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攻めんといて!俺達は異世界にコンクリートで専守防衛国家を作りたい  作者: くろすおーばー
一章  コンクリートの町とエルフ
22/166

22:潜入

夜になっても雨の勢いは衰えず遠くからは雷鳴が近づいていた、木々の上方に有るエルフの里、地面にはオーク、木々の間に有る通路にはゴブリン達、現在の主であるはずのダークエルフ達の姿は少ない


力に勝るオーク達が何故ゴブリン達に従っているのだろうか?


私達が逃げ出したときから直していない橋や通路、里の所々は焼け落ちたままになって居て怒りが湧いてくるのを抑える


「ちょっと待ってろ」

ドワーフのヤノットがスワンザを伴い森の方に歩いていった


クレイさんが此処に居るのかという疑問が解決していない、ナイトビジョンを使っても確認はできなかった、数でも負けゴブリンやオークまで居る、正面突破は諦め里を知っている私とミュレッタで潜入に決まった


この位置からなら川を渡ったときの様にスワンザの矢で里に移ることが出来る


ヤノットが適した木を見繕い滑車を作っている勾配を使って素早くロープで移動するためだ、大した道具もないのに流石はドワーフといったところ


「耐えられるのはあんたとミュレッタ、ギリでノウミまでだな」

ドワーフは小柄だが筋骨隆々慎重に見合わず重いのだ

「運動神経ではエルフに負ける、俺は待っていた方がいいだろう」

武器は強力でもバレれば袋叩き、当初の計画通り私とミュレッタで行く


閉じ込めておくなら場所は限られる、少なくとも上層階ではないが地面と接する下層でもない倉庫の有る中層階


厄介なのはダークエルフ達に見つかった場合だ、念話を使えば彼らに聞こえてしまう為使えない、そして私達と同じ様に念話が使える彼らに見つかった場合は…かつては家族のように育った者たちであろうと見つかり次第迷う暇もなく殺すしか無い、


覚悟を決めろ


ノウミさんが時計を見ながら稲光と雷鳴の時間を確認する


スワンザが弦を引き射撃体勢に入る


「5.4.3…今」

矢はスワンザの手を離れ木に刺さるタイミングで雷鳴が轟いた

ナイトビジョンで周囲を確認するが気づかれた様子はない


ロープに滑車を掛けて呼吸を整える

ロープを支えるスワンザと目が合った

「気を付けて」

「ありがとう、後は合流地点で…もし私達が」

「待ってる、必ず待ってるから」


有無を言わせぬ低い声、心のなかでもう一度ありがとうと呟いて私は滑車を滑らせた



時間を短縮する為に二手に分かれ倉庫を確認する


所々焼け落ちた通路をコンパウンドボウに手をかけたまま進み立ち止まる、ゴブリン達がいる、耳をそばだてて会話を聞くが都合よくクレイさんの居る場所を話したりはしてくれない…が


「結局ここにはなかったんだろ」

「ドワーフの里に忍び込んだ奴らが…」

里に忍び込んだ?雷鳴が轟く肝心な部分が聴こえなかった


すぐにでも聞き出したい…


だめ、優先する順位を間違えちゃいけない


彼らが動かないところを見るとここには何かがある


背後からの気配にゆっくりと矢を構える

「姫様…私です」

小さな声ミュレッタだ、ふぅ~と息を吐く

「向こうは空でした」

そうなるとやはりゴブリン達の居る倉庫が怪しい

「私は右を、あなたは左をお願い」

コクリと頷くミュレッタ


ヒュッ


タイミングぴったりに放たれ私の矢はゴブリンの胸を、ミュレッタの矢は頭を撃ち抜き木の壁に縫い付けた、流石の腕前メーベが推薦してくるわけだ


「あ」

ミュレッタがそう漏らす、私の殺したゴブリンは矢が通り抜けもんどり打って倒れ込む


まずい、そう思った時にはもう私は木々の間を跳躍し間一髪で下へ落ちるゴブリンに手を掛けていた、危なかった


引き上げたゴブリンを木に突き刺さった矢に突き刺す、視界の悪い今ならば二匹のゴブリンは立っているように見えるだろう


薄明かりが外へ漏れる倉庫、ピッタリと木の壁に体をつけて中の様子をうかがうが物音は聴こえない、「ここにも居ないのでしょうか?だとすれば…」


「しっ!なにか聴こえたわ」

私は耳を澄ます、うめき声だ焦る気持ちを抑えミュレッタに合図を送る


私が慎重にドアを開けミュレッタは矢を向けたまま中を見る

「姫様…」

ミュレッタの複雑そうな表情からは真意が読み取れない、中を覗き込むと倒れているのはオークの子供達だった…


オーク達が従っている理由はこれか、薬を嗅がされているのか命に別状はなさそうだがどの子供も動かない


「静かにして頂戴ね」

そう言ってから痺れを解く魔法をかけていく、どの子も静かにしてくれているが私の顔を見ると恐怖に顔が歪む…誰の仕業か見当がついた、ユフィ…あの子は本当に私達の敵だと悟る、ミュレッタに頼んでクレイさんと彼らの事情を子供たちに聞いてもらう


クレイさんは見ていないという、そして助けてと懇願してくる子供たち



状況が変わってしまった、事態は大きくなっている私達エルフとダークエルフだけの問題ではない、オークのリーダーオルドアの言葉を思い出す


森全体を包んだもっと大きななにかが起こっている予感は確信に変わる、ここは一度引いて子供たちを助けなければ…苦々しい思いで決断仕掛けたその時


『こいつはバナジア様の元へ連れて行く、誰か来て頂戴』


念話だ!この声はユフィ、消えかかった気持ちに炎が灯る、位置は最上階


「ミュレッタこの子達を連れて地上に出て頂戴、オーク達は事情が解ればダークエルフ達には与しないはずよ」


「しかし姫様はどうされるのです?」


「クレイさんを助けます」

「無茶です!それに姫様を置いて行くことなど私には出来ません」


ミュレッタの声が大きくなってしまう


「声を抑えなさい、これは族長の娘…いえ族長として命じます、この子達を連れて一人でも多くのオークを逃がしなさい、そしてドワーフの里にゴブリンが忍び込んでいることを伝えるのです」


「帰れるの?」

私達のやり取りを聞いたオークの子供からは涙混じりの声が聴こえてくる


「そしてもう一つ…」


私はミュレッタに鍵を渡したのだった

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