表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/128

088.ダンジョン制作

「さてそれじゃあ、通路を作る前に呼び出す魔物を決めようか」


ここは21階層の入り口、とはいえ階段の下にはとりあえずで通路が拡張されているだけだけど。


このあと通路を伸ばしていくわけなんだけど、作ってから魔物が自由に動けないとかってことになると困るので最低限方針は決めておきたい。


「また死霊系になさいますか?」


「んー、どうしよ」


個人的に死霊系の魔物を重用しているこのダンジョンだけど、別に俺自身がスケルトンとかリビングアーマーを好きなわけではない。


ただ基本的に魔物は冒険者を殺さずに倒されるのが方針なので、それを普通の生き物にやらせるのは心が痛むっていうだけなのよね。


その点死霊系は元から死んでるから安心、って思考は人道的な配慮に欠けるかもしれないけど既に俺は魔物だしね。


おのれこの世界の神め、俺に残虐行為をしても心が痛まない冷徹さを植え付けるなんて許せねえよなあ!!!


まあスケルトンくんたちに入ってるのはそもそも人間の霊じゃないんですけどね。


むしろ召喚してるスケルトンが全員話せたりしたらめんどくさいし。


基本属性が引きこもりだから人の相手とか嫌いなんよ。


なんて閑話休題。


「折角だし、ゴーレムでも呼び出そうか」


既に一桁階層に設置してあるので、複線回収的な意味で丁度いいだろう。


あっちも無生物だしね。


「ですが主様、ゴーレムですと階層に対して戦力過剰かと」


「んー、確かに」


11階層からはシルバー等級が問題なく歩けるくらいのハードル設定をしていたわけだが、21階層からはシルバー等級でも何割かは魔物に負ける程度の戦力を並べる予定だ。


ゴーレムはシルバー等級のパーティーであれば戦える相手ではあるのだが、それを雑魚として並べると毎回全力戦闘すぎるという問題が発生する。


ゲームなら全力戦闘でもしばらく繰り返せばレベルが上がって解決してくれるが、こっちの世界の冒険者はそう簡単に強くはならないので流石に辛すぎるだろう。


「じゃあこういうのはどう?」


そう言って提案を伝えると、ルビィがそれに頷いて答える。


「なるほど、それでしたらよろしいかと」


「それじゃ」


「はい、主様」


迷宮の魔導書をに手を添えるとルビィがそこに手を重ねる。


そして魔力を流し込むと、魔法陣が床に広がり望みの魔物が召喚された。


そこに召喚されたのはゴーレム、なのだが通常よりもサイズダウンしている。


通常のゴーレムが2.5メートルくらいで、今回呼び出したのが2メートルくらいだろうか。


多分自動販売機とよりもちょっと大きいくらい。


まあこれでも圧迫感は結構なものだけど。


「呼び方はどうしよっか」


通常ゴーレムの召喚式をちょっと弄って呼び出したのでこれもゴーレムの範囲内なのだが、とはいえ既に通常サイズのゴーレムを呼び出しているので別の呼称が欲しいところではある。


