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目指すは異世界で最強の王道ダンジョンマスター。~王都徒歩5分『美人秘書』付き~  作者: あまかみ唯
二章

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082.20F⑦

部屋の中にはグリムリーパーとリッチに加えて、更にリッチがもう一体。


突如現れたその姿に合わせて、三体が同時に魔力を集中させる。


「ッ!」


『光の壁よ!』


前兆に合わせて治癒師の防護魔術が展開され、前衛もそれに合わせて身を守る。


そして三体の魔物は同時に、強い冷気を迸らせた。


単体ならそれは、これまでに何度も対応してきたものと同じである。


しかし今回は、位置とタイミングが悪すぎた。


突然のリッチの襲来、そして距離を離していたグリムリーパーとリッチの丁度中央、部屋の正面奥に現れたリッチの攻撃は左右に展開する前衛へと威力を保ったままその身を襲う。


エドガーはなんとか身に着けたマントでやり過ごせていたが、ウレラとネジル、それにノボルトは強い凍傷を負って戦闘継続が困難な状況に陥っていた。


そんな壊滅寸前の状況で、アーシェラの指示が響く。


「ナツメは新しく現れたリッチへ! リーリエは先に戦っていたリッチの相手を!」


「はい!」


護衛を十全に果たすためには少なくともどちらかは主人のすぐ近くに控えているべき状況だが、アーシェラの命令に二人は反論なく行動を開始する。


「エドガー! グリムリーパーを手前へ!」


「ああ!」


ハイセリンの指示で部屋の右奥に誘導されていたグリムリーパーはその手前、部屋の右側へと誘導される。


これは正面中央に新たに現れたリッチとの距離を離すための措置だ。


リーリエもその意図を察し、同じように誘導していく。


これで互いの配置は部屋の左に元からいたリッチ、正面奥に新たに現れたリッチ、右にグリムリーパー、手前に冒険者の後衛となる。


前の配置よりも後衛との距離が近くなるが、部屋の奥に三体並べていると先ほどと同じように広範囲攻撃が重なったときに再び壊滅しかねないので背に腹は代えられない。


そんな配置で一番キツイ位置にいるのは、左右両方から流れ弾が飛んでくる中央を担当しているナツメだろう。


しかし彼女はその大盾と重鎧でどっしりと安定した立ち回りを見せている。


そしてタイマンマッチメイクで一番辛そうなのは、他の二人と比べて実力が一段落ちるエドガーであった。


シルバー等級パーティーの中で唯一前衛で立ち続けていられる現状は、彼の装備の他に優れた反応速度によるものであったが、とはいえ一人でグリムリーパーの相手は荷が重い。


実際に、鍔迫り合いに負けその身に鎌の先端が迫る。


その時、横合いから矢が撃ち込まれた。


グリムリーパーがそれを回避するのに合わせて、エドガーも身を引いて安全圏に退避し、矢を射た本人と接近する。


「経費がかかるが使わせてもらうぞ」


斥候のキュリウスがマジックバックから矢を取り出し番えながらそんなことを言う。


対グリムリーパーに有効な矢は、魔力を持つ素材によって作られるので必然的に高額であり、更に回収できない可能性も大いにあるのでとっておきだ。


「ああ、無事勝てたらネジルと交渉して分配前の必要経費にしてもらおうぜ」


「そうだな」


一瞬だけ軽口を交わし、そのまま前に出たエドガーをキュリウスが援護する。


時に大きく移動しグリムリーパーの死角から体を狙い、時にエドガーの行動を助けるように狙いを定めて放たれるその矢は、完全に後衛の魔術師では難しい前衛への理解と無言の意思疎通があった。


