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死に戻りをした元極悪魔女は、三度目の人生で初めて恋を知る。  作者: いとう縁凛


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第六話 犯人確定


 突然の雨に降られたフリッカとノエル。対照的に、濡れていないリレイオとルヴィンナ。飛行魔法は火と風を使うから、リレイオとルヴィンナが力を出し合えば可能だ。二人が飛んできたことによる上昇気流でできた雨雲だったのだろう。

「ここで暮らすって、島の慣習は?」

「婚約者同士の間に子供が産まれるまでは、別に島で暮らさなくてもいいんだ」

「そういうもんなの?」

 十六歳から二十歳になるまではディーアギス大国で生活しなければならないという慣習。その後の選択肢は大国で暮らすか島で暮らすかの二択だ。島で暮らすなら島の発展のために子供を、子供が産まれてから婚約者から夫婦となる。そんな決まり。

(……よく考えたら、ちょっと変……?)

 まず、島で暮らすか大国で暮らすかという選択。島で暮らすなら夫婦となるべく子供を、大国で暮らすなら自由。

 次に、婚約者同士でありながら大国で暮らす場合。島で暮らさない以上、子作りの義務はない。そうなってくると婚約者同士である必要性もなくなってくる。

 婚約関係は、本人同士が決めることもあるだろうが、親が決めることが多い。十ある魔術師一族の中で裁量権を持つのはエネル一派のみ。一族の長子同士が夫婦となると、他家に入った一族の名前は消滅する。

 だから、長子は他家の長子以外と姻族になるのだ。自分の一族の名前を残したいから。

(そういえば、ルヴィンナとリレイオの婚約は、二人とも長子なのにどうやって決まったんだろう)

 島の慣習のことを考えていると、ノエルがフリッカの前に出た。

「エイクエア諸島の方から連絡をもらっているよ。討伐隊の方で働いてくれるんだってね。先程サージュ嬢が名前を呼んでいたけど、きみがリレイオ君でそちらのレディがサージュ嬢だね」

「はい」

 ノエルがルヴィンナのことを呼び、フリッカは思わず返事をしてしまった。

「あー……そうだね、サージュ嬢もサージュ嬢だったね」

「わたしの父が、ルヴィンナのお父さんの弟なんです。一族はみんな姓が同じでややこしいですよね」

「うーん、そうだなあ……サージュ嬢が二人だと呼び方に困るし、婚約者のリレイオ君の前でサージュ嬢を名前で呼ぶわけにもいかない。サージュ嬢、もとい、フリッカと呼んでも良いかな」

「は、はい。問題ないです」

 ノエルと話しつつ、フリッカは初めて名前を呼んでもらえたことに思わず照れる。ふわふわとした気持ちが溢れてきて、思わず笑みが零れた。

 視線を感じ、リレイオと目が合う。そして慌てて口元を覆った。

(……なんか、怖い)

 リレイオは真顔だった。何を考えているかわからず、今までのことを思い出す。リレイオが、フリッカに執着していた。三度目の人生では初めて、門出の日以降に現れている。

(……部屋に侵入した容疑者の一人だし、わたしの態度一つでノエルさんに迷惑がかかっちゃうかもしれない。気をつけないと)

 フリッカが考えこんでいる内に、話が終わっていたようだ。濡れてしまった服を一度着替えて、ノエルが討伐隊の庁舎へ二人を案内するらしい。

 フリッカも濡れてしまっていたためノエルたちと一緒に移動する。四人で馬車に乗り、フリッカはノエルの正面。リレイオは斜向かいに座った。ルヴィンナの方なんて一切見ず、フリッカばかりに目を向けている。真顔だから、何を考えているのかわからない。

 ルヴィンナはリレイオを見て、リレイオはフリッカを見る。見られているフリッカはリレイオと話さない。そんな状況で馬車の中は四人も人がいるのに沈黙が続く。

 ノエルの屋敷に着き、ノエルが先に下りた。そして続くようにフリッカも下りる。

「フリッカ? どうしてここで下りるのかしら」

「えっと……」

「実は今、フリッカの部屋には帰れない状態なんだ。だから、その状態が解除されるまでは僕の家で過ごしてもらっている」

「ふぅーん、そうなの」

 ルヴィンナからの質問にまごついていると、ノエルが答えてくれた。何か考えがあってのことなのか、偶然か、ノエルはフリッカの部屋に誰かが侵入したことを伝えなかった。

(……リレイオとルヴィンナが容疑者の可能性が高いって、伝えておいた方がいいよね……)

 従姉妹と幼馴染みだ。確実な証拠もない状態で、調査の範囲を狭めてはいけない。

(もう少し……あと一つでも、特定できるなにかがあれば)

 そう考えて、侵入者を調査しているのは警邏隊だったと思い出す。ノエルはたまたま、フリッカを送って帰る前だったから駆けつけてくれただけだ。そしてそこに魔物がいた。だから、討伐隊の隊長として動いた。それだけのこと。

(……よく考えたら、ノエルさんに甘えっぱなしだな)

 侵入者とムールビーを持ち込んだ容疑者が、海を越えて行った。わかっている事実は、それだけだ。侵入者が部屋を荒らした後に、ムールビーを持ち込んだ魔術師が来たのかもしれない。

(同一犯だと考える方が、自然な流れだけど)

 リレイオとルヴィンナは、ポーチまで寄せた馬車の中で待機してもらう。そしてフリッカはノエルと一緒に、濡れた服を着替えるため屋敷へ戻った。


今日は夕方ぐらいまで、大体一時間に一本更新します。

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