表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/128

062.王城に行きたくない!

「うお……、でっか……」


王城の目の前まで来て、見上げたその建築物に思わず感想が漏れる。


田舎者丸出しだけど、引きこもりだからしゃーないっすね。


王都の入り口から遠目に、もしくは梟視点で上空からは見ていたけど、実際に目前まで来て見上げるのはこれが始めてだ。


東京ドームとどっちがデカいかな、行ったことないけど。


「確かに、大きいですわね」


「攻めようと考えたら大変そうだね」


「戦力も考えるとかなり難しいかと」


中にいる騎士と兵士、魔術師の数を考えたら攻略するのは相当困難だろう。


騎士団の上位の時点で、高位の冒険者と同等以上の戦力らしいし。


「結界もあるみたいだしね」


城を覆うように張られた結界は、外からの攻撃を防ぐ魔法的な防壁の役割を持っている。


多分普通の魔法じゃびくともしないんじゃないかな。


あんまり強力な魔物はそれ自体の侵入を阻む仕組みなんかもありそうだしね。


本気ならやりようがない訳でもないけど。


「どっちにしろ、そうならないといいね」


「そうですわね」


攻めても攻められても、めんどくさいのは間違いない。


人間と関わるのは探索にきた冒険者もだけで十分なんよ。


そんな話をしながら、城門にたどり着いて衛兵へと声をかける。


「こんにちはー」


「何用だ」


対応が塩。


「これ、なんか呼び出されたんで」


言いながら紙を差し出すと、衛兵がそれを確認する。


いっそ話が通ってなくて門前払いしてくれねーかなーと思ったりもしたわけなんだけど、そういうわけにはいかなかったらしい。


こういうとこはちゃんとしてるね、無駄に。


ちなみにルビィと二人揃って和服はガンスルーである。かなしい。


そういえば、一応ギルドに行って和服はセーフか確認して来たよ。


和服は自体はこの世界にも存在してるけど、国交も存在しないレベルの遠方の国だから着てったら即アウトにはならないだろうって。


完全にセーフとは断言できないから可能ならばもっと無難な格好の方が好ましい的なことはやんわりと言われたけどね。


その程度ならわざわざ配慮もしないかな。


ルビィのリクエストの方が俺にとっては重要である。




城の敷地内へと入ると、そこで待ち構えていた複数の騎士に囲まれて連行される。


全員兜までフルプレートでつよそう。


そうして一旦通されたのは城の中の一室。


一室言っても広めの会議室よりも広いくらいのスペースがあるけど。


「ここで待て」


同じように室内に入り、扉の左右を固めるように並んだ二人組の片方がそう告げる。


うーん、どうも歓迎されてない感じで悲しくなっちゃいますね。


折角なら美味しいお菓子かお茶の一つでも欲しかったけど。


部屋の中に二人、外に六人だったかな?


警備の質としてこれで十分なのかはわからない。


まあ俺もルビィも遠隔人形だから魔力はほとんどないし、それを見て判断されたのかもしれないけど。


もしくはダンジョンマスターとその連れが暴れても十分に制圧できる算段があるのか。


どっちにしてもこっちとしては本体じゃないから気楽なもんだ。


「質問してもいいかな?」


「……」


と騎士様に話しかけてみたけど華麗にスルー。


楽しくお喋りしようと思ったのにショック!


いやマジで、騎士とか貴族とかがどんな感じなのかは結構興味あったんだけどね。


んじゃーしょうがないからルビィと話してますかね。


「この椅子の装飾は細かくて綺麗だね。座り心地はイマイチだけど」


「実利より見栄、ということでしょうか」


「まあ重要じゃない客を待たせる用の部屋みたいだし、座り心地を良くする必要はないって判断なんじゃない?」


「なるほど、むしろ威圧感を与えるにはそちらの方が合理的なのかもしれませんわね」


「でもテーブルは良いね。ツルツルだしピカピカだよ」


「加工もしっかりとされていますわね」


木材というのは簡単に傷がついたりささくれ立ったりするものだが、ここのテーブルは爪先でなぞってみても引っ掛かり一つない。


なんなら俺のあっちの世界のスマホ画面よりもツルツルだ。


「絨毯もしっかりとしてていいね。持って帰っちゃダメかな」


「流石に止められるかと」


「じゃあ帰ったら同じ物作ろっか」


「そうですわね。それがよろしいかと」


なんて話をしながらそこそこの時間を待ち、やっと部屋の扉が外からコンコンとノックされた。


「ついてこい」


再び騎士に指示されたので、そのまま後をついていくと広間へと通される。


「止まれ」


言われて俺とルビィが止まったのは広間から入って少ししたところ。


左右には騎士が並んでいて、その先には偉そうな格好をした人間がまた左右に並ぶ。実際にこの国の偉い人間なんだろうけどね。


そして一番奥には段差で高くなった場所に置かれた椅子に座った男。


肖像画で見たことがあるその顔は、この国の王様だ。


その王様の、隣に立ってこちらを見下ろす男が声を発する。


「王の御前である。頭を垂れよ」


なるほど、こっちの世界でも偉い人間の前での作法は変わらないらしい。


それなら先に騎士が誰かに伝えさせて欲しかったかな。


まあ、どっちにしろやることは変わらないけど。


「お断りします」


と俺が丁寧にお断りをすると、空気にピシッと亀裂が走った。気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