閑話:大将の二号店構想
本日一話目の投稿、二話目も投稿済みで閑話なのでどちらから読んでも特に影響はありませんのでよろしくお願いします
クレイさんの帰還で湧いた夜、自分も嬉しくて酔っ払い家に帰ってきた
「まあクレイさんが帰ってきたんなら仕方ないわね」
とは妻の言
「鉄板焼かぁ~」
確かに炭火焼はお店だけ大きくしても焼き場に限界がある、鉄板焼きの方がニーズには有ってるんだよな
どちらにせよ二号店を出すなら今とは違ってちゃんと仕入れして料理したい冷蔵庫から取り出して客が食べればまた冷蔵庫に食材が戻ってるいるなんてでたらめな状況は料理人としては複雑な気持ち、金儲けだけを考えれば楽ちんだが…目利きもクソもなくて物足りないのだ、お金がコピーなのもその気持に拍車をかけているのかもしれない
オークの皆さんが来てから人口は二倍以上に膨れ上がった食事処を増やすのは商機的に見ても正しい、それに出来ればオークのママさん達を安定した職に付けてあげたい気持ちもあるし
鉄板焼なら焼き場も広くて数もさばけるし従業員も増やせる…
そうすると、場所はオークさん達の居住区の…出来れば養鶏とか養豚とか…家畜化出来る動物とか…
ふぁぁあ、眠い…動物は森に詳しそうなオークのオルドアさんとエルフのクリシュナさんに聞くとして…
米…稲はクレイさんのバケツで育ててたやつだけ、あれを収穫と言えるまでの量にするのは何年も掛かるよなぁ~
あれこれ考えても店を建てるなら工場長さんたちと話さないと…とりとめもなくアイデアを考えているといつの間にか眠りに落ちていた
「ガルシアさん、なんかした?」
「何もしてないよ?」
朝からオーク居住区に在るビニールハウスに来ているのだが、気になっていた事を聞いてみたけどガルシアさんは何もしてないみたいだ…なんか成長が速い気がする
二十日大根を一つ抜いてみる、二十日大根は確かに名前の通り成長が速いが二十日以上掛かるものなのに二週間で育ちきっている…土地になにかあるのか?
「育ち速いよね」
ガルシアさんも感じているみたいだな、とは言え恐ろしく速いというわけでもないし連作し続ければ障害が出るだろうし
今は種を増やすことを目的にしているので収穫して食料に出来る作物は少ない
「ガルシアさんさあ、ハウス増やしたくない?」
土地はまだまだ余ってる
「そうね~オークさん達人で余ってるし良いかもね」
工場長さんにこれも相談してみるか、ビニールハウスを後にしてリーダーのオルドアさんを探す、家畜に出来そうな動物についての相談がしたい
「家畜…ですかぁ、正直私達は森で狩りをしていましたが育てて食べると行ったことはしたことがないので…」
「飼ったことがなくてもいいんです、森の中で一度に産む数の多い動物とか卵を生む動物に心当たりはありませんか?」
口ひげを弄りながら考え込むオルドアさんは日露戦争とかの頃の将校みたいだ髭がカイゼル髭っぽい
「そうですな、飼えるかどうかは分かりませんが、ヤンゲという動物と…魔物ですがゲラ鳥、こいつは卵を生みますな、狩猟の際は出来れば生け捕りにしてくるように言っておきましょう」
「魔物は危なくはないのですか?危険なようなら無理にとは」
「いえ、どちらもおとなしいので人でも大丈夫かと」
「そうですかそれならよろしくお願いします」
「なぁに、いつも料理を振る舞ってもらってますからな、美味しいものが増えるのならこちらの方が感謝しているところですよ」
どーんと構えていて、安心感の有るオルドアさん見てて気持ちがいい、少しでも食糧事情を改善出来ると良いんだけどな
満足には食べられていないのだろう、彼らのややこけた頬を見て思う、料理人としては満足行くまで美味しいものを食べてもらいたいものだ
「クレイさんですか?今は場内に出てて」
「いや、クリシュナさん達に聞きたいことがありまして」
運送部の事務所にはクレイさんではなくクリシュナさんが居た、いつもは住居兼事務所の二階にいると思っていたけど呼ぶ手間が省けた
「そうですね~、私もオルドアさんの言う二種類が良いかと、ヤンゲは向こうの世界の図鑑で言うところの山羊に似ていると思いますし、ゲラ鳥は鶏に似ていますでももっとたくましいですけど」
たくましい?軍鶏みたいな感じだろうか、軍鶏料理は筋肉質な分柔らかくするまでに時間が掛かるが料理としては良い食材だ、育て方を間違えると自分の生んだ卵を食べてしまう奴もいるから注意とは闘鶏をしていたクレイさんのお父さんが言っていたことだ、まあそういう鳥は直ぐに食卓に並んでしまうとも言っていたが
クリシュナさんからは他にも魚に関する情報も得られた、鮎や虹鱒に似た魚もいるそうだ、久しぶりに塩焼きにして食べたい、えらい上機嫌だけどこれはクレイさんと何か有ったという事かな?
工場の資材を使えば釣り竿、針はドワーフさん達に任せれば作ってくれそうな気がするな、上手く行けば養殖も出来るかもしれない思い浮かんだアイデアをメモする
「お邪魔します」
ツァーミさんに挨拶をして応接室に通された、工場長さんとドワーフの族長さんのヤーレンさんが話し合い中、一瞬いいのかなとも思ったが問題ないらしい同席させてもらうとやはり話し合いの内容は食糧事情について、ちょうどいいのでこちらからもアイデアを話す
種を取りつつも食料に出来る物の話に、二号店の構想、養鶏や魚の養殖の話など、中々感触は良かった
コンクリート製品に使う細めの鉄筋を使えば養鶏のケージが作れる
コンクリートで養殖用の生簀も作れる…
のだけれど二号店の建築にだけ工場長さんは渋い顔、嫌なわけではなく彼らの仕事の用途が建物を建てる基礎で有ったり護岸工事だったりと主に地面か地面の下が主戦場であり上…建物自体のノウハウも資材もないということだった
「上はうちらの建築ではいかんのかのう?」
ドワーフさん達の家は基本石積み、イメージとしては北欧やヨーローッパの山岳地帯にありそうな感じ
う~んどうなんだろう別に構わないようなむしろそっちの方がこの世界では馴染みそうな気もする問題なと伝えると今度は工場長さんが食いついてきた
「それならうちの人間も設計段階から関わらせてもらえると今後の建築の勉強になる」
ドワーフと人の合同建築か、そして料理人にはエルフやオークの人々、今のここを象徴するようなお店に出来そうだ
二号店の方は食糧事情が落ち着き次第ゴーサインということで落ち着き、しばらくは鉄板焼の指導と養鶏や養殖に取り組む
新しい目標を手に入れた大将の目はやる気に満ちて燃えていた