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攻めんといて!俺達は異世界にコンクリートで専守防衛国家を作りたい  作者: くろすおーばー
一章  コンクリートの町とエルフ
23/166

23:本当の使命を求めて(ミュレッタ視点)

「あ~あ、なんで族長の娘になんか生まれちゃったんだか」


私の知るクリシュナ様


「ミュレッタは大人になったら旅に出るのよね、羨ましいわ私もついて行こうかしら」


それは見聞を広めるお役目を預かったからであって、好きで選んだわけでは無いのに…


族長の娘であるクリシュナ様に面と向かって文句を言えるのは族長と母君かメーベ様、ダークエルフの…ユフィシェルナ…様位


自由を謳歌しながら不平不満をあっけらかんと…正直苦手だった


歳を経て少しずつましになって来ているとは思いもしたが一度付いた苦手意識は簡単には消えないものだ


クレイさんを取り戻すと聞いたときも族長としての自覚を内心では疑ったし何故私が!とメーベ様の命令に不服も有った


しかし短い時間で有ったにも関わらず他種族と共に過ごし、この旅を経て成長する姫様を見て私と同じであったのではないかと感じるようになった


抗いもせず与えられた役目それが生きる意味だと信じているのは楽だったのに


姫様も同じ気持ちだったのではないか?逃れられぬ受け入れるしか無いと諦めていたからでた我儘や軽口、初めて一人の人格として姫様、いやクリシュナという一人のエルフの気持ちを考えたのだ


だが今のこの状況で彼女は長であることから逃げなかった


森の民を連れて逃げよと言った


まさかこんな形で長たる片鱗を見せられるとは思ってもいなかった


最も彼女は欲張りでどちらも諦めるつもりは無いらしい、族長でありながら自分の道を貫くつもりなのだ


我儘な彼女らしい…そしてその姿が羨ましくて眩しい


この人に続こう、本当の意味での自分の役目が判るような気がした、くすぶっていた嫌悪感も役目に対する迷いも消えた


ヒュッ


ダークエルフの胸を矢が迷いなく貫いた


「さあお行き、あなた達の父や母に伝えておくれ、私の族長の武勇を」

オークの子供たちに親元へ向かうように言って私は彼らの背を守るべく相棒のコンパウンドボウの弦を引いた



「父ちゃん」

「おっかちゃん」


「お前らどうやって出てきやがった!」

オークの子供たちの行く手をゴブリンたちが阻む

「さっさと戻りやが」

最後まで喋る前に丸太のような腕がゴブリンを薙ぎ払う、豪快にふっとばされたゴブリン達の音は雨季の雨音でもかき消すことは出来なかった


ピーーー ピーーーー


笛の音が響きゴブリン達が弓を携え何処からともなく湧いてくる


しかし家族を取り戻したオーク達は怯まない、並の弓では肌をも通さないその肌をゴブリン達のこぶりな弓が貫けるはずもなく、情け容赦無くその巨躯がゴブリン達を文字通り捻り潰していく


そのオークの巨体が閃光とともに吹っ飛んだ

「引くんじゃないよ闘いな」

ゴブリン達を叱咤する声が響く


「ライトニング」

続けざまに閃光が放たれる、攻防は一進一退、魔法を唱えるダークエルフの詠唱が止まる、コンパウンドボウの矢がダークエルフを貫いたからだ


「オーク達よエルフの族長クリシュナの言伝だ子供たちを連れて逃げよ!」

必至にオーク達に告げるミュレッタの肩に今度はダークエルフの弓が刺さる


「くっ」

こんな所で、こんな所で立ち止まるわけには行かぬのだ


言伝が聴こえただろうに交戦を止めないオーク達


人の頭ほどの岩をぶん投げエルフ…ダークエルフ達の住まう大樹にいくつもめり込ませる


聴こえたんなら逃げなさいよ!もうめちゃくちゃじゃない!


失念していた、オーク達は情に厚い、スワンザがそうであったように助けてくれた者たちを放って逃げるなどしないのだ


雨脚は一層強まりもう何が何の音だかわからない、痛む肩をおしてミュレッタは下層へと進むクリシュナ様との約束なのだ


影がよぎった


コンパウンドボウ構え肩で息をする


「撃つな俺だノウミだ」

止まっていた息を大きく吐き出す

「脅かさないで下さい、どうして戻ってきちゃったんですか作戦と違うじゃないですか」

ノウミさんが肩を貸してくれる、初めて触っちゃった

「あのな!雨音よりもデカくこんだけ暴れまわってりゃ聞きたくなくてもなにか有ったことくらい判る」

流石ノウミさんだ、格好いいなピンチで現れる映画のヒーローそのものじゃないキスしたい


でも今はやることが有る

「ノウミ…下層の部屋に連れて行ってやらなくちゃいけないことが有る」

呼び捨てしちゃった


「判っただが先にすることが有る」

先にすることってなんだろう?キスしてくれるのかと…思い違いも甚だしかった、やってきたのはキスではなく激痛、ノウミさんが肩に刺さった矢を折ったのだ


「~くぅ!そういう事は先に言って下さい!」

痛すぎるのと想像と違ったので二倍涙が出た


「悪いな抜くと出血が止まらなくなるからこうするしか無かった」

違う!ノウミさんのバカ!ぜんぜん違う私のドキドキ返せ


チュッ


へ?

「痛かったよな悪かった、ごめんな」


いまおでこ、おでこにチュウされた?

「行けるか?」

「はぁい」

抱き寄せられてしっかり密着して下層へと急ぐ、どうしよう違う意味で今私まともに立てないんですけど…


やっと下層まで降りられた


「死ねや!」

「お~ん!」

ド、ドス


飛びかかってきたゴブリン達が二匹まとめて壁に突き刺さる、スワンザの矢で串刺しにされたのだ

「大丈夫か?」

スワンザの問いに

「ゴブリンの目刺し」

ノウミさんが呟いた

知ってる大将さんのお店で出た魚のメニューだ、ノウミさんも驚かない辺りこの世界に馴染んだんだなぁなんて変なことを考えてしまった


ノウミさんに変わってスワンザが私をおぶる


残念ここまでかぁ


部屋の前にたどり着くと鍵を握るが力が入らない肩がすごい熱を持っているのが判るはっきりとしない意識のまま鍵で扉を開けた、その後に轟音が聴こえた気がした所で私の記憶が途絶えた

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