113:メーベ達と仔たぬきズ+?
本日投稿2話目、ちょっと政治的な話ばかりだったので久しぶりにほんわか回を目指しました
工場のお休みを利用してツァーミとエピリズの村に行ってみようという事になった
大抵のことはこの王都で事足りるのだけれど、たまには外に出て新しいものを見てみたいと言うツァーミと気晴らしも兼ねてという私の意見が合い、仔たぬき達も例に漏れず行ってみたいらしかったので連れて行くことにしたのだ
朝のルーティーン、ワンさんの太極拳を終えてエピリズの村へ行くために工場から軽トラを借りる
子供たちとツァーミは荷台に乗せ出発、助手席にはヒルデ、不思議と他の子に比べて私に懐いている気がする
村に到着して砂利を引いて作られた駐車場に軽トラを停め村の中心部へと歩く、途中仮設で作られたイベント会場で選挙候補者の演説を見かけたがそれが目的ではない、そのまま商店などがあるメインストリートへ向かう
王都と比べるとまだまだ未舗装の道も多く正に発展途上、工事も続いていて見知った顔に挨拶を返せば向こうからも帰って来る
「おう!メーベちゃんとじゃりっこ共、こっちに来んのはめずらしいな」
「おっちゃん元気!?」
「おう元気だぞ、お前さんたちに負けねえ位にな」
そう言ってカッカッカッと笑う道路部門の親方
家や普段の生活では私達が育てている子供達だが、外では工場や各部門の親方衆が気を配って見守ってくれているのだ口は少々荒いが暖かい人達
「今日はこっちに何か新しい物でもないかウィンドウショッピングに来たんですよ」
「あ~、確かにエピール族とリザード族だっけか?王都じゃ見慣れねぇ小物売る店も出来たからな見て回るだけでも面白えにちげぇねぇ」
じゃあなと言って仕事に戻っていく親方
子供たちは親方の言葉に既にわくわくが止められないみたい
「メーベママ早く行こうよ」
カールが私の腕を引っ張って急かす
長屋と呼ばれるスタイルの家が立ち並ぶ通りを超えるとメインストリートに到着だ、雑貨屋に生鮮品、肉屋に金物屋、王都とは違って雑多な感じはするがその分活気に満ちているようにも感じる
他にもホビット族の経営するアクセサリー屋とドワーフの工房、一箇所に固まってくれているお陰で買い物には便利、王都は最初からある程度建物が立っていたせいでお店はバラけていて便利とは言いづらい
ツァーミのお目当てのお店、サンダン王国の物産屋、色んなジャンルの見たことの無い物が一同に置かれていて確かに目を奪われる
「メーベ様、どうですこれ似合ってますでしょうか?」
ツァーミは自分の耳元にイヤリングを持っていき私に聞いてくる、おしゃれはとんと興味がない私に聞かれてもとは思うが、あまり派手過ぎず会社の事務でも問題ないように見えたので似合うと答えておく
子供たち特に女の子組のアネットとヒルデは王都ではおしゃれに関するお店が殆ど無い、作業着のお店は有るが…そのせいか目をキラキラさせて子供服を見ていた、数着は買ってあげても良いかもしれない
男の子組はお土産品のワンド本来は魔法を増幅させる杖だがあくまでお土産品、増幅力は本物の十分の一に抑えられている、ほんの少し強くなったかなと感じられる程度の物だ
この物産店を含めエピリズの村のお店に有る武器防具、魔法に関する道具は全て制限が掛かっている治安のためだ
それを今後段階を経て解除していく、そのための選挙なのだ
お金に関してはそれなり、いや…ほとんど使うこともないので貯まる一方、子供たちに使ってあげる事に決めた
金額に上限を決めて好きなものを買って良いと子供たちに告げる
「ママありがとう!」
子供たちは思い思いの品を購入するのだがヒルデが迷っているようだった、手には同じイヤリングが二対あって金額的には超えてしまう
「ヒルデどうしたの?」
「あのね、これ…ママとお揃いで着けたいのでもお金足りないの」
ぎゅっとヒルデを抱きしめる、びっくりしたヒルデに
「じゃあ、こっちはママが自分で買うわ一緒に着けてくれる?」
「うん、ママ大好きだもん!」
あぁ、来て良かったこれは間違いなく温泉よりも疲れが取れる!
他の子達からも余ったお金を集めて芳香剤…これは部屋ではなくフォークリフト用だという嬉しいが、もしかして臭いのでは…という疑念も湧いた
買い物を終えて町を少し歩いてみる、出店もあって美味しい香りに鼻をくすぐられる
「何か食べていきましょうか」
「「「やったー!」」」
「何が有るのかしらね」
村はまだまだあちこちが建造中なのだが出店は何軒も出ているようだ働く人間の手軽な飯といった感じなのかもしれない
威勢のよい掛け声が飛ぶ
「いらっしゃい!いらっしゃい!うちは二ポの町の新鮮な魚のすり身に衣をつけた揚げたてのがんす、それを王都から仕入れたバンズで包んだ、がんすバーガーだ!ここでしか食べられないよ手軽に食べられて栄養満点だよ、ねぇちゃん子供達の健康のために一つどうだい!」
もう魚の商品が出店に出ている…おそらくクレイ殿の差し金だろうでなければこんなに早くがんすという商品、油、小麦粉を調達できるわけがない…まあ雇用に役立っているのであれば問題ないか
結構な大きさ、職人の飯代わりなのだからだろう、私とツァーミで半分づつ、子供達にも三つ買って半分こづつにして簡易なテーブルと椅子に着いて食べ始める
「おいしぃね~」
アネットとヒルデはお行儀よく
「これ、うめえな」
男との子たちはルディを除いて豪快に食べていた
「馬鹿野郎、アタイを誰だと思ってんだ!」
和やかな空気を一瞬で壊す罵声と建物からゴロゴロと転がり出てきた毛玉、皆ぎょっとして声の主に目を向ける
「ああ一流の冒険家の名を語る不届きもんだ、さっさとどっかいっとくれ」
しっし、と追い払う仕草をして男は中へと戻っていった
畜生と呟く毛玉
「ママあれなぁに」
「見ちゃいけません」
子供の声に反応したのか毛玉がこちらに向かってやってくる、せっかくの休みだというのに面倒くさい事になりそうだ
みなお忘れかもしれませんが声の主は一年間ずっと食っちゃ寝してたあの人です
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