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死に戻りをした元極悪魔女は、三度目の人生で初めて恋を知る。  作者: いとう縁凛


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9.2


 上空から何か手がかりはないかと探っていると、時折何か線のような物が見えた。それには色がついているようだが、街の明かりが届かない夜の暗さでは判断できない。飛行魔法を調整して高度を下げると、線のようなものは赤、青、黒、緑だとわかる。四属性の精霊魔法が示す色だ。緑以外は頻繁に流れてきている。

(どうして、緑だけ少ないんだろう……)

 赤、青、黒、黒、赤、緑、青というように流れてくる中で、緑の線の発生源を探す。しかし緑は数が少なく、流れたと思った瞬間に目を向けてもすぐになくなってしまう。

(緑の線!)

 シュッと流れた瞬間を見逃さず、そちらへ向かう。しかしそれ以降、緑の線は流れなくなってしまった。だから確認した方角だけを頼りに進む。

 三番街と二番街の境目の道路付近で、黒い塊が見えた。その場所には近づくことができ、高度を下げている途中で黒い塊が人だと気づく。フリッカは高度調整をやめ、落下速度を上げる。そして地面にぶつかる直前で風を出し、着地する。

「ナタリーさん!!」

 落下している最中に、見知った人物を発見していた。着地してすぐに駆け寄る。

「ナタリーさん!! オロフ君!!」

 道に積み上げられていたのは、ナタリーやオロフなど一属性を扱う魔術師ばかり。その中で緑の髪はナタリーだけで、今まで見えていた緑の線はナタリーが出していたのかもしれないと思う。

 その緑の線が、飛ばなくなった。

(まさかっ……)

 フリッカはナタリーの口元に耳を近づける。かろうじて呼吸はしているようだが、「世界の至宝魔術師様は永遠」と虚ろな目でずっと言い続けている。どこかで聞いたような言葉だったが、フリッカはひとまずここにいる魔術師たちを回復させることにした。

広域回復(ブレードヴォード)!」

 倒れている魔術師たち全員に回復魔法をかける。一番近くにいたナタリーからオロフ、他の魔術師という順番で体を起こす。

「ナタリーさん。一体なにがあったんですか!?」

「え、えーと……なにがあったんだっけ……そう、世界の至宝魔術師教の教祖様が来て」

「……その怪しげな宗教、なに?」

「やだなぁ。フリッカちゃんを崇める集まりだよ」

「虹色の純白魔導師教と、創世の魔術師教もありますよ」

「三番街ではこの三つが強いかなぁ」

「……その教祖って、男だった?」

「うん。男の人だと思う。フリッカちゃんのこと絶賛してた」

 恐らく、リレイオが検証を実行するための布石だろう。魔術師から魔力を吸い上げるための。かなり計画的に考えられているようだ。

「その教祖に、ここへ来いって言われたの?」

「違うよ。最初は警邏隊の庁舎にいたんだけど……いつの間にか、ここにいた」

 どういうことかと思っていると、三番街の方からホグヘートに似た鳥型の何かがぐったりとした魔術師を運んできた。そして多くの魔術師たちが倒れていた辺りに投げ捨てる。駆け寄り呼吸を確認すると、息をしていた。

 すぐに回復魔法をかけると、その魔術師も体を起こす。そしてきょろきょろと周囲を窺っているようだ。

「ああやって、私も連れてこられたのかな」

「そうかもしれない」

 ナタリーと話しながら、フリッカは三番街へ入ろうと試みる。しかし相変わらず見えない膜に弾かれてしまった。

「ナタリーさんの力を貸してほしいんだけど、良いかな?」

「フリッカちゃんのお願いなら何でも手伝うよ!」

 ドンと胸を叩いて快く答えてくれたナタリーに、超回復薬(ヴィクティグヴォード)をかける。しかし魔力は回復していないと言われたため、器に入れられた回復薬として渡す。それを飲んだナタリーは三番街内に戻った。

(やっぱり……わたし以外は入れるんだ)

 ナタリーだけでは何かあったときに対処ができないかもしれないと思い、フリッカは自ら手伝いを名乗り出てくれたオロフや他の魔術師たちにも協力を求めた。

(これで、エドラ達討伐隊所属の魔術師も救えるはず)

 緑だけ見える線が少なかったのは、単純に風の魔術師が少ないからだ。討伐隊には回復薬と器を作る魔術師がたくさんいる。だから、三色の線も多かった。

(あとは、あの線がどこに流れているかだ)

 フリッカは再び飛行魔法で上空へ行く。ナタリーたちに協力してもらっているから、場所を突き止めるのは時間との闘いだ。しかし、大体の予測はできている

(やっぱり! あそこに流れた!)

 ノエルが捕まっている場所だ。リレイオと二人きりで話しているときにはなかった、大きな山の方へ流れていった。魔力を集めているあれが、恐らくリレイオが作り出そうとしている魔物なのだろう。

 フリッカが場所を特定すると同時に、四色の線が途絶えた。三番街へ戻ったナタリーたちが、他の魔術師を連れ出せたのだろう。

(思い通りになんて、させない!)

 フリッカは山に精霊魔法で攻撃しようとして、思い留まる。魔力を集めている物体に、魔力をぶつけても吸収されてしまうだけだろう。

 山の上で飛行を続ける間にも、フリッカから白い線が山へ流れているような気がした。このまま近くにいても魔力を吸われてしまうだけだと思い、白い線が流れないぐらいの距離を取る。三番街と二番街の境の辺りに行けば、魔力を吸われないようだった。

(……どうしよう。せっかく動き出す前に見つけられたのに)

 魔力を集めている魔物を討伐しないと、ノエルを救い出せない。何か方法はないか。

 魔術講義を受けていたときのことや、一度目や二度目の人生のことまで思い出して方法を探す。

「あ……もしかしたら、いけるんじゃない?」

 思いついたのは、一度目の人生。フリッカは家族として飼っていた野鳥を生き返らせるため、魔力を注いだ。それはむくむくと膨れあがっていた。その姿を見て、一度目のリレイオが慌てて土魔法で野鳥を閉じこめていたはず。

(……そう、魔力太りした魔物未満って言ってたよね? それなら、逆に膨大な魔力を注いだら?)

 むくむくと膨れあがっていた元野鳥。もしあのまま魔力を供給され続けていたら。

 活路を見いだし、フリッカは魔力を吸収する大きな山の上まで行った。


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