138:私だけの勇者様
「パパ、もう時間だよ」
「そうかそうか、じゃあ次はロルフの番だったな」
私たち夫婦にとっての勇者パーティー仔たぬきズに混じって国王様もシェリティナの面倒を見ている
「今のところ何もすることがないからな、何度でも呼んでくれて構わんぞ」
心強い援軍の国王様だけど
「あざとい、工場ちょ…国王『じいじ』ポジ狙ってますよね?」
「それがなにか?」
堂々と肯定する国王様
「…そういうの良くないでしょう、他の国民に示しがつかないじゃないですか」
「それを言ったら国王の子供達育児を手伝わせているのはいいのか?」
血は繋がってないけど王都民の誰もが公認の仔たぬきズの父親=国王様
うわ~、これクレイさん否定できないやつだ、これ否定しちゃうと私を含めたエルフママも否定しなくちゃいけなくなるもの
それと距離が近すぎて今まで考えたこと無かったけど、この子達って王子様、王女様ってことになるんだ…
「卑怯ですよ国王…」
「それに勘違いしないで欲しいが私は種族に限らず、王都の民に子が生まれれば必ず手伝いに行って、みんなのじいじで通っているし落ち着けばエピリズの村でもしたいところだよ」
「なんてはた迷惑な…国家権力の無駄遣いすぎる…」
「そうかね?現に今も役に立っていると思うが」
絶対にじいじポジションを諦めるつもりは無いみたいね
「クレイさんこれ以上揉めても勝てないと思いますよ、なにより私達助けてもらってる立場だし」
それを聞いてがっくりと肩を落とすクレイさん
びゃぁぁ
「ママおっぱいみたい」
「はいはい、教えてくれてありがとうねロルフ王子」
「おうじ?」
「ええ、国王様の子供のあなた達はみんな王子と王女様だもの」
「じゃあ僕らの妹のシェリティナも姫様だから王女様?」
「う~んそれはちょっと違うかなぁ~」
子供って本当に頭が柔軟ね、シェリティナにお乳をあげる為に二階に向かう
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コンコン
「は~い」
「俺だけど、ちょっといい?」
「どうぞ」
嬉しそうに私の胸…じゃなかったシェリティナを見るクレイさん
「こんなタイミングで悪いかなとも思ったんだけどやっぱり聞いておきたいことが有ってさ」
申し訳無さそうであまり楽しい話題じゃないみたいですね…
「それならシェリティナの食事が終わってからにしましょう、出産の時に思い出したんですけど私自分が産まれた時の記憶覚えてるんです、だからシェリティナもきっと覚えちゃいますから」
「すごっ!でもそれなら確かにその方が良いかな」
本当に良くない話題みたい、私達はシェリティナがベビーベッドで眠るのを待ってから話し始めた
「寝てる間も聞いてて覚えてるなんてことは」
「ふふふ、流石にそれはないですよ」
「それで話というのは?」
「うん、エルフの里とチハを見つけた洞窟で見つかった宝玉有るじゃない、あの宝玉から流れてきた記憶なんだけど」
「クレイさんたちと同じ日本から来た人たちの記憶ですね?」
「そう、それなんだけどさアレってシュナが産まれるよりもだいぶ昔の話だよね」
「教えてもらった内容からするとそうだと思います」
そうクレイさんたちが見た映像の中には私は居なかったと言うし他に見覚えのあるエルフも居ないって言ってたからそうだと思ったのだ
「僕はてっきりその映像に在る人とエルフの子孫がシュナの言う妹さんのユフィだと思ってたけど合ってると思う?」
「多分違うんじゃないかと思います、里にはダークエルフは居なかったはずですし…エルフは男児が生まれると成人になるとともに里を出て、旅をしてパートナーが出来ると新たな里を作るから基本的に…」
待って?なにか変だ
「シュナ平気?その感じからしてシュナも変だと思った?」
「ええと、ちょっと待ってください頭の整理が…」
「あのクレイさん…私からも良いですか?」
「うん」
「私この子を産む時に昔の記憶を思い出したんです、思い出したんですけどそれがなんか可怪しくて…」
「…どんなふうにか話せる?無理はしないでいいからね」
私には姉と呼んだ存在が記憶の中には居て、きっとそれは母の姉妹で…でもしっかりと思い出そうとすると顔と名前に靄が掛かったみたいになること、そしてユフィはその姉の子で、だから姉のパートナーは異世界の人だったはずなのに見た記憶もなくて…クレイさんにそう伝えた
「ごめんなさい、ちょっと混乱してるかも」
「大丈夫俺も解んないことだらけだから」
「この話って何に繋がるんです…その怖い事を想像しちゃったから…」
私達長命のエルフは長い年月を掛けて増えていったんだと思っていた
でも気がついてしまえば違和感しか無い
里に男性はお父様だけしか居なかった…なのにいつどうやってエルフは増えていったの?他の種族に比べて生命としてあまりにも歪、そして不可解な記憶…怖い
「何に繋がるって、それは勿論俺達の幸せ」
どんな怖い答えが返ってくるのかと想像していた私は頭を叩かれた様な衝撃を受けた
「幸せ?」
「それ以外無いでしょ、俺はユフィの存在を徹底的に調べて俺達の幸せの邪魔させない、それ以外になにかあるの?」
あっけらかんと言い放ったクレイさん
「私はてっきり…」
「てっきり?なに?」
何いってんの?って顔をされた!
「エルフは得体のしれない種族だから…」
「人間の方がこの世界では得体が知れない種族だと思うけど」
「もしかしたら記憶だってなにかに操られて…ここに」
「操ってるそいつに嫁さんに逢わせてくれてありがとうって感謝しないといけないね」
「操られて裏切るかも知れませんよ!」
「そん時は相手が魔王だろうがなんだろうがぶっ倒して取り返さないと、俺シュナ専属の勇者だから!」
私がなにか言う度にどんどん答えが恥ずかしくなっていく、耳が熱い
「あーー!もうなんでそんな恥ずかしいことばっかり言うんですかぁ!」
「俺を信じて欲しいから」
「辛くてシュナが自分自身を信じられなくなったとしても、俺を信じて…絶対になんとかするから!シュナ愛してる!」
ボッと顔に火がついたんじゃないかってくらい熱い、なんでこの人はいつも…
「わ、私も愛し」
「わ、ごめんね」
ん!?何を言ってるの?
「起こしちゃったねぇ~パパ静かにしゅるねぇ~」
振り返るとぱっちりとお目々を開けてこっちを見ているシェリティナと目が合った
うひゃうぅ~
手足をばたつかせて笑う我が子、きっとこの子も私のように今の出来事を覚えて事あるごとに
「あのね~パパが愛してる~、ママはね~お顔真っ赤で~」
なんて冷やかすの…お願い忘れてちょうだい!
そう思いながら我が子が眠るまで二人であやし続けた
「やっと眠ってくれたね、うちの小さなお姫様は手強い…」
「パパ…」
「ん?なに?」
私は我が子の寝顔を覗き込んでいたクレイさんにキスをした
そして
「私もあなたを愛してます」
今度は照れること無く伝え返せた
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