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087.お約束

「それではまず、イングリッド様の考えをお聞きしたいのですがよろしいですか?」


「もちろんです」


テーブルを挟んで座る俺の言葉に聖女様が力強く頷く。


ギルド長はこっちとあっちの中立の位置に座っているけれど、一先ずはこっちの話の流れに任せる雰囲気だ。


「私たち教会は、神の教えを伝え人々を正しい道へと導くために活動をしています。本日迷宮主様を訪ねたのもその活動の一環となります」


「なるほど」


この時点で冒険者と相性が悪いのがよくわかるね。


冒険者は清く正しくとか嫌いそうだし。


「ちなみに教会の教えの中でダンジョンとはどういう扱いをされているので?」


「聖典の中でダンジョンとは邪悪なものとして扱われ、神と神託を受けた者により滅ぼされた記録が残されています。教義でもダンジョンを含む魔に属するものはそれを滅ぼすべしとされていますね」


「ですがダンジョンの扱いについては冒険者に任されるのが通例だと聞いています」


「その通りです。現実として教会がダンジョンの討伐に乗り出すのは、それが存在することを看過できない場合が主になります」


「つまり、当方のダンジョンがそれに当てはまるかを見極める為にイングリッド様が派遣されたと」


「その認識には一部誤りがあります。私は自身の意思でこちらに赴くことを決めました」


「聖女様は通常そういった仕事を担当されるのでしょうか?」


「いえ、ダンジョンの判断はその地域の司教、または本国の司教及び聖騎士団によって行われます。ですが今回はその判断を促すべき司祭が交代になったこと、更に王都という重要都市に隣接する立地の重要性と緊急性を鑑み、私が自身の目で確認するために来た次第です」


「なるほど」


つまり彼女に無害判定をされれば許されると。


こっちとしては特に害意はないので問題もないんだけど、それでも素直に納得はしてくれないことはわかる。


ということで、聖女様からいくつかの質問を受けたけれど、それはダンジョンの運営目的等、お姫様に聞かれたこととほぼ同じ内容だった。


やっぱり貴族と教会は繋がってたりしないんだね。


必要があれば協調はするんだろうけれど、それでも事前に情報共有をするほどでもないっていうのは貴重な情報だ。


「御答えいただき感謝します。とても参考になりました」


「お役にたてたのならよかったです」


ここまで質問に答えた感触では今すぐ敵対関係になるようなことはなさそうかな。


「最後に、こちらから一つ提案があるのですがよろしいですか?」


俺の言葉に、聖女様は整った顔で応えてくれる。


「どうぞ、迷宮主様」


「それでは、イングリッド様。私に神の教えを教えていただけませんか?」


「……、はい?」


聖女様でも驚いたときは普通の顔するんだなー。




「ただいまー」


「お帰りなさいませ、主様」


三者面談を終えコアルームへ帰るとルビィが出迎えてくれる。


「はいこれ、お土産」


「ありがとうございます。中身は何でしょうか?」


「アイスクリームだよ。ちょっと溶けちゃってるかもしれないけど」


「それでは直ぐに食べられるように用意いたしますわね」


「うん、よろしくー」


包みを開けて中身の容器を取り出して、ついでにルビィがスプーンをくれる。


確認すれば思ったよりも溶けていなかったのは、同梱されていた氷のおかげだろうか。


外は残暑って感じで結構暑いんだけどね。こういう時に魔法って便利だよね。


「主様、どちらがよろしいですか?」


「んー、それじゃ白い方で」


「かしこまりましたわ」


「それじゃ、いただきます」


「いただきます」


ソファーに腰を下ろし、目の前に置かれたアイスを掬って口に運ぶとバニラの甘味が口の中に広がる。


美味しい。


「主様、こちらも一口いかがですか?」


「それじゃあ貰おうかな」


「かしこまりましたわ」


ということでルビィが差し出してくれるスプーンを口に咥える。


こっちは柑橘系の酸っぱさがあってやっぱり美味しい。


「ルビィもはい」


「それでは、失礼いたしまして」


ということで俺のスプーンをルビィがぱくり。


これって間接キスでは?なんて話はもうずっと昔に通りすぎたけどやっぱりこういうのは好きです。


「それで、教会との話し合いはどうなりましたか主様」


「定期的に会って話をすることになったよ。とりあえず次は五日後」


「それは……、また手間が増えますわね」


「そだね。まあ言ってもしょうがないけど」


むしろ最大級の厄ネタにしては穏当に話がまとまった方ではある。


問題は、彼女たちが信仰する神がおそらく俺をこっちの世界に送り込んだあのショタ(仮)だろうってことなんだけど。


アレを信仰しろって言われても正体知ってるだけあって絶対無理だわ。


ノリからして威厳?尊敬?なにそれ美味しいの?って感じだったし。


でもお前らの神性格クソじゃん?とか口が滑らないように気をつけないと。信仰の対象をディスったら流石に戦争不可避だわ。


「まあとりあえず情報収集と対策は後で考えるとして今は21階層のことを考えよう」


「かしこまりましたわ、主様」


教会の対策も大事だけど、そろそろダンジョンの改築もしないといけない。


むしろそっちの方が本業だから大切なのだ。


「そんじゃ21階に行こっか」


ということでアイスを食べ終えてから、ルビィと連れ立って21階層へと移動した。

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