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攻めんといて!俺達は異世界にコンクリートで専守防衛国家を作りたい  作者: くろすおーばー
一章  コンクリートの町とエルフ
17/166

17:雨季と恋煩い(エルフ、エルフに嫉妬する)

雨季に入った


降り止まない雨、コンクリートの城壁にある見張り台からも雨と霧でまともに見張りが出来る状態ではなくなった


森の中で聞く雨の音とは違うコンクリートやアスファルトを打ち付ける雨音は嫌が応でも私達の生活が変わったことを感じさせる


今のところ彼らの考え出した排水に対する備えは上手く行っている、気がかりは川に接続寸前で中断となった排水路、水門を取り付ける寸前まで行っていた川の増水による被害を防げるはずだったがこの雨ではどうすることも出来ない


それともう一つゴブリン達の襲撃についてオークが気にしている


雨季で視界が遮られた今が彼らの動く時期かもしれないと、散々やられただけに彼らの懸念も最もだ


塩ビと呼ばれる素材で作られた雨樋からは勢いよく雨水が流れている


クレイさんが心配だ、彼は川の増水を確認するために定期的に一日に何度も見に行く仕事についている


川を監視するカメラを取り付けていても死角になっている場所は目視で確認しなくちゃいけない、誰かがやらなければいけないと解っていても割り切れない


里にいた頃は雨季などあっという間だと思っていたのに今はとても長く感じてしまう


「姫様、浮かない顔ですね雨季はまだ始まったばかりです。今からそんなでは困ります」

メーベや仕事が休みの娘達は特に気にしていないといった感じで休園になった仔たぬき達と一緒にお茶を飲みながら映画を観ている


私達と似たような世界、なんとこの映画にはエルフがでてくる別世界のはずなのに不思議だ、クレイさん達の世界にはエルフはいないと言っていたのにである、それにちょっと…なんというか美形すぎじゃないかしら、その…私より大きいし…こんな美形のエルフを観ていたのなら現実のエルフにショックを受けているんじゃ…


「雨やまないねぇ」

外で遊びたいのだろう仔たぬき達もつまらなそう


雨のせいか気も沈む


映画の中のエルフが人族の人間とその…

「雨のせいか湿気てますね」

せんべいを頬張りながら平気で観ているメーベ達、一人恥ずかしくなっている私が馬鹿みたいじゃない!


映画の中の二人にも無神経なメーベ達にも腹が立ってきた


メーベがこちらに振り返り、じっとりとした目つきで

「はっきりしないとこの二人の様になれませんよ」


「なっなっなっ!!!何を言ってるんですか!私には里の復興という使命があるんですよ!」

「別に番になったからと言って里が復興できないわけではありませんが」


ぐぅっ


「確かにそれは…そうだけどぉ…」

なんだか今日のメーベは追求がするどい


はぁ、と一息ため息を付くとメーベがとんでもないことを言い放った


「そろそろ、返事を聞いてみてもいいのではないでしょうか」


「へ?」

間の抜けた声が出た


「返事って…」


はぁぁぁ~、更に深いため息をつくメーベ


「まさか覚えてないとは…」

「返事ってどういう事!」

メーベの肩を掴んでブンブン揺する


「んぐっ!ひ、ひめひゃまおひふいお!のど、のどが詰みゃる」

「姫様落ち着いて下さい」

ツァーミに止められて我に返る、仔たぬき達は面白いのかけたけたと笑っている、笑い事じゃない!


「いつ!いつなの言いなさい」

げへごほと咳込んだメーベが解りましたから待ってというように手で制す


ふぅ~、やっと落ち着いたメーベ

「そんなのあの時しか無いでしょう、デートの帰り道おんぶされて帰ってきて大声でクレイさん大好きの連呼近所迷惑、この辺で知らない人はいませんよ」

すごい勢いで頭に血が集まっていく


「しかも」

「しかも?」

これ以上有るのもう止めて


「きっと一度振られてますね」

すごい勢いで血の気が引いていく


「私諦めませんから!って言ってましたから」

血の気が引きすぎて私死ぬんじゃなかろうか


「じゃあ駄目じゃない!!」

襟を掴んでメーベをブンブン

「じぬ…びめざま、ギブ…ギブ」

「ストーップ!姫様ストーップ!」

デリアが私とメーベの間に腕と足を割り込ませ、ツァーミが私を羽交い締めにする


「あの時はお互い酔ってましたしクレイさんも見た感じ満更でもなさそうだったので、何か付き合えない事情が有るだけで解決さえ出来ればと思ったんですよ」

ダウンしたメーベの代わりに羽交い締めにしているツァーミが教えてくれた


「事情?」


「例えば向こうの世界に彼女が居るとか」

じわっと涙が溢れてきた

「例えばです!例えば!聞いてみればいいじゃないですか」


「聞く?どうやって?」

「いや普通に聞けばいいじゃないですか彼女が居るからですか?って」


しらふで断られたら終わり立ち直れる自信がない…


「怖いのは解りますけど、聞かないといずれ誰かに取られちゃいますよ、ちなみに私は今品管主任さんと付き合ってます」


「詳しく話しなさい」

最初、彼女は若い現場の子に恋してたはず、それがどうして品管主任さんと付き合う様になったのだ


「私、振られたんです、告白と同時に…それで事務所で隠れて泣いていたら品管主任さんが何も言わずにお菓子を置いていってくれてそれからちょっとずつ話すようになって」


お菓子?そんな物で


「そんなものですよ切っ掛けなんて」

口に出ていたみたい


「私も振られた時はショックでした、でも行動したから今が有るんです」

ガシッと肩を捕まえられてツァーミが力説してくる


「振られたとしてもそれで前に進めるんです」

振られること前提…でも一度振られてるのか、そうかもう振られてるんだから結果は同じ、ひっくり返ったら良かった位に思えばいいのかもしれない…というかそう思わないと辛い


「今は雨季で大変ですし、メーベ様はああ言いましたが、雨が上がり次第聞いてみてもいいんじゃないでしょうか?」


一度失恋を経験したツァーミの言葉はなんだか説得力が有るような気がした

「うん、わかったわ、私ちゃんとクレイさんに返事を貰う」


「番ってなあに?」

仔たぬき達に教えようとするメーベの頭をひっぱたくまだ早い


雨は一層激しくなるが気持ちは少し晴れた、というか決心がついたと言えばいいのかもしれないやるぞ!と意気込む私に


「クレイ…が車ごと川…落ち…」

ノイズ混じりに非情な通信が入ってきたのだった

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