21:クレイという男(クレイ視点)
さてどうしたものか
此処に連れてこられて丸一日、こうして檻というか牢屋に閉じ込められているわけですが
殺す気ならここまで連れてこんだろうし何かを聞き出したいんだろうが喋れるようなことなんてないし
会社の皆心配してんだろうな
クリシュナさん、もう忘れてるよな…
こうなっちまった事を考えれば、勢いとは言え断ってしまって良かったのかもしれない
それにしてもなにも車落っことすことねぇじゃねえか車は複製できねぇんだぞ、まあ複製されてもそれはそれで丘を車が出るたびに延々と増殖されても困るんだけどさ
あぁもう!話があるなら早くしてくんねえかな誤解なら誤解で早く解いて帰んねぇと、こんなとき映画なら…
「釈放だ、出ろ」
「出ろ、お前に聞きたいことが有る」
「お前が異世界の民か」
「いいザマだな」
映画やアニメにありがちなセリフを考えて時間を潰そうとするのだが
クレイさん好きです
ああ、やっぱりなんで断っちまったんだろう俺、一度断ってしまった所為でやっぱりお願いしますとはかっこ悪くて言えずじまい
オーク達がやって来るわ雨季が迫ってるわで時間が取れなかった…いや、言い訳だな、何度でも返事する機会は有った…ヘタレめ
酔っていたのになんで好きだって言ってもらえた時に限って思い出すかね、それこそ勢いだろ
高校の時に勢いに負けてなし崩しに付き合ってその日の内に…
その後の猛烈なラブラブビームにたえきれず破局
それからは彼女も作らず…いや出会いすら無く仕事一筋やっと訪れたチャンスで思い出すなよ俺
可愛かったなぁそれにクリシュナさんをおんぶしたときの…
そう…クレイはひた隠しにしているが『むっつり』なのである
格好つけているがただの口下手、そして普段の行動のせいで素の自分が出せないだけのヘタレなのである!
ガチャ…ガシャン
「出ろ、お前に聞きたいことが有る」
二番目か、てか本当に映画みたいなこと言うんだな
似ている…そう思った
俺に質問するエルフを見てそう思った
手枷に足枷、逃げられそうにはない
「あの壁は何だ」
何って言われても
「コンクリートですが」
彼女も本来ならこんな口調なんだろうか
「コンクリートとはなんだ!岩はあの様な形にならぬどうやって作った、お前らの魔法か」
詳細に答えてもいいけど彼女が聞きたいことはそうじゃないんだろうな、どうやって答えたものかと考えている間に拳が飛んできた
女の子の拳とは言え綺麗に顎に入った、答えられねぇーー考える時間ぐらいくれーーー
某ベトナム帰還兵や蠍のスペツナズの拷問が頭をよぎる耐えろ主人公なら耐えられる
部下のゴブリンに棒で殴られた
無理ーーー俺普通の一般人ーーー!
「ま、魔法じゃない、コンクリートはセメントと」
眼の前に星が飛ぶ、また殴られた、喋ってんだから止めろや!色黒にしたクリシュナさん黙って見てねぇで止めろや
「似てるのは…外見だけかよ…」
ピクリとクリシュナさんそっくりの女が反応する
「姉上…いやあの女とはどんな関係だ言え」
どんな関係ってお姉さん振りましたとか言えねぇ
「その感じ、恋仲か!里を奪われたというのに男に気を許すなどつくづく見果てた女よ!これでは里も死んでいった白エルフ共も報われまい」
高笑いする色黒そっくりさん
「偉そうに…」
あ~、俺何言っちゃってんだろうなぁ~また殴られんだろうに
「てめぇ何様だよ、どうせ一人でなにか出来た気になってるだけの甘ちゃんが」
おもっきし睨まれた、おっかねぇ
「貴様に何が判る!」
あ~このセリフも映画でよく聞くやつだ昔は判るって答えるか黙って、最近だと判るわけねぇだろって答えるのがセオリーなやつだ、どっちにしても今の俺なら殴られるしか無い実質選択肢なしのやつ
「知らんがな」
バキィ
はいきたぁ!きつい一撃きたぁ、いい加減気絶したいぃぃ
「もういい、ドワーフの里に隠された社と呼ばれるものが有るだろう場所を言え」
そういう事は最初に言えよ…殴られ損だろうが、社…あれか…そんなにもったいぶって聞かれちゃあ言うわけにはいかねぇなぁ、これがきっと俺の生命線だ
聞き出してるつもりで情報ありがとう詰めが甘いな
好き勝手殴りやがって…情報聞き出す気あんのかそう思った所でやっと意識が飛んでくれたクレイだった
「ここがエルフの里か」
小声でノウミさんが呟いた
勝手知ったるエルフの里、ここは見張り台からも見えない私のお気に入りの場所、父様や里の者も知らない取って置きの場所、かつてクレイさんが教えてくれた場所のようなものだ
確かにそうだここに違いない、でも巡回するオークにゴブリン、私の知っているエルフの里ではなくなっていた
私達はクレイさんが監禁されているであろう場所に目星をつけ救出計画を練るのだった