同じにすると、ルビィにちょっとゴーレム呼んできてって言ったらどっちですか?ってやり取りをする必要が生まれるしね。


んー。


「ミニゴーレム?」


「ミニというほど小さくはないかと」


まあ確かに。


「ハーフゴーレム?」


「ハーフというにはまだ大きいですわね」


「クォーターゴーレム?」


「それでは1/4ゴーレムでは?」


ならスリークォーターゴーレム、いや長いな。


というか正しくは4/5だし。


「ルビィ、なにか案出して」


こういう時は人に丸投げするに限る。


なんてったってルビィは俺よりずっと賢いからなんか良い感じの呼称を考えてくれるはずだ。


「そうですわね、ミドルゴーレム……などでいかがでしょうか?」


「採用」


ということでお仕事終了~。ではないな。


「メイン戦力はミドルゴーレムで、他は基本前の階からの続投でいいかな」


「そうですわね」


ちなみにミドルゴーレムは身体が一回り小さい関係で通常ゴーレムよりも強さは控えめである。


質量isパワーだからね、あと装甲も薄いし。


おまけで使用する魔力量も通常のゴーレムより少ないんだけど、その辺はルビィにお任せだ。


なので魔導書に手を重ねる必要があったんですね。


決してルビィと触れたいからなんて邪な感情ではないのだ。


「それじゃ、ちょっと腕を広げてもらえる?」


と言うとミドルゴーレムくんが無言で両腕を広げてくれる。


人間は身長と広げた腕の幅が同じ程度らしいけど、彼はそれよりも少し短いかな。


それでも多分180センチくらいはあるし、なにより丸太のように太くて迫力はかなりのものだ。


うちのダンジョンは前衛を2人~3人程度に設定しているので、ミドルゴーレムでも二体程度は横に並んで戦えるくらいの幅は欲しいかな。


「そうなりますと、以前の階層よりも通路を広くとる必要がありますわね」


「だね」


まあ以前から槍などの竿物を振り回すには少し狭い問題があったのでこれは丁度いい機会でもある。


あとここまでくれば浅い階層よりも滞在する冒険者の数はずっと絞られるから、そこまで通路を増やして鉢合わせ防止を考える必要もないっていう点もあるけど。


「とりあえず、両腕の幅×2で計算しようか」


「かしこまりましたわ」


ということで、再びルビィと手を重ねて、ミドルゴーレムくん二体目を召喚。


そして二人を横に並べて、両腕の幅に合わせて通路を作る。


一応、ということで呼んだリッチに頼んでスケルトンを連れてきてもらって、ダブルミドルゴーレムvsスケルトンズで戦ってみてもらったけど素手で戦う分にはこれで問題なさそうだった。


「うん、大丈夫そうだね」


「これでしたら冒険者が相手でも問題はありませんかと」


「んじゃ通路の幅は決定。ミドルゴーレムはその場で休んでていいよ。リッチとスケルトンもありがとね」


【勿体なきお言葉】


そう言って消えるリッチには多くを語らない仕事人の風格を感じる。


ちなみに当ダンジョンで珍しく言葉を喋る魔物の彼等だが、リッチやグリムリーパー同士で意思疎通をして仕事をこなしてくれるので俺のやるべきことはほとんどないからありがたい。


今だとリッチは10階層と20階層で交代制になってるけど、そっちも当人たちでうまく調整してるしね。


それに遅れて上層へと戻っていく再生したスケルトンを見送って、ルビィへと視線を戻す。


「それじゃ、次は通路の構造だね。今回はちょっとやりたいことがあるから長めの通路を確保しようか」


とはいえぶっつけ本番で拡張していくと構造に手癖が出すぎるので、あらかじめルビィと図面を引いていく。


「主様、少々よろしいですか?」


「どうしたの、ルビィ?」


珍しくルビィから質問をされたので応える。


「前から思っていたのですが、なぜ主様の引く通路は全て水平と垂直なのでしょうか?」


「そりゃ、方眼紙でマッピングする時にそうじゃないと困るから……、!!!」


よく考えたら、ゲーム攻略じゃないんだから地図を描く側に配慮する必要も方眼紙で描けるようにする必要もないのか。


全然そんな理屈を考えたこともなかったわ。


「既成概念ってこわいね、ルビィ」


「そうですわね、主様」


今までは直線と直角でしかダンジョンを作ってこなかったから、このルールをなくすと通路を組む自由度がかなり上がることになる。


「改めて考え直しますか、主様?」


「んー、ううん。折角今までこれで統一してたんだし、もうちょっと維持して有効に使おうか」


俺の中に既成概念があったんだから、冒険者の中にもこのダンジョンはこういう構造っていう既成概念が生まれているはずだ。


ならそれを逆手に取る仕掛けも用意できる。


怪我の功名ってやつかな。


あと自由度が上がると考えるのがめんどいからまた今度にしたい。


「あと100階層まで拡張するならこの先もずっと通路のバリエーションは考えないといけないしね」


流石にずっと代わり映えしない構造だと飽きられるだろうし、そういう変化をつけるのはもうちょっと後でもいいかな。


ということでそのまま作業を続け図面は完成。


入り口から少し進んだところが三又に分かれているが、これは20階層で合同パーティーを組んだ冒険者がバラけられる用の措置だ。


基本的に人数が増えるほど稼ぎは減るから、必要がなくなったらすぐ別れられるようにって配慮。


「それじゃ、通路作ってこうか」


「はい、主様」


二人で頷いてまずは十字路の横道を引いていく。


そのまま左手を進んでいき、曲がり角を作ったところで床の高さを一段落とした。


「高さはこれくらいでいいかな?」


「ええ、これでよろしいかと」


下げた高さは足首の高さほど、ちなみにこれは後でもう仕事加えるための前準備だ。


それからダンジョンの拡張限界の1/3ほどを奥に進んだところで、更に一段高さを下げる。


下げた高さは最初と同じくらい。元の高さから比べると太ももの半ばくらいかな。


そしてそこから更に1/3、合計で奥行きの2/3を進んだところで更に一段落とす。


ちなみに通路の進んだ距離はルビィが歩数で測ってくれてるよ。


「んでここをこうして」


階層の入り口の壁に刻んだ設計図をたまに遠視で確認しながら、そのまま通路を引き、ぐるっと回って入口へと帰ってきた。


「よし終わり、これはちゃんと消しとかないとね」


入口に図面が残ったままだとネタバレってレベルじゃない。


折角なら探索もワクワクしてもらいたいしね。


未知との遭遇大事、実際大事。


「お疲れ様ですわ、主様」


「うん、ルビィもお疲れ様。と言ってももうひと仕事あるんだけど」


「ひと仕事ですか?」


「うん、入り口から見て最初の十字路より手前の左右にまだ掘ってないスペースがあるでしょ?」


「そうですわね」


「ここに温泉を作ります」


「なるほど」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