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死に戻りをした元極悪魔女は、三度目の人生で初めて恋を知る。  作者: いとう縁凛


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4.5


 翌日。ノエルから三日連続で依頼を受けた。またノエルの家に行き、今度は手紙便と小包便だ。宛先はどちらもヒューイ。

「それなら、手紙を小包の中に入れてしまえば、小包便の二十リリイだけで余計な料金はかかりませんよ」

「いや、これでいいんだよ」

「はぁ……ノエルさんが良いなら、良いんですけど……」

 料金を受け取り、手紙便で一羽、小包便で二羽分の鳩を出す。そしてそれぞれに魔力を送り、ヒューイまで届けてもらう。パタパタと羽ばたいた鳩たちは、ヒューイがいる警邏隊の詰め所に飛んでいく。

 一度目の失敗を繰り返さないために、受け取ってもらったらそれがフリッカにわかるような仕組みにした。手紙と小包を相手が受け取ったら、鳩たちがくるりと一周する。その魔力の流れを感じ取る、というものだ。

「あ、今隊長さんが受け取ってくれたみたいです」

「そうか。ありがとう」

「では、本日は終了ということで、わたしは帰りますね」

「今日も送るよ」

「あの、毎日送って頂かなくても大丈夫ですよ。ノエルさんも忙しいですよね? 討伐隊の隊長ですし、色々とやることがありますよね?」

「ここのところ魔物の報告は聞かないし、今はサージュ嬢を家まで送り届けることが仕事かな」

 拒否しても、ノエルはめげない。そして結局、フリッカが折れて送ってもらうことになっている。そんなやりとりを昨日もしていたため、フリッカは今日も諦めた。

 フリッカ自身、ノエルと一緒にいられることは嬉しいのだ。

「…………わかりました。それでは」

 今日もお願いしますと伝えようとすると、荒れ狂うような馬の足音が聞こえ、人の足音が近づき、その人物を制止するかのような声がした。絨毯がしかれていても尚聞こえていた荒々しい足音は、客間の前で止まる。と、同時に、扉がパーンと開け放たれた。

「ノエル!!」

「あーあ、来ちゃったか」

「来ちゃったか、じゃねえ!! 何なんだよ、今日の荷物は!!」

「すごいよねえ。あの大きさを送っても二十リリイだよ? フォレット家推薦って、ちゃんと宣伝しておいてよ?」

「ああ、それは抜かりなく……って、そうじゃねえ!! 手紙は百歩譲って許そう! だがな、ただの石を送ってくるんじゃねえよ!」

「え、石?」

 小包便の重さを確認したとき、確かに少し重たいと思った。しかしまさか、それがただの石だなんて思わない。

「えっと、ノエルさん? なぜ石を??」

「石であることに意味はないよ。鳩合便を利用させてもらうのに、手紙ばっかりだと申し訳ないなって思って」

「それで、石ですか……料金を支払うのはノエルさんなので良いんですが……石は、どうなんでしょう」

「そうだねえ。芸がなかったか」

 はははと笑うノエルは、全く悪びれた様子がない。だから逆に、石をヒューイに届けたことに意味があるような気がしてきた。

「っは。もしかして、隊長さんが鍛錬できるようにあの重さの石を贈ったということですね!」

「ああ確かにな。あの重さがあれば鍛錬も捗るって、そんなわけあるか!!」

「ヒューイ。うるさい」

「うるさいって、お前っ……」

 端的で短すぎるノエルの指摘に、ヒューイががくりと項垂れる。そんな二人を見て、フリッカは思わず笑ってしまった。

「お二人は仲が良いんですね」

「腐れ縁だよ。従兄弟みたいなものかな」

「なるほど。それなら納得です」

 俺だけが苦労しているんだよと言うヒューイも一緒に外へ出た。そしてヒューイと別れると、馬車に乗り込む。

 馬車に乗ると、ノエルは必ずフリッカを見つめる。何か話してその気をそらそうとするのだが、目が合って恥ずかしくなるばかり。馬車で送ってもらう時間は、幸福なようでいて、拷問に近い。

 これだけの態度だ。ノエルがフリッカを少なからず好いてくれている可能性が高い。しかしそれならそれで、言葉にしてもらった方が緊張しなくていい。いや、そうなったらなったで別の緊張感が生まれるかもしれない。

(……貴族の人は、何か特別な手順でもあるのかな?)

 フリッカは、恋愛経験が皆無だ。誰かに告白したこともなければ、告白されたこともない。もしかしたら貴族は明確な言葉にせず、察する文化なのかもしれない。そんなことを思うが、ノエルは距離感が近いだけで違う可能性もある。

 ノエルはフリッカを想ってくれているかもしれない。そう思いたいが、それが勘違いだった場合、恥ずかしすぎる。

 だからフリッカは、今日もノエルの気持ちを確認できないまま広場で馬車を降りる。そしてそこから家まで、徒歩で送ってくれた。

「今日も、ありがとうございました」

「五階まで大変だよね。抱えていこうか?」

「い、いいえっ。結構です」

 ノエルの距離感には慣れざるを得なかったが、今みたいな突拍子もないことを言われると思わず顔が赤くなってしまう。そんな顔を見られないように、フリッカは急いでノエルの前から離れた。


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