「みなさん、大丈夫ですか」


「なんとかな」


戦闘不能になった前衛は一旦後衛の位置まで下がり、そこで治癒魔法をかけられている。


「前線には戻れそうですね」


「しかしまたアレがきたら同じことの繰り返しだぞ」


今は位置調整をしているとはいえ、三体同時の冷気放出を防ぐのは容易ではない。


それに最初の時と違いナツメまで前線に出てしまっている現状では、それを受けたのちに再び戦線を維持できるかも不明だった。


「それに関しては、私に考えがあるわ」


と意見をしたのはハイセリン。


「その作戦の勝算は?」


「全員がミスをしなければほぼ確実に」


「それは凄いッスね」


「この作戦の要はアーシェラ様よ」


「聞きましょう」


そしてハイセリンが策を伝えると、全員がそれに頷いて前衛が前へ出る。


ネジル、ノボルト、ウレラの配置は最初と同じ、担当を交代して手が空いたリーリエがアーシェラの元へと戻ってきた。


「アーシェラ様、私もナツメと交代しましょうか?」


「いえ、リーリエはこちらで待機してください」


「かしこまりました」


頷いたリーリエがアーシェラの隣で身体の力を抜く。


左右を受け持つ各パーティーは前衛後衛合わせての総力戦となっているが、一人でリッチを受け持つことができるナツメに対する二人はいくらかの余裕があった。


冷気の放出は盾で防ぎ、それ以外も火属性の爆発などはその気配を察して綺麗に避けている。


その他の攻撃も身体のほとんどを隠す盾で完全に無効化していた。


「リッチの相手はどうでしたか?」


「一体なら問題ありませんが、隣のリッチと同時に広範囲の攻撃をされると流石に少し辛いですね。ナツメは平気そうですが」


「リーリエとナツメは役割が違いますからね」


身軽なリーリエが機敏に動き敵を倒す役割なら、重装なナツメはその場で攻撃を受け持ちこたえる役割である。


その役割で実力の優劣が決まっている訳ではない。


当のナツメはどっしりとした立ち回りでリッチへの傷はそこまで与えられていないが、他の二つのパーティーのどちらかが対面している相手を倒せればそれで余裕が生まれるので問題はない。


万が一、更なる追加があればその限りではないが、そこまで考慮する余裕は現状では無かった。


それからしばらくは、安定した戦いが続き、三体の魔物へと順調に傷を与えていく。


このままいけば最初から戦っていた方のリッチは間もなく撃退できるであろうか。


そんな予想を立てるアーシェラへと、ハイセリンが声をかけた。


「アーシェラ様、間もなくです」


「わかりました。リーリエ、仕事を頼みます」


「なんなりとお申し付けください、アーシェラ様」


頷くリーリエと同時に、一塊になって集合しているエドガーネジル両パーティーの治癒師が援護を重ねていく。


『光の壁よ』


『癒しの恵みよ』


『太陽の加護よ』


そして相対する三体の魔物の魔力が高まる気配を察して、魔術師たちが術を放つ。


『火球』


『爆炎』


『火炎渦』


同時に、アーシェラが良く通る声を響かせた。


「全員防御を!」


その号令を受けた全員の魔力耐性が大幅に高まる。


この世界の冒険者は魔力によって肉体の強度を高める他に、魔術や属性への耐性も内在する魔力によって得ることができる。


それがアーシェラの号令によって、今大きく底上げされていた。


そこに補助の魔法が加われば、前回は半壊した三体同時の冷気放出でも受けきることができる。


実際に、リッチの二体とグリムリーパーから放たれた冷気を受けた前衛はそのまま行動を継続し、そして僅かに負った傷も治癒師の術で瞬時に癒された。


ハイセリンの策は単純だ。


この階層に入ってからのリッチとグリムリーパーの攻撃を記憶する彼女は、その中で行動に一定のパターンがあることに気付いた。


それは通常の魔物であればおよそあり得ない行動であるが、それが召喚者である迷宮主の支持であれば理屈は通る。


おそらく、リッチ二体とグリムリーパーという手強すぎる編成への解答の一つとして用意されたものなのだろう。


それをハイセリンはアーシェラたちへと伝え、万全の対策を持ってチャンスとした。


冷気の放出は強力な攻撃だが、それと同時に無効化されてしまえば大きな隙になる。


「おらぁ!」


気合を込めた前衛たちの攻撃に大きな傷を負うリッチたち。


その中でも一番損耗が大きいネジルたちと相対していたリッチへとリーリエの追撃が走った。


大きく切り裂かれたその姿が揺らぎ、そのまま黒い歪みとなって虚空へと消えていく。


「見たかオラァ!」


誇示するようなネジルの叫びに、全体が山場を越えたことを実感しそしてまだ終わっていないと気を引き締める。


残りはリッチとグリムリーパーがそれぞれ一体ずつ。


油断のできない相手ではあるが、それでも一体倒して余裕ができた分も含めて、全てを倒すのにそこまで時間はかからなかった。

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