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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

百類目の空

作者: 白百合 メイ

夢を見ていた。赤褐色の空の下で空飛ぶ魚、地面を泳ぐ鳥、6本の足を生やした人間が少女の肉片を次々に食千切っていく様な光景なわけだから夢なのだと思う。

しかし気分の悪い夢だ、と僕は腹を擦りながら思うと共に少女の顔に見覚えが有ることについて暫しの不信感を抱く。夢なのだから当たり前だろうか。しかしどのような事があって私の脳味噌が彼女をこのような夢の世界へ引き摺り込んだのか甚だ疑問である。

何故か落ち着いている私のマインドは新たな夢の世界へと続き、其処には先程と打って変わり晴れやかな空の下で先程の少女が満面の笑みを浮かべて居るような場面を見た。彼女は顔の形を変えないままで何かを喋りだしたかと思えばその内は「模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類模生類………」と呟くだけなので先程より不信感が強まる。

模生類とは何かと思えば彼女の念仏はピタリと止み、急に僕をその双眸に見据えた。

「百類の生物。模生類は生物を侵食して、骸に変えちゃうんだよ。怖くない?怖いよね。あぁ怖い怖い。彼らはね、彼女でもいいや。何かに化けてわたし達を見てるんだ。そして伺ってる。世界を。空の色を彼等の色に変えるのを。」

「百類とか…模生類とか言われても良くわからない。僕の夢だから、それは僕の妄想なのか?君は誰だ。」

「百類は怖いの。模生類は私達を骸に変えちゃうんだよ。怖くない?怖いよね。あぁ怖い怖い。」

僕は舌打ちをするが、それを微動だにしない様子で再び「模生類模生類模生類模生類…」とつぶやき出す少女。

彼女に対して意味不明からくる恐怖を感じ後ずさる。私の目からみて少女は今にも襲いかかってくるのではないかと思う程に不気味な存在であったし、少しばかり恐ろしい容姿であるように見えた。いや、少しばかりどころか、今、彼女の容姿は恐ろしく歪んでいる。彼女の身体は捻じれ歪み現在進行形でその姿を化け物へと変えているのだった。

腕の血管は皮膚を突き破り浮き出て来た。目は真黒い穴が空いたようになり、口は模生類という言葉を反復する。体は2メートル程となり足の本数は6本に変わる。そのうち口から錆色の液体を排出しだすと、そのまま僕の方へ足をジャカジャカと動かし寄ってくるのだ。その頃、僕は足が動かず声も出なくなっていた。心の中で僕はさんざん叫び、その内、僕の体が奴に食い千切られると耐え難い苦痛と恐怖で「ぁぁ…」と小さな声が漏れ出た。

その声が出たのは現実世界であった。学校の図書室。窓からは赤褐色の光が差し込んでいる。

昼寝の後の口の違和感を感じ、現実世界の自覚を強くする。

夏の18時38分。昼と夜の境界線。

僕は夏のせいではない汗で濡れていた。あの化け物について、はっきりと思い出せる。僕はお化けや未確認生物に恐怖を覚える質ではないが、何故か模生類に対する恐怖が身体を支配しているように感じた。その理由は十中八九あのリアル過ぎる夢のせいであった。何せ痛みも不快感も本物だったのだ。きっと足を何処かにぶつけてそれを脳が大げさに感じ取っただけだろうと分かっているが、それにしても同時にハプニングが起こるなんて運が悪いと思う。

時間も遅い。もう帰ろうと思った為、突っ伏していた机の横に転がっている僕の鞄の中身を確認し図書室を出た。

家に帰ってから僕は寝れずにいる間、あの夢について考える。まさか彼程の妄想力が僕にあったのかと考えると少々悶える。模生類。もし現実にいるのなら。馬鹿げたことだが、やはり考えてしまう。余りにもあの夢が現実のような説得力を持っていた為に言葉にできない微妙な不安が僕の胸の上で募っているのだ。

あの少女。あれが化け物なのか。見覚えがあったあの少女が。しかしあの少女は最初模生類らしき何かに食べられていたではないか。いやいや、こんな事考えてなんになるのだ。いやしかしどうしたものかこんなくだらないことにじかんをつかうなんてまったくぼくらしくもないじゃないかくそぅこうなったらなにもかもわすれてむりやりねてしまえばいいんだと、部屋の電気のスイッチを叩くようにして押し。枕の中に顔を埋めこんだ。布団が下に敷いてある布団がやけに熱く感じる。背を向けているのが怖い。

自分でもやけに怖がり過ぎだと思う。しかしもう一度言う。あの夢はやけにリアルだったのだ。

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