96:素人軍師クレイさんの読み違え
第五章 コンクリート鎖国と外交ドクトリン 開幕です
バタバタとした初めての戦後処理…サンダン王国は三ヶ月経った今でも降伏条件を呑んでいなかった
「もっと早く降伏するかと思ったのにぃ」
居間でうなだれる旦那、使者はやってくるがのらりくらりと躱され早三ヶ月、フェデンさんに聞いても
「我が国に余力は無いはずなのだが…」
とサンダン王国の動きは定石からは考えられないと言う、ではなぜ?
その答えは以外な所から齎された
『ねえ、僕達ってもう帰れないのかな?』
『どうだろう、でも西のデルマカ王国・オベルダン王国も戦を始めたって言ってたから長引くかもね』
『その話詳しく!』
お馬さんたちの会話を聞いたコータローさんが詳細を求めそのお馬、将軍の神馬から齎されたものだった
要職に着く者たちとフェデン、ベルザードが工場の会議室に集められコータローさんから報告を受ける
コンクルザディアVSサンダン、その裏ではデルマカVSオベルダンでも戦が勃発
時期としてはフェデンさん達との偶発的な戦闘の直後フェデンさん達が知らなくても仕方がない
「噂程度には有ったのだが…不確実であった故、話さなかった…」
これで戦の準備が早かったのにも納得がいく、隣国同士が戦をしていれば『うち関係ないんで』なんて平和ボケでは居られない、とばっちりにも遭わないように備えるだろう
そこにきて荒唐無稽な武力を持つというにわかには信じられない国家の出現で方針変換に至ったのではないかというのがクレイさんが情報を纏めて行き着いた結論だった
「でも、おかしくないですか?」
「うん、言いたいことは判るよ、こちらが解放した捕虜が着く頃にはうちとの戦は決まっていた」
「そうです、お馬さんよりも早く私達の事をどうやって…あ!」
ユフィ…エルフやダークエルフなら念話を使って、仮に距離があったとしても中継ポイントを作ってリレーすれば
「たぶんこの状況を影で操っている奴らが居る、うちとサンダン王国の戦だけじゃなくデルマカとオベルダンの戦にも関わっていると見た方がいい気がしてるんだ、フェデンさんこれまで隣国の戦の頻度と規模ってどんなもんでした?」
「毎年作物の収穫直後から冬前までに小競り合い程度は起こる、本格的な領土の奪い合いは二十年に一度有るか無いかくらいだな、戦に勝てる自信があったとしてもその後の統治や他国のちょっかいを考えればそうそう手は出せんのだ、戦そのものでの自国の損耗も有るからな、損耗の度合い次第ではたとえ勝ったとしても統治を始める前に手放さなければいかん事だって有る」
きな臭かったとしても毎年起こる小競り合い程度だと思っていればフェデンのおっさんがこちらに情報を上げなかったとしても恣意的なつもりでは無かったのだろう、それに今更それを言った所で状況は変わらないからだろうクレイさんは特に怒った様子も見せない
「おそらく表面的には隣国にはコンクルザディアの存在は伝わってないんでしょう、だからサンダン王国がすっかすかな事も知らないから隣国が攻めてくることもない、のらりくらりと躱してる間に立て直しを図っている感じですかね」
「そんな事をしても半分に減った兵力でどうやって立て直すつもりなのだ…」
「分かりませんが裏についている奴らがなにかしらそそのかしている可能性は有るでしょうね、もしかしたら立て直されないようにわざと今の状況にしているのかも」
「それはどういう…」
「サンダン王国だけじゃなく隣国含めて潰し合ってもらうためですよ、その後に総取りして一つの国にまとめ上げるとか理由は色々でしょうが戦を焚き付けて弱体化を狙ってるとか」
「クレイ殿、止める手立ては無いのか?」
「止めるも何もこれは想像でしか無いですよ、それに情報が足りなすぎて動けません、こちらとしては潰し合ってる内にもっと守りを固めるくらいしか」
「しかしそれでは我がサンダン王国は滅亡してしまうではないか」
ん~、そうは言ってもクレイさんの言う通り守りを固めるしか…私には他にアイデアが浮かばなかったし最初に想定していた状況と今とでは違いすぎる
「フェデンさん」
声を上げたのはノウミさん
「別にクレイちゃんは諦めたわけじゃない、情報が足りないと言っているだけだ、何か他国の情報を手に入れる手段はないだろうか?」
「他国に伝が無いわけではないが、その裏にいる者たちと繋がってない確証はないぞ…」
「試してみれば良いのでは?」
今度は工場長さん
「それっぽいネタをぶら下げて裏の連中と繋がっているのかあぶり出すのですよ、何も起きなければ白、何かが起きれば裏の連中と繋がっていて黒、と判るような嘘の情報を流して見るのです」
なるほどと相づちを打つフェデンさん、こうしてあぶり出すためのアイデアを皆で出し合うのだった
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