閑話:仔たぬきズ(園児たち)の社会科見学
本日二話目の投稿ですよろしくお願いします。閑話なのでどちらから読んでもそこまで影響は無いです
「はい皆さん、今日は社会科見学です、案内してくれる工場長さんにご挨拶しましょう」
保育園の主任ユカリ先生の掛け声に
「「「「よろしくお願いします」」」」
元気で遠慮のない無邪気な声が工場に響く
従業員の前では絶対に見せないようなニコニコとした笑顔で工場長がオーク達の移住で30人を超えた園児たちを迎え入れる
「ぱぱ~」
「ぱぱだ~」
仔たぬきズのルディとアネットの声、緩みすぎて頬が落ちるんじゃないかと思うほどの微笑みに従業員たちが引いているが工場長は全く気にしない
保育園にも足繁く通っているので園児たちにはこれがデフォ、ムスッとした仕事モードの工場長の裏の顔を知らない
工場従業員たちも仔たぬきズに優しい、工場長の顔色をうかがっているからではなく功績のお陰だ、その功績とは安全管理の徹底と定時退社、無理な工程の見直し…etc、こっちの世界に来たからということも有るが向こうの世界での観念を捨ててここまで徹底出来たのは仔たぬきズのお陰なのだ今じゃすっかりホワイト企業
「たかーい」
「おっきい」
「はい、皆さんここがサイロと言われる場所で」
普通この説明はもっと下の従業員がするのだが…工場長自ら説明している、子供たちにいいところを見せたいただのお父さんである
「コンクリートとみんなは言っているけど本当は種類があります、セメントという粉は水と一緒になると固まる性質が有るんだ、面白いね」
「おもしろーい」
その反応に工場長ニッコニコ、従業員ドン引きである
「そこに砂と砂利…小さい石を入れたものがコンクリート、小さい石を入れずにセメントと水と砂だけのものをモルタルっていうんだ」
園児にわかりやすく説明する工場長
「はーい!」
手を上げたのは仔たぬきズの長男坊アーミン
「はいアーミン君どうしました?」
「せめんととこんくりーとともるたるは何が違うんですか!」
「いい質問です!」
えへへと照れるアーミンとでれっでれの工場長
「セメントに小さな石と砂を加えたコンクリートは固くて強くなります、建物を建てる時にとっても役に立ちますね。モルタルはコンクリートほど強くないですが砂だけなので隙間を埋めたりするときは便利なんだよ、セメントと水だけで使うことは少ないけどコンクリートのひび割れやモルタルの補修に使えるんだ、わかったかな?」
「「「「はーい!」」」」
本当に判ったのか謎だが元気いっぱいに答える園児たち
続いて工場内を見て回る園児たちの目に撹拌され自動で決まった量の落ちてくるコンクリートや天井クレーンに小型のフォークリフトが映り
「わぁ~」「すごーい」
「あ、とうちゃんだ!」
ドワーフの子がフォークリフトを運転している父親を見つけて手を振る、父親も気づいて手を振り返す
「お前の父ちゃんかっこいいな」
オークの子供が素直な感想を言えば自分のことのように喜ぶオークの子供
そしてこの工場見学の目玉、工場長肝いりのメインイベント、15tフォークリフトの後部に子供たち用の座席とタラップまでドワーフに作らせる徹底ぶり
5名ずつの交代で15tフォークに乗ってぐるりと場内を一周、興奮する子もいれば普段はお姉さんな大将の娘リサがおっかなびっくりだったり、ゆっくりやさしくフォークを運転するのは運送部の積み込み担当のワンさん、子供の学費を稼ぐために出稼ぎに来て巻き込まれたワンさんも子供には特に優しい
続いて研究室
研究室にはエルフのクリシュナが居て魔法のわからない工場長に変わって説明を始める
種族的にドワーフもオークも得意ではなく、興味をそそられているのはファンタジーに憧れる人族のリサちゃんとエルフたちと暮らし魔法を身近で見ている仔たぬきズだったが
魔法で変わったと特性を持つコンクリートを次々と紹介していくクリシュナ
表は固いのに裏からはちょっとした衝撃で壊れるコンクリートや、重いのに水に浮かぶコンクリートなどを見せられているうちに興奮し始める子供たち
余興で魔力で水だけで練ったセメントを弄って花を作ってみせたり車を作って見せれば
「俺にも出来る?」
「私も!」
子供たちの笑顔が弾けた
こうして子供たち大興奮の中、安全に社会科見学は終了し、仔たぬきズの長男アーミンの
「ぱぱみたいになりたい」
の言葉に工場長が泣いた