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攻めんといて!俺達は異世界にコンクリートで専守防衛国家を作りたい  作者: くろすおーばー
一章  コンクリートの町とエルフ
13/166

13:初デート

誤字脱字報告ありがとうございました

段々と漢字が読めるようになってきた私ことクリシュナですがこれは読めなかった、看板には灌漑・排水事業


一緒に歩くクレイさんが

「かんがい、はいすいじぎょう」

と教えてくれた


今日はデートというもの、そうデートなのである


恋愛映画で見て以来、ちょっと憧れていたのは事実だ


水を貯める為のため池を作ったりするのが灌漑、逆に水の流れをスムーズにして水害などから守るのが排水事業、どちらもコンクリートの力が発揮される事業だという


私達エルフがこの里に来る前の夏の雨季は大変だったそうで、去年の雨季の終わりからずっと続いている長期の事業、今年ももうすぐ雨季がやってくるが去年のようにはならないとクレイさんは自信をのぞかせている


「こんなので良かったんですか?」

こんなのとはいただけない、コンクリートを学ぶのはとても楽しいし私達のエルフの里の再建には是非利用したい素材なのだから


生コンと言われる固まる前の状態で現場で使われるコンクリートは一次製品といい、工場で企画に合わせて事前に作って現場で使われるものは二次製品と言うのだ


使われる分量がはっきりと分かり製品の質も安定している二次製品を主力に回したいが上手く行ってないのが現状、仕入れが無くいくらでも作れるので損は少ないが儲けも少ない


他の種族たちとの交流を深めて得意先を作りたいがまともな地図もなく他種族と出会えていない、道路の延長工事もそれが理由で進まない


目的地が有ってこその道路事業だそうな


道路は製品運搬のためには欠かせない、いかに馬力のあるトラックやトラクタヘッドでも荒れた道には不向き


道路は引きたいが取引ができるような種族や里がなければ無駄に道路を引き、後で結局道路を引き直すことになる


「この事業が一区切りついたら本格的に他種族の里などを探索するつもりです」

その言葉に一抹の不安がよぎる、私達やドワーフのように話が通じる相手ばかりではないし魔物や魔族も居る


オークたちは実りが豊かならばそこまで凶暴ではないが、少なければ同じ種族なのだろうかと思うほど気が荒くなる、ゴブリン達はずる賢く気性はもともと荒い、竜族は頭が良いが私達やドワーフを見下している、どの種族も一癖あってすんなり交渉が進むとはいい難い


