママ~なんか臭うね」
ヒルデがそう言いメーベは周囲を警戒したけど私も何も感じ取ることは出来なかった
やがて仔たぬき達全員が
「くちゃい」
「うんち~」
「ここや~あ」
顔をしかめて嫌がり始めたが人族のユカリ先生を含めスワンザやドワーフ達を見ても首を横に振り彼らにも匂いがわからないみたいだった
結局子供たちの嫌がりようからその場所からは足早に離れた
目的地に着くとくんくんと仔たぬき達は鼻を利かせて山菜を探し始めた
「大将おとうさん、これは食べれる?」
ロルフが沢の近くに生えていた水草を大将さんに見せる
「おお!凄いそれ山葵じゃないか!?それとお父さんじゃないぞ」
ニッコリと喜びながらも声が冷たい
「それはどくだみみたいな匂いがするね、お父さんじゃないよ」
「山葵はきれいな水で育つから取り過ぎちゃ駄目だよ、あとお父さんじゃない」
カールやアーミンからもおとうさん呼びで見つけた植物を見せられるたびに笑顔の仮面を掛けた大将さんが降臨する、将来が不安だ
いつも食べている山菜の他に山葵を始め数種類の薬味や食べ物になりそうなものを見つけた、私達が食べ物と認識していないだけで、食べれるものがこんなに有るのかと人族の…いや大将さんの知識には驚かされるばかり
そして仔たぬき達が一番山菜を見つけた事からあの子達の鼻は私達の鼻よりも嗅覚が優れているが判った
帰り道のオーク達が背負う籠には山菜が山盛り、それでも一日でも全員に行き渡るような量ではない
不安は有るでも乗り越えていかなくちゃいけない、子供たちの笑顔を守るためにも…
結局帰り道でも同じ場所で仔たぬき達はくさいくさいと同じ反応を示した、私達は何も感じられないのだけどあの場所には何かあるのかもしれない、気ががりだったので印をつけてからその場をあとにした
家に帰ると仔たぬきズがばたばたと落ち始め、お風呂に入れるのに苦労した
子供ってばさっきまで元気だと思っても直ぐに眠っちゃうのよね…
なお、子供たちよりも張り切りすぎたパパこと工場長さんは筋肉痛で動けず、事務所を含めた従業員さん達から白い目で見られていたが自業自得なので
「もっと運動しないとですね」
とだけ伝えた
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