061.ファッションショー!②
「んじゃ次は」
次なんだっけ?と思ったけどそうそうこれこれ。
こっちの世界の金持ちの服ね。
「主様、よろしいですか?」
「うん、ちょっと待ってね」
俺が着替えを済ませてから少しして、ルビィから声をかけられる。
そのままカーテンを越えると、着替え途中のルビィの姿が見えた。
こっちも金持ち風のドレスなんだけど、背中を締める紐が一人で通すには難しい作りになっているので呼んでもらうようにと先に言っておいたのだ。
「ルビィの背中綺麗だね」
「そうでしょうか、んっ」
「ああ、ごめんね」
「構いませんわ」
この時代にファスナーなんて物はなく、俺が魔法で作ったとしても加工精度がちゃんと出せるかも怪しかったので、背中の左右を紐で綴じる靴紐方式で作ったのだけど、それを通して結ぶ際にルビィの背中に指が触れてしまった。
これはわざとじゃないので不可抗力。
ちなみに腰でピッチリ締めてその下はふわりと広がるロングドレスはかなりの重量がありそうな代物なんだけど、胸元は肩から大きめに開いていて谷間が十分に確認できるくらいの露出がある。
そのまま名残惜しくもルビィの背中とお別れをして、互いに向かい合うと、今度は綺麗なルビィの鎖骨とこんにちはした。
「普段の格好も良いけど、たまにはこういうのも悪くないね」
「そうですわね」
他は厚手の生地で飾られているのに、胸元だけ防御力0というのもこれはこれで。
この格好でダンスを踊ったらとても様になりそう。
まあ俺はダンスの踊り方なんてしらないけど。
「ですがこちらは、外を歩くにはあまり向かないかもしれませんわね」
「たしかに、それはそうだね」
スカートが地面スレスレまで広がっているそのドレスは、少なくとも目的地まで馬車で乗り付ける用の衣装だろう。
ダンジョン前まで馬車を呼んでそのまま王城までってできなくもないけど、流石に手間かな。
まあルビィの衣装の為ならやぶさかでもないけど。
「でもとりあえず、次の衣装を試そっか」
ということで再びカーテンを閉め、互いに着替える。
「それじゃ、次」
ということで三着目はスーツ。
カーテンを開けるとカッチリ決めた装いのルビィがいてとても良い。
「胸はきつくない?」
「この程度でしたら問題ありませんわ」
「それならよかった」
キッチリしたシャツで上までボタンを留めるとルビィの場合はどうやっても胸の部分がパンパンになるのだけど本人は大丈夫なようで一安心。
引っ張られたボタンとボタンの隙間からチラリと素肌の色が見えてるのがとてもセクシーだ。
普段のドレスでも普通に見えてる位置なのに、シャツの隙間から覗くと見ちゃいけないものを見てる気分になるのはなんでだろうね。
「こうしてみると、この装いは露出がとても少ないですわね」
「そうだね、脚もタイツ完備だし」
スカートから延びる脚には黒タイツが履かれているので、露出している部分は首から上と手の先くらいである。
それでもセクシーなんだから不思議。
「特にお尻のラインがとてもいいね」
タイトスカートでシルエットがとてもよくわかるのが素晴らしい。
正面から抱きしめてそのまま撫でたい。
「主様がお望みでしたら、直接触って確かめていただいても構いませんわ」
「ほんとに? それじゃあまた今度お願いしようかな」
「はい、ぜひ」
うーん、これで明日の予定がなければ完璧だったんだけどなあ。
なんて嘆いても仕方ないので、いや、仕方ないか? ぶっちゃけ呼び出しなんて無視してもいいんじゃないか? ちょっとくらい全面戦争になっても……、駄目か。
ということで諦めて次ー。
「ルビィ開けるよー」
「大丈夫ですわ、主様」
「んじゃ」
ということでカーテンをさっと開くと、現れたのはメイド服姿のルビィ。
あー、いいっすね。
ちなみにデザインはクラシックスタイルではなく、メイドカフェの店員が着ているようなオタク文化verである。
個人的にはどっちも好きだけどね。
スカートも膝上で防御力皆無な感じがとてもいいですね。流石に短めの女子高生の制服よりは長いけど。
「この格好は偉い人に仕える格好、を魔改装したものだよ」
「でしたらわたくしにピッタリですわね」
「俺が偉いかどうかはともかく、役割としては合ってるかもね」
呼び方を主様からご主人様にしたら完璧だ。
「でしたら明日からこの格好で主様にお仕えしましょうか?」
「んー、でもやっぱり俺は普段のルビィの服の方が好きかな。たまにはこういうのもいいと思うけど」
具体的に言うと月一くらい。
「主に給仕をする時の格好だから、そういう時に着てみるといいかもしれないね」
「なるほど、そういった役割があるのですね」
白くて大きなエプロンは汚れたらすぐわかるようにって意味があるらしいよ。
「ともあれ、どれもよく似合ってるよ」
「ありがとうございます、主様」
素体がいいのもあるけれど、どの格好のルビィも魅力的だ。
「それじゃこの中からどれにするか選ぼうか」
「主様、最後の一着はよろしいのですか?」
そう、実は最初に作ったのは5着だったけどまだ4着しか試着していない。
していないんだけど……。
「うん、作ってみて思ったんだけど、あれをルビィに着せると俺の性癖を疑われそうだからやめとこうかな」
ならそもそも作るなっていう話だけど、作った時は似合うと思ったんだからしょうがない。
まあ今でも似合わないわけではないと思ってるけど。
「わたくしは、主様がお望みでしたらどのような格好でも構いませんが」
「俺の羞恥心が構うからあれはナシで」
「そこまで言われるといっそ着てみたくなりますわね」
何故か楽しそうに笑うルビィだけど、俺としては断固スルーさせていただきたく候。
「それよりも、今は王城に着て行く服を選ばないと」
「そうでしたわ」
セーフ。
こうして俺の羞恥心は守られた。衣装はあとで処分しとこ。
「んじゃ実際に着てく物だけど、ルビィはどれがいい?」
「わたくしは、主様に選んでいただきたいと思いますわ」
「あー」
ここで自分の好みでって言うのは簡単だけど、俺の格好はルビィが決めたんだから逆は俺が決めるのが筋と言われれば反論できない。
「といっても面白い流れにはならないけど」
「主様に選んでいただけた物でしたら、文句は申しませんわ」
「んじゃ、やっぱり着物かな」
そもそも俺が着てくのが和服だしね。
「それでしたら主様とお揃いですわね」
「パートナーだってわかりやすくていいでしょ?」
「そうですわね」
ということでルビィもご満悦の様子だったので、当日の装いが決まったのだった。
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