99:エピリズの村とシンバ駐屯地
本日投稿1話目 15:00に2話目投稿予定です。よろしくお願いします
「お主らいくらなんでもやり過ぎじゃ!」
「ご尤もで…」
国王とクレイさんは土下座させられ、私達もするべきと考えたのだけど
「考えたのはこいつで許可したのはこやつなのじゃから、従っただけの主らはせんでよい!」
お怒りの精霊様、ふらっとやってきたかと思えばおかんむり
当然茶菓子でどうにかなるレベルではなく
「大森林の開拓は自然な営みの範疇じゃが、あれはなんじゃ!何をどうしたらああなるのじゃ!」
「国を護るためには致し方なく…」
国王様はハンカチで汗を拭いながら事情を話せば、ため息を付く精霊様
「お主らよもや言ったら反対されるから、最初から事後承諾でやるつもりだったのではあるまいな?」
見た目は羽の生えた幼女でも眼光は鋭い
ぎろりと睨まれればビクリと同時に揺れる二人
あの反応…最初からそのつもりだったんだ…
「被害者は出さぬように心がけたのは良い心がけじゃが、わしに声を掛けておけば事前にマナの調整や動物たちの避難で被害は最小限に止められたのじゃ、主らが戦争するのは勝手じゃが森の生き物達を無駄に巻き込むでない!」
あ~、これは相当頭にきてますね、ちょっとやそっとでは収まりそうもない…茶菓子は減り続けてるけどね
詰まる所、開戦不可避だったことは理解しているが事前に申告しろという話し
二人は平謝りで今後、大森林での行いは事前通告すること誓わされて
精霊様も今後は神社に腰を据えるという事だった
終始怒りっぱなしだった精霊様は腹いせにパン屋のスイーツを国王のツケで根こそぎ持って帰ってしまい、そこでも二人してお店に平謝りする羽目に…
こうして精霊様は神社に鎮座されることと成り、新作パンは必ず真っ先に献上することになった
こってりと絞られたクレイさんは家に帰るとソファーに倒れ込んだ
「あ~疲れた」
「お疲れ様でした、でもまあ今回のことは向こうの勝手ですし…私としてはちょっと納得いかないと言うか」
「久しぶりに日本での仕事を思い出したよ、向こうではお上に申請通していても現場で近隣からどやされるなんてことはざらに有ったし、事前に通告しろというだけ筋が通ってる、今回のはこっちが完全に悪いから仕方がないかな」
割り切れていてそこまで落ち込んでないようだけど、向こうではそんなにお仕事大変だったのかと思うと向こうの世界も良いことばかりじゃないと感じてしまう
「しゅ~な~」
はいはい、解ってますよ
「怒られても可愛い嫁さんがいると思えばなんてこと無い、それに」
私を抱きしめたあと優しくお腹に触れる
「お父ちゃんになるんだからな、こんな事大した事ないさ」
「頑張れ~お父ちゃん」
二人で微笑み合う
「そう言えば、村の方はどうなんですか?」
「ん~、ぼちぼちかな代官としてオルドアさんが就任、自警団の上の組織として村の管理はするけど大幅に何かを変えるとなると反発を招きそうだから当分は様子見」
「村の名前も決まったんですよね、エピリズの村でしたっけ」
「そう、エピール族とリザード族だからエピリズ、安直だけど彼らからすると負けたにも関わらず自分たちの種族名を使ってくれているのが嬉しいみたいですぐに決まったね」
街が増えた事で正式に名前を付けることになったのよね
王都はそのままコンクルザディア、捕虜の村はエピリズの村、駐屯地はお馬さんたちから取って神馬でシンバ駐屯地
出来たばかりのエピリズの村だけど結構仕事が有って活発
自給自足のための狩猟だけでなくシンバ駐屯地で馬の世話、自警団、物資の運送業、土方、新たに村にも造ったハウス栽培の農業従事者、屋台と呼ばれる移動式のお店とにかくクレイさん達は仕事を作る
貧すれば鈍する、仕事がないと悪事に走る人が生まれるからねととにかく仕事を作る、目から鱗と言うか治安が悪くなれば自警団なり軍だったりの数を増やせば解決すると思っていた自分が恥ずかしい
言われてみればそうかも、仕事があって生活に困らなければ普通の生活を望んでいる人は無理して犯罪なんてしたくないだろう、それでも犯罪に走るのならそれは本人の問題
もう一つ、村でも王都でも落書き禁止、これは割れ窓理論?というらしくて割れた窓ガラスや落書きみたいな小さな悪いことでも放置するともっと大きな悪事をする様になるというものらしい、窓ガラスはエピリズにはないから実質落書きの取締だけになるけどこんな方法もあるんだと感心した
それとこれはサンダン王国とのやり取りだけど、ベルザードには書状を持たせてある内容は
『サンダン王国に残る家族が希望する場合出国させよ』
というものエピリズの村には兵士である男しか居ない、家族がいる場合は村に越させろというもの
これ幸いだったのか渋々なのかは判らないが離れ離れだった家族達はこうしてエピリズの村で再会できた、愛想を尽かされて待てども待てども誰も来なくて泣いている者も居たけど自分の行いのせい、そこまで責任は持てないわ
新たな村で再出発を始めた人や家族、彼らを失望させないためにもいろんな策を練るクレイさんを私は誇りに思うのだった
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