125:楽をしたい気持ちが大切です
本日1話目
誤字脱字報告ありがとうございます。とても助かります
今年も秋の収穫の季節がやって来た
クレイさんが暇を見つけては世話をしていた田んぼも収穫の季節
バケツ栽培から始まったお米作り、なんでも種籾ひと粒から成る稲穂は百五十粒ほど
百五十倍とはなんとも凄い…今年はついに用意した田んぼ一畝を全部埋め尽くせた、来年からは他種族にも生産を手伝ってもらうつもりなのだとか
大将さんのお店や温泉などで白米の美味しさをよく知っているドワーフの族長、オークのオルドアさんからは快い返事を貰っている
特にオークのオルドアさんは腹に溜まってどんな料理にでも合うとお気に入りの穀物で麦よりも好きなのだそうな
来年のことはさておき今は皆で稲刈りの真っ最中、私は見学だけどね
水は抜かれているけど乾ききってないので足を取られて思うように稲刈りが進んでないし、子供達が鎌を持っているのも心配なんだけどクレイさんはあまり気にしてないみたい、たぶんクレイさんは同じくらいの年頃には鎌とか使わされてたんだろう…クレイさんのお父様どんな人だったんだろう?会ってみたかったな
「みんな~、怪我だけはしないようにね~」
「ママ~これ面倒くさいよ~」
確かに見てるだけで腰が痛くなりそう
「ママこれさ、魔法使っちゃ駄目なの?」
「上手く出来るのなら使ってもいいぞ」
代わりにクレイさんが答えた
「上手く?」
「ああそうだ、一遍に切ったりしたら全部バラバラになっちゃうだろ、そういうのじゃ駄目だ」
ちょっと考えてからルディが答える
「後で干しやすくってこと?」
「そうだ」
子供達は集まってあれこれと効率の良い刈り方を考え始めた
「いいんですか?」
「何が?」
「いや稲刈り体験をさせたいのかなと思ってたんですけど」
「別に良いんだよ無理して大変にしなくても、自分たちで考えて楽な方法を見つけ出すほうが勉強になる」
伝統的にこうなだけで別に自由に刈って良いみたい、どうしようかな風魔法なら
「ロルフもういい~?」
「いいぜ!カール」
あの子達何を、ん?二人がかりで何かやってる
これは風魔法だけどそのまま切ったらバラバラに、えっ!
風魔法で稲の根本をカットしているのにまとまったままパタパタと倒れていく稲穂、なにをどうやったの?
「へっへーん!ママこうすると楽だよ」
「俺が土魔法で根本を土で固めてカールが風魔法、これなら楽ちんなのだ!」
倒れた稲を見れば根本を包むように土で固められていてこの土ごと風魔法で切ったみたい
おお~、二人で別々の魔法のコンビネーション、よく思いついたわね
他の子達も二人組みを作って同じ様にやってあっという間に稲が刈り取られていく
「おお!凄いなそれ、これそのまま稲架掛け…出来るな、でも土が付いたままでも良いものなのだろうか…」
「この状態で紐で縛ってから土は叩いて払っちゃえば良いんじゃないですかね」
土魔法で固めたと言っても叩けば当然壊れる、縛った後にパッカンパッカン叩けば土は落ちていく
「それもそうか、かなり時間短縮出来たな」
「でも子供ってすごいですね、特にやり方とか知らないはずなのに…」
「遊びの時間減っちゃうから本気でやるんだよきっと、こっちもだいぶ楽できたから何かご褒美あげてやらなきゃな」
ご褒美という言葉にやったー!とぴょんぴょん跳ねる子供達、あぁ~田んぼの中でそれは…
案の定、表面しか乾いていない田んぼにズボッとハマってるし、まあいいか
「あの子達のご褒美は何にするんですか」
「う~ん、お前たち何が良い?」
「リサちゃん…大将さんのお店でお腹いっぱい食べたい!」
カールが元気いっぱいに希望を出してきた
「俺はそれでいいよ」
「そうだね、この刈り方考えたのカールだし」
「私達もそれで良い、ねっヒルデ」
「うんリサお姉ちゃんともお話したい」
そう言えばお店にはちょくちょく行くけど子供達と一緒には最近行けてない
「もう季節的にモツ鍋も始まっただろうし、大将の所に皆で行くか…でもその前にお風呂入ってからだな」
なんだかんだで泥んこまみれになっている子供達に忠告するクレイさん、田んぼは中途半端に乾いているから泥と埃が凄いのよね
「じゃあ、18時に工場の門に集合な俺はこれから予約入れてくるから遅れるんじゃないぞ」
男の子たちは本当に食事がメインなのかリサちゃんがメインなのか…喜びようからでは判断できない位盛り上がっている
大将さん、この子達がリサちゃんと話している時目だけが笑ってないのよねぇ~
うちも女の子だったらクレイさんも同じ様になるのかしら?
「シュナ?どしたの」
ぼ~っと考えていたらクレイさんが不思議そうにこっちを見てた
「なんでもないですよ~」
さて私もだいぶ埃被っちゃたしお風呂に入りますか
久しぶりの子供達とのディナーに私もうきうきするのだった
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