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死に戻りをした元極悪魔女は、三度目の人生で初めて恋を知る。  作者: いとう縁凛


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3.7



 翌朝。フリッカは沐浴をし、料金表を抱えて大衆食堂へ行った。女将には宣伝をお願いしていたが、具体的な金額は伝えていなかったのだ。これぐらいなら、庶民でも利用できそうだねぇ。そんな声を聞きながら、三番街内の貴族邸が集まる場所へ行く。

「散策のときに来ていたけど、やっぱり大きいなぁ……」

 フリッカが住んでいるような、集合住宅ではない。一軒家で、敷地が広い。門が大きく、庭もついている家が大半だ。

 正門まで行くが、門は閉ざされている。

「……営業をと思ったけど、どうすれば話せるんだろう……」

 まずは一軒目と、集合住宅街から一番近い屋敷に来た。門の近くに人がおらず、門扉の隙間から中を見てみても、誰も見えない。

 人がいなければ営業も何もない。屋敷内の人と話す機会がなくて、思い立った。

「はっ。だから、貴族様は訪問する前に手紙を出すのか!」

 何日の何時ごろ伺う。その手紙を先に出しておき、訪問して迎えてもらうのだ。そのための配達業者は、お抱えの人がいるかもしくはその業者へ届けるのだろう。

「あぁ……それなら、その配達業者へ仕事をもらいに行く……? でも、そもそも貴族様とか偉い人しか使わないなら、結局わたしが参入する余地はないんじゃ……」

 がっくりと項垂れていると、様子を見ていた屋敷で動きがあった。馬丁が厩舎から白馬を移動させている。恐らくこの家の主人が出かけるのだろう。

 出かける前に営業をかけたら迷惑だろうかと思ったフリッカは、自分の幸運に歓喜した。

(え、うそ……ノエルさんだっ!)

 立ち襟の服を着たノエルが、鞍を着けられている白馬に顔を寄せ、笑顔を見せている。思わずその笑顔を凝視してしまったが、ノエルが乗馬した。

(やばい!)

 別に何もやましいことはしていないのだが、一軒目からノエルの自宅を発見してしまった。ノエルへの気持ちもあり、付きまとい行為だと思われたくなかったこともある。

 フリッカは、急いで集合住宅街へ走った。

 そして、ノエルが馬で去って行ったことを確認し、ノエルが行った先を見つめる。

「確かノエルさんは魔物討伐隊の隊長さんなんだよね。回復薬を作っている魔術師はたくさんいるってエドラが言っていたけど、討伐隊ってどういう人がいるんだろう。貴族様、は、いなそうかなぁ……」

 一度目の人生のとき、フリッカはドッドファール伯爵の家で世話になった。伯爵という立場だからか、そういう役職だったのか、ドッドファール伯爵は滅多に外へ出なかった。ノエルも貴族だから、討伐隊を纏めているだけかもしれない。

「あれ。でも確か、魔物を見つけたら容赦なく討伐しているって噂になってたよね? ということは、ノエルさんも現場に行っている? 隊長さんが行くってことなら、他の貴族様も行く??」

 色々と考えこんでいるうちに、ノエルの姿なんて全く見えなくなっていた。元より精霊魔法を発動していなければ、馬の足に人が敵うはずもない。

 営業はかけられなかったが、ノエルの自宅を知れたと喜ぶ。これは幸先いいぞと、他の屋敷にも営業をしにいくことにした。


 結果、惨敗。ノエルの自宅を見つけたときに痛感していたのに、懲りずに貴族の屋敷に行った。しかし運良く誰か来ても、身分が確かではないフリッカの話を聞いてくれる人はいなかった。

 エドラに討伐隊の庁舎を聞いて営業をする方がまだ良いかと思いながら歩いていると、店員から声をかけられた。

「そこの魔術師さん」

「はい? わたしですか」

「そそ。魔術師さんみたいな髪色って初めて見たけど、もしかして玉の輿狙ってる?」

「玉の輿?」

「貴族様や裕福な人が住む方から来たでしょ? だからそうかなって」

 そう言いながら、店員は手の平大の姿絵をいくつか持ってきた。

「一番の玉の輿を狙うなら、我がディーアギス大国の双子の王子のフレデリク様とセオドリク様。お二方ともすでに結婚してお子さんもいるけど、王族は一夫多妻が認められているんだ。何番目かの妻になれると思うよ」

「……一夫多妻……」

「王族は血を残さないといけないからね。それで次にお勧めなのが、独身の最後の砦。三番街に住むノエル様だ。五年前は婚約者がいたようだけど、今はいない」

「! その、婚約者の方とはどんな方でしたか」

「おっ。ノエル様に興味がありだね。それならちょっと待ってて。ノエル様の姿絵は人気だからいくつか種類があるんだ」

 店員が店の奧へ行くと、全部で五種類の姿絵を持ってきた。

「魔物討伐隊隊長、ノエル・フォレット様。はにかむ笑顔、執務姿、帯剣姿、普段着姿、愛馬とじゃれる姿。この五枚が一組で二百リリイでどうだ」

「買います!」

 ノエルの貴重な姿絵だから、もちろん即決だ。

 しかし購入して手の平大の姿絵を見ているときに、我に返った。

「……こ、この姿絵は合法のものですか」

「もちろん。貴族様は姿絵を残したがるから、絵の注文が入ったときに確認をしてある。売り上げの一部を貴族様へ謝礼として渡しているしな」

「なるほど。そういう商売方法なのですね」

 色々な商売方法があるものだと思いながら、姿絵屋を出る。買ったばかりの大事な姿絵五枚を無くさないように、鞄へ仕舞う。


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