109:復興と防衛…そして
本日投稿二話目
クーデターは失敗し王家からの正式な通達を受けエピール語で書かれた復興支援の垂れ幕を着けたセミトレーラや大型トラックが積荷を満載して列をなしサンダン王国へと入っていく
積んでいるのは一つ1tにもなるコンクリート製のバリケード
王国の西の城門の外には爪を起用に使ってバックホーが鉄板を敷きその上をトラックが渡っていく、到着と同時にラフテレーンクレーンがバリケードを降ろし第二の城壁を作り上げていく
サンダン王国内では損壊が激しい中心部の復興作業、外では近隣国家からの攻撃に備えてのバリケード兼馬防柵の設置
バリケードは全てを塞いで進攻を止めるものではなく相手がまっすぐ直進するのを防ぐ為の障害物であり、敵が現れたとしても進行方向を限定させる効果を狙ったものだ
瓦礫の撤去作業に奔走するブルドーザーは鋼鉄の雄牛と呼び、ショベルカーはアームの動きから鋼鉄の鶴と呼ばれ
人力ではどうにもならない瓦礫をいとも簡単に取り除いてく姿は頼もしく民衆の目に映りコンクルザディアに対する感情は敵対から平穏なものへと変わっていく
炊き出しも行われ見知らぬ異国の食べ物には興味半分、不安が半分では有ったものの食べ始めてしまえば民衆の胃を満たし好感度も上がる
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フェデンの服装を初めてみた時から感じていたことだが王宮も町並みもどことなく元いた世界の中東を思い浮かべさせる歴史ある風景だった
「ようおいで下さいました、この様な姿で申し訳ない」
王の寝室へ通されたクレイとノウミ、回復傾向に有るとはいっても国王エルデイールは未だ床に臥せっていた、その隣にはフェデンと王妃と思われる女性
フェデンから教わった礼儀作法に乗っ取り片膝を付いて頭を垂れる、隣りに居るノウミもそれに習って頭を垂れた
「こちらこそお招き頂き感謝致します。なにぶんこの様な席には慣れておりませんのでご無礼はお許しください」
実際俺達は王家なんて一生関わることはない存在だと思っていた、日本だろうと異世界だろうとだ
フェデンから使者として招かれるつもりではいたが全然想定していた状況とは違う
「フェデンより、そなた達が異世界の民だと伺っているがそれは真だろうか?」
「陛下、フェデン殿の言う通り異世界より参りこの世界では三年になります」
「そうか、それで我が国に何を望まれる?ご覧の通り私は実権を失い国をこの様な道に招いてしまった、そなた達の国にも戦を仕掛け敗戦そればかりか国は内戦状態で荒廃…望まれる物を差し出せるかどうか…」
だいぶ弱気の国王陛下、そりゃあ自分が寝てる間に国中好き勝手されてやっと起きたら内戦になってたとか悪い夢、もう一度眠りに落ちたいだろう
「我が国コンクルザディアとして王よりエピリズの村の存続、それと国交と交易の許可をいただきたいとのお言葉を預かっております」
「それでは割に合わぬではないか…領土はいらぬと申すか」
「エピリズの村のみで結構でございます、それと我が国はこの世界に来てまだ三年、国としてはまだ一年そこらの赤子、この世界の理について赤子を育てて頂けるのならば我が国は力をお貸しする所存にございます」
「なんと…同じ力を持っていたとしてもそなたらの様な心を持っておる相手でなければ我が国は滅んでいたであろう…」
正直な所、桁違いに人口が少ないコンクルザディアにとって領土が増えるのは重荷でしかない、それならばサンダン王国に恩を売り、エピリズの村を拠点に交易を行い緩やかに国を栄えさせて行った方が確実なのだ
異例の会談となったがやっとサンダン王国との国交を樹立、わだかまりも最小限の上々の会談結果を得られた
失意の宰相に代わりフェデンが国民へサンダン王国とコンクルザディア王国の国交樹立を宣言、このままフェデンが引き継ぐのか宰相が立ち直り次第職務に復帰するのか未知数な部分は有るが、少なくとも窓口はフェデンになるだろう
国交樹立に伴いエピリズの村でも変化があった、出戻りだ
サンダン王国に基盤のある者ならそうするのも当然だろう、しかしそれなりに残った人口は半分の300人といった所か、残った者たちはエピリズの村に商機であったり新しい生活で一旗揚げてやろうと思う者たちで人数は減っても活気に満ちていた
これからが本当の意味でのエピリズの村の発展期、店や工房といった働き手を求める動きも活発なのだからチャンスと捉える元サンダン王国の低所得者の多くが残ったのだった
紙幣貨幣といった為替については当初の予定通りには行かなかったがこれからの議題として取り組むことになっている
問題は残っているがやっとスタートラインに両国が立ち、コンクルザディアの民、特に人種が浮足立っていた、その理由は僅かながらにサンダン王国が接している海での漁業権を得たからであった
109エピソード目でやっと一カ国目と国交樹立長かった…
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