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073.もうすぐ20F①

「ルビィ、もうすぐだねー」


「そうですわね」


いつものようにコアルームで、ソファーに並んで座り思案にふける。


「ボスはどうしよっか」


「そうですわね」


ちなみにボスというのは、20階層に配置する魔物のことである。


現在の冒険者の最深到達階層は18階層。


しかしダンジョン自体は既に19階層まで準備済みなので、20階層の用意もそろそろ始める頃合いだ。


まあ階層自体は10階層と同じでデカいボス部屋ひとつの予定だからいいんだけど、問題はそこを任せる魔物の選定である。


「流石に10階層より弱い魔物って訳にはいかないよねえ」


「ですがそうしますと、別の問題が発生しますわ」


「だね」


10階層はリッチに任せているわけだが、戦力としてはオーバースペックだったのを途中撤退の演出で誤魔化している現状である。


その階層主のリッチよりも強い魔物を配置したら、実力差が大きすぎてもはや撤退演出するのも茶番になりかねない。


ぐわー、やられたー。(全然ダメージ食らってない)


とか流石に演出としても寒すぎるでしょ。


「んー」


「いっそ一体で相手することに拘らなくてもよいかもしれませんわね」


「たしかに」


じゃあリッチにスケルトンでも従えさせるかと考えると、やっぱりインパクトに欠けるかなあと思ってしまう。


そもそもリッチ単体で強すぎるんだよね。


まあそもそも報酬に見合った丁度良い戦力だと普通に冒険者に倒されかねないから、余裕を持って撤退できるって意味では強いくらいでちょうど良かったんだけどさ。


実際強さのインパクトも相まって掴みはバッチリだったしね。


「何かいいのはいないかなー」


ということでパラパラと魔導書のページを捲る俺。


当然ページを捲ればリッチより強い魔物も載ってるんだけど、それで解決とはならないから困りものだ。


魔力としては30万くらいまでなら無理なく出せるんだけどね。


リッチは魔力消費10万ほどだから、そう考えるとうちのダンジョンも大きくなったなーと思ったり思わなかったり。


相応に面倒事も合ったけどね。


そんなことを考えていると、とあるページが目に留まった。


「ルビィ、これは?」


「グリムリーパーですわね」


グリムリーパー、通称死神。


魔導書に添えられたイラストを見るとその呼び名に相応しく骸骨の顔に長いローブを身に纏い、手に持つ鎌は命を刈り取る形をしていて凄い使い辛そう。


ちなみに死神という呼び名だが実際の神ではない。


「強さはどんなもん?」


「リッチと同程度ですわね」


あと見た目のシルエットもだいたいリッチ。


「魔物としての格はどんなもんだろうね?」


「具体的にはわかりかねますが、そちらもリッチと同程度かと」


呼び出す魔力はおよそ10万。これもリッチと同程度か。


「んー、やっぱりインパクトに欠けるかな~」


「ですがそこまで悪くはない選択肢かと」


「たしかにね」


まあグリムリーパーを20階層のボスに指名しても、冒険者が疑問に思うことはないと思われる。


でもなー、やっぱりパッとしない感が否めないよなー。


うーん、うーん。


「もういっそ俺がボスやれば解決するんじゃないか?」


なんて考えるのがめんどくさくなった俺の提案に、ルビィが当然のような顔をして答える。


「危険すぎるという点を置いておいても、主様では階層主としては不適格なのでは?」


「辛辣っ!」


「主様の軽挙を諫めるのも従者の役割かと」


「そだね、ありがとねルビィ」


「どういたしまして、主様」


正直テキトー言った感は否めないので、ルビィにはお礼を言っておく。


そうだね、そもそも俺は階層主を務められるほど強くないのよね。


なんならスケルトンにも殴り合ってワンチャン負けるし気がするし。


シルバー等級の冒険者と対峙したら秒で斬られますわ。


そういう点ではルビィの方が俺よりずっと戦闘能力は高い。


力もあるし戦闘向けの魔法も使えるし。


じゃあルビィが階層主で、なんて言ったりはしないけど。


危ないし、もしルビィに何かあったらもうダンジョン運営自体やる気が失せるレベルだしね。


「んじゃー、グリムリーパーでいっかー」


「また死霊系ですわね」


「使い勝手がいいからねー」


まず低コストで量産できて再利用も容易。更に雑霊を宿しているだけなどで倒されても心が痛まない。


高コストのリッチなどは知能が高く意思疎通が可能で融通が利く上に、空間を渡れるから撤退演出も自然という優れモノだ。


強くても弱くても使い勝手があってマジ便利。


「そう言えばグリムリーパーってリッチみたいに命令とかは聞いてくれる感じ?」


「知性を持つ魔物ですので、その点は問題ありませんかと」


「ならよかった」


命令聞いてもらえないと困るっていうか、普通に首を刈られそうで怖い。


でも流石に会話できなくても召喚主を殺したりする魔物はいないのかな?


「ダンジョンの呼称が決まる前に呼び出していれば、本当に死霊のダンジョンとなっていたかもしれませんわね」


「完全にそれ系のダンジョンだからね」


リッチとグリムリーパーが揃ってたら、どう考えてもダンジョンマスターのイメージは魂を操る悪の死霊術師系だろう。


そんなイメージを想像していると、脳内に一つのアイディアがピコンと閃いた。


「ルビィ、こういうのはどうだと思う?」


かくかくしかじか。


「なるほど、それは名案だと思われますわ」


ルビィの承認ヨシ!


ということでボスは決定~。君に決めた!


「それじゃあこれに決定で、今から呼び出しちゃおうか」


「はい、主様」


言って俺はルビィと共に魔導書に手を添え、20階層のボスを呼び出した。

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