130:異世界再認識
誤字脱字報告いつもありがとうございます
「この木の実ですか、私は見た事は無いですな」
お世話になる町長さん夫妻に聞いて見るとそんな答えが帰ってきた
夫妻だけじゃなく聞き込みの結果は高齢者になるほど木の実の存在を知らない
「そうですか、ありがとうございます」
「いえいえお役に立てず申し訳ない」
貸していただいた部屋で情報を整理する
木の実は見つけられた
木は見つからない
子供達は木の実の存在を知っているが歳が高くなるほど存在の認識があやふや高齢の町長に至っては知らない
最近になって生えた?女将さんの年齢は判らないが四十かそこらだと、ここ二十~三十年で生えてきたと考えられるけど…
待てよ…俺はなにか思い違いをしてるんじゃないだろうか
世界的に有名な名探偵の言葉を思い出す、なんだっけ
「どんなにバカバカしく思えても可能性を一つ一つ潰していって残ったものが事実」
だっけか?たしかそんな感じの言葉だった気がする
そうなると
二十年~三十年前初めてあの木の実は現れたが木は誰も確認していない
木の実だと言うのに種子がない
そしてシュナの言っていた『植物は魔力を有さない』という言葉から導き出される答えは
「植物じゃないんだ…」
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樹木の上
ノウミさんから借りたナイトスコープを掛けて息を潜めて闇夜を監視する
今のところ動きはないが
出来ることなら凶暴な相手じゃなければいいんだけど、相手の姿も何もわからない以上警戒し続けるしか無いがこれが想像以上に難しい
鳥なのかそれとも枯れた枝が落ちた音なのか、何もかもが得体のしれない探している生き物の足音じゃないのかと感じてしまう
ホラー映画なんかだと鳥や動物の鳴き声が聞こえなくて不気味みたいなシーンがよくあるが実際に動物が居なかったとしても落ち葉が落ちるだけでも実際には音はそれなりにある
風も吹いてりゃ動物も居る普通の環境で何かを探して耳をすましているのならば尚更だ
それにさっきからその風が寒いこと寒いこと、当然落ち葉と枝の折れる音、それが地面に落ちた音
そして…揺れる
もう全然捜索になってない、これは打ち切って明日に仕切り直したほうが良さそうだそう思って木を降りようとしたその時だった
ヴェァァァァ
ヤギか羊のようにも聞こえるし野太いおっさんみたいな気もする声か鳴き声か判断のつけ辛い音が聞こえてくる
音の聞こえる方に目を向けると光る目、といっても実際に光ってるんじゃなくてナイトビジョンでそう見えるだけなんだが確認できた
何頭か居て鳴き声を除けば大人しく落ち葉を踏みしめる音が聞こえる程度、密集しているせいか容姿はよく判らないがあまり凶暴そうには見えない、大きさ的にはイノシシくらいだろうかモジャモジャしてる様に見えるから羊かもしれないな
何か餌でも探しているのか?ガサゴソしているが何をしているかまでは判らないな、とりあえず今日は様子を見るだけにしておこう目的の動物とも限らないし
一晩中観察してみたが暴れたりしている様子はなかったが捕獲するには結構な大きさのネットが必要そうだった、幸い港町だ漁網を借りる事にしよう
風が強かったからか匂いで感づかれることはなかったからそこまで警戒する能力は無いかもしれない、問題は相手の馬力だ、ネットで捕まえても引きちぎられたりこっちが引きずられても困るしな
彼らが去ったのを確認して部屋に戻って仮眠を取って朝になってから町長に漁網を貸してもらう様に約束、それと申し訳ないとも思ったが落とし穴を掘って置いて欲しいとお願いしてから再度眠った
起きてからはまだ陽が落ちる前の時間帯に森にも行ってみたがやっぱり実が落ちている、昨日の時点では実は回収して何もない筈の場所にだ
これでオリーブによく似た実は十中八九あの動物が関係している
もし関係がなかったとしても捕まえてみれば判る事、捕獲しない選択肢はないだろう
落とし穴も確認しておいた、深さ的に怪我をさせたくない事もあってそこまで深くはないが逆に逃げられないという確証もないが万難を排しておきたい、罠を信用して自分も含めて人は配置しない
罠を仕掛けた所には行かずに明日の朝結果を確認する事にした
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翌朝、港町の住人と一緒に罠の結果を見に行くと…
「はえ~、こりゃあおったまげた」
右に同じ、落とし穴とネットの二重の捕獲罠の中には折り重なるようにして羊のような動物?魔物?がおしくらまんじゅう状態で入っている
ヴェェァァ
ヴェェェ
羊と違うのは夜、体毛に見えた物はコブ…もっとはっきり言えばオリーブそっくりな実に覆われていた事だ
ちょっと、いや鳴き声も相まってだいぶキモい
だいぶ慣れてしまっていたけど、改めてここが異世界だったことを思い出させてくれてありがとう
頭数としては六頭、港町の方でも飼うかと聞いてみたがキモいからいいと断られてしまった
割と速く捕まえられたけど次来たトラックに彼らを運ぶ別のトラックをお願いしてそれから数日後じゃないと車は来ないだろう、こうなってしまえば考えるのはただ一つ、早く帰ってシュナに付き添わなければ
結局二日後にやって来たトラックに捕獲した六頭を乗せ愛する女房の元へと俺は帰れたのだった
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