閑話:コンクルザディア見学ツアー 王都編
お馬さんの扱いと駐屯地の厩舎のクオリティのお陰で好印象を得たあとはそのまま滅菌ルームを通って来ていた服も捕虜用の服、ハリウッド映画なんかでよく見るオレンジ色のつなぎっぽい囚人服に着替えてもらう、兵士が着ていた服は専用の一度で百人分を洗える巨大洗濯機にまとめてどーん!
旧日本軍の検疫所ってこういうのが有るとは聞いていたけど実物を見るのは自分も初めてでちょっと感動した
ちなみに囚人服は手先が器用なホビット謹製でしっかりした作りで自分用が欲しい位だ…もちろん色はオレンジ以外で頼むけど
全員が着替え終わり更にトラックに乗って王都へ移動
駐屯地から王都まではアスファルトの街道が完成していて一気に振動が減りトラックの速度もぐんぐん上がる
「すごいな…まっ平らだぞこの道」
「このスピードで全然揺れんとわ…これは神馬達にとっては良い道なのか?」
「硬そうだし神馬の脚には良くないのではないか?」
神馬というのは彼らの馬の呼び方、神から授かったから神馬、分かり易い、おそらく転生者はそのまま『馬』と教えたが彼らの中で神を付けたんじゃないかな、予想でしか無いけど
地面ばかり見て、馬にとって良いか悪いかで議論している辺り本当に馬を大切にしているのが判るな
そうこうしている間にあっという間に城門にたどり着く
そびえ立つコンクリートの白い壁
「おい、あの壁どうなってんだ?」
「あんな大きな一枚岩どうやって加工して…それ以前にどうやって運ぶんだ」
そもそも岩じゃないしな、説明は工場見学でするので後回し門前に着くといつもどおりクラクションで合図して開けてもらう
ドロロロとエンジン音を響かせ開く城門、まさかそんな開き方をするとは思って無くて驚く捕虜の皆様
「門もこの乗ってきたやつと同じなのか!」
さいでございます
門の中を見た皆さんは…鳩が豆鉄砲喰らったように拍子抜けしているのが丸わかりである
「全然居ないぞ…一体何処に隠れているんだ?」
人口四万人の都市…じゃなかった国から見れば閑散とした景色、ごった返す人の波でも想像してたんだろう、大型トラックは彼らを乗せたまま駐車場に着くのだが
「こいつら一体どれだけ化け物を飼っていやがる…」
「みんな見た目が違うぞ、どんな攻撃をしてくるのかさっぱり判らんがあの戦車とか言うやつより遥かに大きいじゃないか」
杭打ち機やアームの先のアタッチメント違いの重機などを見てやいのやいの騒ぐ
トラックから降りてきた捕虜客の皆さんを連れて工場見学
この工場見学なんだけどね、国王とトップを集めたミィーティングで止めたほうが良いのでは?って議題に上がったが
「日曜大工してる人が毎年数百億円の設備投資をしている工場をチラ見して真似できると思います?」
例えであってうちの工場がそうだというわけじゃないけど、大抵の仕事は規模や技術が違いすぎると参考にしようを通り越して、『解らないということだけ解った』になるんよ
だからもう相手に依ってはぶっちゃけた所で問題なくて、逆に隠す方がこちらを侮らせる結果を生む可能性が有ると周りを説得した、もちろん相手にも拠るとも伝えてある
でもこの工場見学インチキだけどな、普段はもう作ってない大型の製品の製造行程を見させる
デカいはそれだけで説得力を持たせてくれる、駐車場に有ったただの重機も知らない人間から見れば『なんか凄い兵器』
と勝手に勘違いしてくれる、チハ公のおかげだな
工場を後にする頃にはツアー客フェデンのおっさんと同じ反応、気落ちしてる所でお食事タイム、オークたちのお食事処の大将二号店でのお好み焼き組とドワーフ達のパン屋でピザ組
そして新しくオープンしたラーメン(即席袋麺)屋組の三組に分かれて食事を取ってもらう
お好み焼きとピザは判るが『即席袋麺屋』は日本だったら即廃業待ったなし!な店なのだが…
工場寮と運送部寮、それに大将の家に有った袋麺の種類はなんと四十種類内半分はデンさんが転移前に買いだめしていた物だ、正直そんなに買っていたとは知らなかったし
いつもラーメン食ってんな位にしか思ってなかった、これを知っていたら食糧難の時期も楽だったろうに…
食べても食料が翌日には戻っているコンクルザディアの丘だけど、それは調理や消費しないと戻らないというルールが前提にあるから袋麺を一個作ってからまた一個作ってと大量消費には向いてなかったが袋麺自体の数が多ければ一度に調理できる数も増えるわけで…
種類は四十種類でも在庫を考えればもっと作れる、袋麺なんて1パック大概3~5袋入ってるしな
そしてこの即席袋麺屋かなり好評なのである!
どれを選んでもチープな麺に粉スープ、食べる度に日本の日々を思い出す…たまにやけにしょっぱい時もあるがきっと気のせいだ
その日の気分で違う味を選べる即席袋麺屋、どれを選んでも100円、儲けは遺族年金を含む年金や行政サービスの資金に振り分けられる、たかが100円でも商品仕入れがゼロ円、店員も一日おきの交代制で二人で人件費も大してかからない
調理は大人でも子供でもセルフで作って貰うから、店員は実質ラーメンの代金と清掃をしてもらう要員そんな待遇だから店で働きたい者も多い
食事を終えたツアー客達も自分たちの食べた物の話でもちきり、次来る時は~なんてもう別の料理を食べてみる気満々だった
もっとも一回に60人参加でもツアー客は543名、毎日ツアーなどしないし次までは当分先になるが夢を壊すのはいくない!この日のために仕込んだ大量の惣菜パンをお土産に持たせてあげる
収容所で思う存分宣伝してくれたまえ…こうして気がついた時にはコンクルザディアグルメ沼に落とされていた捕虜が大量発生するのだった
黒いさん降臨!
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