129:オリーブの木?
腰が痛すぎてろくに動けませんが必死で書いてます
大自然とのミスマッチこの上ない舗装されたアスファルトの道を行く武装冷凍トラック
日本でも見かける光景のはずなんだけど異世界だと知っているからか、それとも他にアスファルトの道が存在しないからだろうか助手席から観える景色にそんな事を考えていた
「クレちゃんすっかり嫁さんの尻に敷かれちまったな」
「まっちゃんそれは言わないでおいてよ、ははは」
ばっちり見透かされてたな、なんで判ったんだろう
「それは置いといて、まっちゃん何処で荷台にこの樹の実が入ったか本当に判んない?」
「わかんねぇな、道路の周りの木は切られてるし二ポの港町に入ってからだとは思うんだけどよ、ガキンチョどもを乗せて町中をぐるぐるしてやったからな」
まっちゃんはドワーフの族長曰く特殊能力持ち、しかも自動翻訳というかなり使える能力で羨ましい
「くっくっふはは」
まっちゃんが運転しながら突然笑い始めた
「いきなり笑いだしてどうしたの?ちょっと怖いよ」
「いや樹の実で思い出したんだけどよ、お前の親父さんの事思い出してな」
「親父の?」
「ああ俺が並木通りで搬入待ちしてたらよ15tの荷台に親父さんがシート掛け始めてよ、くっくっくっ」
情景を思い出したのだろう更に笑うまっちゃん
「次に何したと思う?」
「親父がしそうなことか…う~んわからん」
「いきなり木に蹴り入れたんだよ、くっ」
「何してんだ親父…」
「そしたらよう、上からばばばばって銀杏が降ってきてよ」
あ~、まだ俺が子供だった頃に突然親父が大量の銀杏家に持ち帰ってきたことが有ったのを思い出した
「それでか、親父のせいで近所から臭い臭い言われて大変だったんすよあれ、しかもよくよく考えると何かしらの軽犯罪じゃないすか?」
「さあな、何十年も昔だったしゆるい時代だったから誰も文句言うやつは居なかったな、それも今…って言い方は変だけどよ、生理現象でも許されねえトラックに書かれた電話番号をスマホでパシャリ…その先のことはクレちゃんの方が詳しいだろ」
まっちゃんが言いたいことは判る、苦情の電話は全部俺が対応していたんだから
判るけどルールはルールだ、俺だって家の前でされりゃあ同じ反応する
「まっちゃんは昔の方が良かった?」
「どうだろうな個人的なことを言えばそりゃあ昔の方が給料良かったし現場も楽だったな…だけどよう世の中的には昔に戻りてぇとは思わねえかな、給料だけは昔に戻って欲しいけどな」
ガハハと笑い飛ばすまっちゃん
「こっちの世界は?」
「めちゃくちゃ好きだぞ、まあ向こうでは両親も鬼籍に入ってるし子供ももう成人してたしな…」
「こっちでは嫁さん探さないんですか?」
「俺が?この歳でか?」
「うちの親戚にもそういう人居ますよ、結婚って別に子供を作って育てなきゃいけないってもんでもないでしょ」
「そりゃあそうだけどよ…」
「気になる人居ないんですか?」
「居ることは居るんだが遠いしなぁ」
この時点で港町の人確定だろう、うちの人間が遠いと言う距離は現時点で港町以外ないからな
「港町に事務所置きましょうか?」
「一言で察するのやめぇや」
俺達は、しょうもない様なそうでもない様な事を駄弁りながら港町へと向かったのだった
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「ねえなぁ」
「それっぽい植物すらない」
「こうなると乗せたガキンチョどもが拾った樹の実が荷台に落とした線がつえぇんじゃねぇか?」
そうなのだ、まっちゃんが子供たちを乗せて通った道を確認してみたがオリーブの実はおろかそれっぽい木すら見つからないとなれば子供たちに聞き込みするしかないんだけど
「流石にどの子供を乗せたかまでは覚えてねえ…」
「ですよね~」
近所のいつも見ている子供でもないのだから覚えていたらその方がすごい
結局何も見つけられないまま俺も行ったことの有る食事処へ遅めの昼飯を取りに行く
「そう言えばこの店って名前無いんですか?」
「え~っと、そういや聞いたことねえ、姐さんただいま」
「いつもありがとうね~」
ふむ、この人がまっちゃんの想い人か(断定
「俺はいつもの、それと有れば金だすからつみれ汁」
「こんにちは、俺も同じの下さい、それとこないだはすいませんでした」
お役人にキレた大将が厨房を占拠してしまったことを改めて謝っておく
「別にいいわよ、こっちもいいもの見せてもらったし」
それは大将の腕前か、お役人がとっちめられている姿か…確認するのはやめておこう
「そうだ姐さん、この樹の実なんだか判る?」
俺が取り出した実をまっちゃんが受け取って女将さんに見せる
「何処だったか…見かけた事は有るはずなんだけど…」
見たことは有るのにわからないと言われてしまうとこっちも困ってしまう…
「こないだのガキンチョ達に聞くしか無さそうだな」
「そうですね」
ちょっと考えが甘かっただろうか?まさかここまで収穫がないとは思いもよらなかった
飯の後からは俺一人での捜索になる、まっちゃんは積み込み
「はいお待ち…子供たちで思い出したんだけどね、その実を見かけたのはこの店を出て真っすぐ行った森の中だった気がするよ、あそこは昔から子供たちが冒険だなんだ言って出入りしてる場所だからね、はっきりとじゃなくて悪いんだけどさ」
「いやそれだけで十分助かります」
「たしか結構奥に行ったときだと思うけど…なにせ私も見たのは子供の頃だった気がするからね」
「ありがとうございます」
そうなると結構昔から有るんだろう…でも出回ってないところを見ると数は少ないのか?
「ごちそうさまでした」
「あいよ、ところでさっきの木の実とは関係ないんだけどさ、あんた達のその『いただきます』と『ごちそうさま』ってのはどんな意味があるんだい」
そんな事でも気になるのが異国感があって面白く感じてしまう、シュナにも昔同じ事聞かれたっけ
俺は『いただきます』は命を頂くことへの感謝『ごちそうさま』は食事に携わった人々への感謝と答えた
「そう言われると気持ちのいい言葉さね」
まあ、割と形骸化というか当たり前になりすぎててそこまでちゃんと考えてない時もあるけど良い言葉だとは自分も思う
食事を終え店を出ると子供たちが待っていた、また乗せてもらおうと思っているのだろう丁度いい案内してもらおう
子供たちをお菓子で釣り森へと連れて行ってもらう、木の実を見せると
「たまに落ちてるけど、どの木か判んない」
正解まではたどり着けてないけど着実に近づいているのだ焦らないでいこう
ちなみに念の為ショットガンは持ってきてある、子供たちが行く場所だからと言っても油断は出来ない
「たぶんこの辺で拾ったと思う」
子供達の言葉を信じて探してみると確かに有った、有ったけど木の実だけ見上げた近くの木々にはオリーブらしき木も同じ実の付いた木も無いどういう事?
リスなんかの小動物が木の実を集めて集めた場所がわからなくなるとか聞いたことも有るが、地面に落ちているだけで集めてあるという感じでもないだよな
それなら鳥が落とした…というには木の実に傷も無い…
う~ん解らん、答えまでもう少しなのに解けないもどかしさ
結局この日は木の実を拾うだけ拾って終了、まっちゃんには帰ってもらい俺は町長さんの家に泊まらせてもらうことにしたのだった
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