「雨季は酷いものでしたが悪いことばかりでもありませんでした」

すれ違ったドワーフと手を触り合うクレイさん

雨季を一緒に乗り切ったことでドワーフとの信頼関係が出来たのだという


「雨降って地固まる、終わりよければそれで良しというか好きな日本のことわざです」

悪いことが有っても解決出来れば以前より良くなるという意味、漫画に描かれていてリサちゃんから教えてもらった


「いい言葉ですね、私も好きです」


「それともう一つ、備えあれば憂いなし」

クレイさんが指を指した先には土のうを作るドワーフ達、雨季に備えてのものだろう

「私達も作っておかなきゃですね」

「ですね」

楽しい、楽しいけどこれでいいのかしらもっとこうデートらしい言葉とか、映画で見た甘いムードのようなものが欠片もない


「この後は何処に行きたいですか?といってもデート映えするような所無いですけど…」

「そうですね~、じゃあ前に言っていた熱動力炉が見てみたいです」


「却下です、あそこは危ないし我が企業共同体の心臓部で気密ですそうやすやすとは見せられません」


「私達も企業共同体の一員だと思うんですけど」


「それはそうなんですが」

なんだか歯切れが悪い、嫌みたいだし無理に聞かなくてもいずれは教えてくれるでしょう


「解りました、今度でいいです代わりに何処かいい場所ありますか」


「じゃあ取って置きの場所へ」


クレイさんが連れてきてくれたのは神社から続く小道、木々が生い茂っていて涼しい、そして木々の先には見晴らしの良い丘の上


「此処が一番景色が良くて好きなんです。向こうにいた頃はここから日本一高いタワーと東京の夜景が見えました」


太陽が沈みかけた夕暮れ


クレイさんには違う景色が見えているのだろうか、なんだか遠い目をしている様に感じた


やっぱり帰りたいのだろうか


少し胸が傷んだ


「さ、今日は大将のお店に予約も入れてますしそろそろ行きましょうか」


「はい行きましょう」


大将さんのお店は開店直後だというのに盛況、予約しておいてもらってよかった

「いらっしゃいませ!」

デリアが元気、ここの里に迎い入れてもらえなければこの笑顔はなかったのだと思うと胸が熱くなる


「大将ビール、クリシュナさんもビールでいい?」

「キンキンに冷えたやつ下さい」

大将さんは、お!わかってきたじゃないという顔だ


ここに来た時はつまらないことを考えるのをやめよう、ここに居るときくらいは…


お店は満員

「ごめんなさいね~、またよろしく~」

入りきれないお客さん達を申し訳無さそうにお断りしている


「大将、そろそろお店大きくした方がいいんじゃない?」

「ん~、そうしたいけど焼き場はここしか無いし大きくしても手が回らないからねぇ~困ったもんだよ」


「暖簾分けで2号店とかは?」

「いやいやいや、流石にねぇ、デリアちゃんも頑張ってくれてるけど教えることが山積み、店を構えるなら教えることは料理だけじゃないしね」


たしかにそうだ、里を復興するときも人族の手法を取り入れるのなら金勘定も視野に入れなきゃ

「クリシュナさん顔がお仕事モードですよ」

「いけない、せっかくの大将さんの料理、ぱーっと飲み食いしなきゃですね」


そうそう!と頷く大将さん、忙しそうにしてても見ると見てるんだよね大将さん、大将さんに聞いてみたかったことだけどクレイさんも詳しそうだし歴史について聞いてみよう


「日本の歴史ですか」

「はい、家にある偉人の漫画を読みましたがどうもクレイさん達の日本と漫画の日本が違う気がして」


「漫画ということもありますがちなみにどの時代…というか誰の漫画ですか?」

「織田信長に徳川家康、豊臣秀吉」

「御三家ですね~」

織田信長と言った瞬間大将さんが反応したのを逃さなかった暇がある時は教えてくれそうだ


「順番としては織田信長、豊臣秀吉、徳川家康で三人とも時代が重なっています」

「はい、でも今の銃とは違うみたいで今の銃の方が性能いいですよね」

「良いと言えば良いのですが使い方や役割も違うというか」

「役割ですか」

「ええ、たしかに性能は今の銃の方が良いですが今使っている散弾銃の有効射程、銃によっても違いますが50メートルまでだったりします、あくまで目安ですが…その次代の銃はどれくらい飛んだと思いますか」

「今が50なら20メートルくらいでしょうか?」

「半分正解で半分間違いです。当時も様々な銃があってとにかく遠くに飛ばすだけなら3キロメートル飛ばせる銃も有ったんです」

「そんなに飛んだんですか?」

「はい、でもまず当たりません。当たらなくても良かったといいましょうか」

「当たらなくても良いんですか?」

「勿論当たったほうが良いんですけど、戦は何千多くて何万の兵が出ます。当たる可能性が上がりますよね?」

「確かにそうですね」

「当たる可能性があったらクリシュナさんはどうしますか?」

「当たらない場所まで兵を下げます。そうか近づけないんですね」

「はい、これは僕みたいな素人でも考えることなので本当の軍師がどう戦略を練ったか分かりませんが、敵を遠ざけたいのなら有効だと思いませんか、勿論相手がこっちの武器の素性を知ってないと成立しませんが」

確かにそうだ、こっちの武器の性能を知らなければ向こうは何も知らずに突っ込んできてせっかくの戦法も無駄になってしまう、ちらりと大将さんを見れば聞き耳を立てている話に加わりたそうである

「卑怯に感じるかもしれませんんが相手の攻撃が届かないところから相手に攻撃できるというのが一番効率というか仲間を失わずに戦えるわけで…」


その言い方から生命を効率で考える事に抵抗があると伝わってくる、でも戦いなのだから言っている意味は解る


「そうですね、話は変わるというか戻るというかその戦国時代と今のクレイさんたちだと生き方が違うというか何が有ったのかなと」


「あ~、それに関しては細々と色々転換期は有ったんですけど大きく言うと戦争に負けたからと言ってもいいのかなと…」


「言いづらければ止めますよ」


「いや、実際に戦ったのは僕らではないしもっと昔…というほど昔でもないか、変わりつつ有ったと言うか変わらざるを得なかったというか日本だけではいられなくなったんです」


「…」


「世界中が武力で領土を広める時代、日本も強くなければ飲み込まれてしまうそうやって戦い続けて日本は負けた死者は300万人を超え原爆という新型爆弾を落とされ一発で二万人以上が犠牲となり日本は負けたんです」


想像を絶する戦争、そして爆弾で生まれたあの怪獣が頭をよぎった


「それ以降日本は勝った国と色々なやり取りを経て這い上がってきたというわけです」

淡々と語る姿が衝撃だった、そこに悔しさを感じなかったからだ、悔しいのかもしれないが表には見せなかった


「暗い話になっちゃいましたねごめんなさい」


「いえ、こっちこそごめんなさい」

申し訳ない気持ちでいっぱいだ

「でもね、祖父や戦争に行った人から話を聞いて、それが有って今の自分達が居るそれだけは忘れたくない」

さっきの無表情とは違う感情の籠もった顔、どんな感情かは読み取れないが後ろ向きではない気がする


「ささ、飲みましょう」

「そうですね、あ!映画、クレイさんが貸してくれた映画」

その後は映画談義に花が咲き楽しいデートになったのだった

ブクマや評価をしていただけると作者が大変喜びます!続きを書く活力になりますので


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よろしくお願いします!

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