97:種族の違い?と母子手帳
妊娠三ヶ月、ほぼ同じ時期に妊娠した大将さんの奥さんはつわりが酷く辛そう
対して私やミュレッタにはつわりと呼べる症状が無くて…
「つわりですか?ええ有りましたよ」
お母様が私を身ごもった時の様子をメーベに聞いてみた、やっぱりエルフにもつわりは有るみたい
お腹の中に命を感じることが出来るし成長も感じているんだけど人と比べて遅い気がして少し心配になってしまう
「もしかしてなんだけどさ」
クレイさんに心配を伝えてみると思わぬ答えが返ってきた
「エルフって人よりも寿命が長いじゃない、妊娠期間も人よりも長いってことはないのかな?」
人は十月十日だというが私達は…どうなんだろう?人の暦を使い始めたのはここに来てからだしエルフは季節の変わり目でざっくりとしか暦がなかったから判らないのよね
クレイさんは私の不安に答えながら毛糸で私と赤ちゃんの靴下を編んでいる、器用だし嬉しいし
「毛糸が二種類しかないからデザインはごめんね」
なんて言ってたけどそんなの全然気にしない、私と赤ちゃんのために編んでくれている事が嬉しいんだから
ノウミさんもクレイさんから編み方を教わってミュレッタの為に内緒でマフラーを編んでいるらしい、うちの男衆って甲斐甲斐しいわよね
フリーダム過ぎた捕虜収容所には今壁を急ピッチで建てていて本格的な冬が始まる前には完成する予定になっている、下段のコンクリートの壁には燃えるコンクリートを入れて床暖房ならぬ壁暖房、壁も半ドーム状で中に熱がこもるように設計されている、映画で見る捕虜って扱い悪いけどそれからしたらかなり良い扱いじゃない?
入退の手続きを踏めば狩猟に出かけるのも問題ないらしいし捕虜って何かしらって感じ、クレイさん的には向こうの世界の一次大戦中に似たようなフリーダムな収容所が有ったらしくてそれをモデルにしてるって言ってたわ
ドーム状の壁は将来的にコンクルザディアの壁も同じようにするらしくそのための試金石、ここで集めたデータを元に作るそう、人は本当データを取るのが大好き、でもそのお陰で文化や伝統が途切れないとも言える
ドワーフのものの教え方も変わってきた、私達が来た頃はまだ目で見て盗めが主流だったのに最近はそうでもない、人とのやり取りの内に技術の伝承の大切さ、途切れてしまったものを取り戻す大変さを知ったのだと族長は言う
今までの口伝から紙に残すようにもなった
「そうだ!」
「うわ!びっくりした、何どうしたの」
「クレイさん私、妊娠日記を書こうと思うの、そのなんていうのこれから先エルフの子が妊娠した時不安にならずに済むように日々の変化を記録するの、そうだミュレッタにもお願いできればもっと確実になるわちょっと頼んでみる」
念話でミュレッタに聞いてみると向こうも乗り気で参加してくれると言ってくれた
「これってさ他の種族でやるってのもありだと思う?」
「え?他の種族もですか」
「いやこれからもいろんな種族の子が生まれるじゃない、そんな時に他の種族もお産の手伝いだとか互いの種族の妊娠期間とか知っていればサポートしやすいかなって」
確かにサポートが有るとうれしいかな、サポートまでは行かなくても知っていてくれるだけで助けになったり悪気はなくても傷つけたりといったことも防げたりするかも?
「シュナここまで来たらさ、婦人会を作ってみない?」
「婦人会?」
「婦人会というか女性が集まって種族間の違いとかを話し合って理解を深める会かな」
「良いですね!でもどうやって集めよう…」
「そこは族長たちに声かけてもらおうよ」
「大丈夫かな、余計なことするなって言われない?」
「問題ないでしょ、むしろ奥さん同士で話す場がないって嘆いてたし」
ん~、言われてみれば私もオークのオルドアさんの奥さんとかとあまり話した記憶がない
「なんか大事になっちゃいそうね」
うちの旦那は乗せるのが上手い日記を書くからいつの間にか婦人会を作ろうになっちゃったけどそれはそれでワクワクしている私が居る
こうして婦人会作りが始まりやがて私の日記がコンクルザディアに根付いていく母子手帳の始まりになるなんてこのときは思いもしなかった
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