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143:商人の意地と好奇心

「一体何なのよ!」


サンダン王国の商品の仕入先を調べに来た私達オベルダンの商人は信じられないくらい大きな声で呼びかけられたと思ったら弓で狙われた


ここまでは声の大きさを除けば予想できていた、こっちは不審者なのだから仕方がない、だけど現れたのエピール族でもリザード族でもない、人と呼ばれる伝説や神話上でしか聞いたことのない種族


しかも何かが破裂する音と共にその『人』が突然倒れた


私達は何もしてないし魔法も何も見えなかった


理解が出来なくて呆然として固まっている私達に怒声のような大音量の声


『森に戻れ!早く!』


を聞いてやっとそれが攻撃に依るものだと気がつけた


慌てて戻ったけれど不可視の攻撃なんてどうすればいいのよ!


倒れた『人』をこっそりと覗けば今度はオークが出てきて『人』を投げ飛ばした、この国はどの種族が治めているの?目に映る状況のせいで益々まるで訳が分からないわ


オークの身体に何かが当たっているのか金属同士が当たっている様な音が何度も響く…着ている鎧の素材は何?あの巨体を覆っているのにまるでピッタリ貼り付いているように滑らかにオークは動いてる…あんな鎧見たこともない


「スワンザ!ジグザグに走って門まで戻ってちょうだい」

今度は何なのよ!これは何語?私の知らない言葉…あれ?この言葉って…


オークが走り出した、叫んでいたのは私達に向かってでは無かったのね


炸裂音と金属音の中を走り抜けるオークは門の中へと姿を消した



これで狙われるのは私達だけ…


ちょっと待ちなさいよ!商売で下手打って死ぬのはまだ許せる


でもこれは嫌だ!


なにが起きているのかなにが理由なのかも判らないまま死ぬなんて絶対に嫌よ!それにあのオークの鎧にこの攻撃に使われている武器、ここを生き残れば大きなチャンスが待っているに違いない


どうやって生き延びるか考えていると私の隠れている木に矢が刺さる


ひぃっ!


悲鳴を上げてしまったけど矢を見れば文が付いていて文を読む


「やっぱりこれも紙ね…こんな無造作に紙を使えるなんて益々中に入ってみたくなるじゃないの」

文には私達を護ってくれるということと中に入るまでの算段が書かれていた


どうせこのままだと不可視の攻撃で殺されてしまうだろう、ならばいっそこの文の通りにしてみる方が生き残る可能性も商機の可能性も上がる、そしてなにより私達を餌にこの騒動を起こしている元凶の思い通りにさせたくない!私達はこの賭けに乗ることにした



======

視界を遮る煙の中を彼らの指示と打ち込まれたロープに沿って進み無事に城壁の中にたどり着く


中には先程攻撃された『人』が生きていた、派手に倒れたけどぱっと見怪我をしているようには見えない、彼は手に持ったなにかで指示を出している


『メーベはしばらく辺りを監視して、相手も銃を持っているのなら兵士たちにも下手に調べに行かせないで』


『了解です』


あれってエルフの念話みたいな道具かな、それに使っている言葉は…


「大丈夫ですか?」

「兄さん日本語で喋っても通じないでしょ」


「そうだった、エピール語なら通じるかな?」


「あの…日本語って?もしかして賢狼族語のことですか?」

人もオークもぎょっとした顔でこっちを見ている、感じからして私の賢狼族の言葉は通じているみたい


「この言葉判るの?」

人はよっぽど嬉しいのか私の手を握りながら聞いてくる


「全部じゃないですけど賢狼族に知り合いがいて、彼女からその言葉を教えてもらったんです」

「じゃあオベルダンの人たち全員が使えるってわけじゃ…」


「はい、多分私だけかと…」

「そっか、でも一人だけだったとしても同じ言葉が喋れる人がいて嬉しいよ!俺はクレイ、君の名前も教えてもらえないだろうか」


普段からなのか言葉が喋れるからかそれとも『人』はみんなそうなのか?ぐいぐい来るわね


「私の名前はウィミー、こっちはガープス、パートナーです」

「パートナー?それは…」


「商人のです」


即訂正…けどなんだろう変な事は言ってないのにガープスさんがなんともいえない顔してる


「そう言えばうちの国にも賢狼族が居て彼女も僕らの言葉を使えたんです、もしかしたら同じ人かもしれませんね、落ち着いたらお会いしてみますか?」


「もしかしてその方はウルーダと言いませんか?」

「ええ、そうですけど良く解りましたね」


「以前は冬の季節には私達の国オベルダンにいらっしゃってたんですが最近は冬の季節になっても来られなくなっていて心配していたんです、だからもしかしてと」


「なるほど、彼女なら…今は駐屯地にいますね」

「駐屯地?ですか、それは」


「ああごめんなさい、駐屯地っていうのはえっと兵士の居る施設とでも言いましょうか」


「彼女が兵士ですか…そのなんというか自由な方なのでちょっと想像できません…」


「まあこれには個人的な事情が有りまして…今では本人も乗り気みたいですから詳細は御本人にお会いした時にでも聞いてみて貰えればと思います、それにしても日本語本当にお上手ですね」

お世辞かなとも思ったけど顔を見ると嬉しそうなので純粋に同じ言語を使う種族に喜んでいるみたい


「日本語…というのですね賢狼族の中では暗号の様に使っていると聞いていたのですが」


「こちらでは公用語というか普段からこの言葉です、ウルーダさんと初めて会った時もこの言葉を使えたので驚いたんですよ…まあそれどころじゃなかったんですけどね」


何が有ったんだろう…


「話は変わりますが先程の攻撃に関して何か知っていることは有りませんか?」

口調が少し冷たいものに変わる、それでもさっきのやり取りのお陰で彼らに対する印象は良いままだ


「正直に言って、何かしらのトラブルは起きるかと想定してましたがそれは初めての商売相手とのトラブルと言う意味であって、あんな事が起きるとは思ってもいませんでした」


「では、やはり無関係だと?」


「はい、私達を知っている誰かに出しに使われたのかもしれませんが私達自身は商人として新しい販路を開拓しようとしていただけです…それがクレイさんの身を危険にさらしてしまったことに関しては申し訳ないと思っていますが」


「解りました、サンダン王国の商人たちも貴方がたを知っていると言っていましたし僕としても商人がそんな事をしても信頼を落とすだけでやらないだろうとは思っていますが、念の為なので気分を害されたのなら申し訳ない、謝罪致します」


「そ、そんな謝罪なんて必要ありません!」

あまりにも簡単に謝罪してこようとしてくる姿に驚いた、下手に謝罪させてしまったら後々問題になるかもしれない、謝罪は拒否させてもらった


『人』って伝説や神話に出てくるから勝手に神様みたいに思っていたけど実物は全然そんな事無くてとても柔和だ


「それでは今後の事についてですがここではなんですから…何処にしよう」


「安全面なら銀行がいいんじゃないかな、それかまだ建造中だけどホテル」

「スワンザ、ナイスアイデア!それだ背角の来日…じゃなかった来コンに持って来いの場所だ」


ホテル?見た感じここは堅牢な城壁とは裏腹にそこまで発展している場所には見えないのにホテルが有るの?サンダン王国もオベルダン王国でもホテルと言われる高級な宿は一つか二つしか無いのに


それに人族のクレイさんはこのスワンザというオークと仲が良い様だけど、周りの商人のエピール族も畏まり過ぎたりしてない…この国の身分がどうなっているのか全くわからないわ


私達の常識は通用し無さそう…でもそれはチャンスだとも言えるわよね


私は自分にそう言い聞かせると湧き上がる好奇心を抑えることが出来そうになかった

ブクマや評価をしていただけると作者が大変喜びます!続きを書く活力になりますので


『ページの下にある☆マークでの評価』


よろしくお願いします!

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