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059.外に着て行く服がない

というわけで王城行きが決まったわけだけど、その前に絶対にやっておかないといけないことがある。


「ルビィの洋服を決めようー!」


「主様、その作業必要でしょうか?」


「そりゃ必要だよ。恥ずかしい格好でルビィを王城に行かせるわけにはいかないからね」


「主様も一緒に行きますわよね?」


「そだね」


「でしたらまずは主様の着る物を決めるべきなのでは?」


「えー、俺はいつものローブでいいよ」


いつものローブというのは俺がダンジョンから出て王都に行くときに着ているもの。


どんな感じのやつかといえばフード付きで頭の先から足元まであるのでこれ一枚あればどこでもいける優れものだ。旅人か魔法学校の生徒が着てそうなやつね。


「流石にそういうわけにはいかないかと」


「んー」


まあその場にあった格好をしていく必要性というのはわかるんだけどね。


かといって実際にやらなきゃいけないとなるとめんどくさいわけで。


伊達に前世はプロの引きこもりだったわけじゃないんスよ。


「主様」


わかってるんだけどね、本当はちゃんとしないといけないのは。


「んじゃー、先に俺の着るもの決めちゃおうか」


「はい、主様」


着飾ったルビィと不釣り合いにならないように、ってことでちゃんと選びますか。


「それでは棚を作りまして、ハンガーを作りまして、布を持ちまして、ほい、ほい、ほい」


魔法を使うと棚にかかったハンガーに、そのまま生成した服が引っかかる。


出来上がったのは3着。


「これは普通の洋服ですわね」


作った服の中で一番左の物は、王都ですれ違う金持ってそうな市民の格好を参考にしたので一番普通の洋服。


といっても中世ヨーロッパなりの普通だけど。


21世紀の日本で着てたら完全にコスプレだし。


あと見た目は普通だけど着るのも脱ぐのも面倒くさそうだしカッチリしてて着心地も悪そうなので普通に着たくない。


「次いでこちらは、前が閉じないローブのようですわね」


「それは羽織ってから腰を帯で留めるやつだからね」


二つ目は着物。時代設定を損なわずにフォーマルな格好をするならこれかなってイメージの産物だ。


ハンガーにかけたままだと前が開いてて防御力が低い感じになってる。


「ちなみにこれは俺の元居た世界の伝統衣装だよ」


「そうなのですね」


「うん」


まあ現代で着てるのは落語家か将棋指しくらいしか見なかったけど。


「主様に思い入れがあるのでしたら、この洋服もよろしいかと」


「思い入れはそんなにないけど、異文化の相手が来たってインパクトの演出としてはありかなと思わなくもないかな。まあ大きな問題もあるけど」


「とおっしゃいますと?」


「この格好がこっちの世界でも存在してたらクソめんどうなことになる」


「なるほど……」


日本刀が存在してるから和服が存在しててもおかしくないんだよね。


んでダンジョンマスターが他国の民族衣装着て王城に来たらどうなるかって想像したら、どう考えても面倒な話になる。


下手したら意図せず国際問題だよ。


「それはそれで面白い気もするけど、とりあえずは一旦保留かな」


「では次ですわね」


「うん」


「こちらは……、スッとしてシンプルな作りですわね」


「そだね、この世界の普通の格好に比べると大分シンプルかな」


ということで最後に飾ってあるのはスーツ。


見た目の印象はキッチリしてるけど、デザイン自体はシンプルなんだよね。


この世界の金持ちの服は結構ゴテゴテしてるし、おそらく貴族や王族もそんな感じだろう。


まあ一般市民や農民はもっとシンプルだけど。


ちなみになんで作ったのかと言われればなんとなく。


「ある意味時代を先取りしているデザインだからインパクトはあるかもしれない」


少なくともこの時代の格好からは100年以上先のデザインなんじゃないかな。


まあこの世界があっちの世界と同じ服飾史を辿るとも限らないけど。


「ちなみにこれは、あーなんだろ、俺の元居た世界の一般的な知的労働者の仕事着の一つ、かな?」


元プロひきこもりの俺には詳しいことはわからんけど。


「なるほど、主様は前の世界ではこちらの格好を着ていたのですか?」


「ううん、着たことない」


「ではなぜこの格好を……?」


「なんとなくかな」


「なるほど……」


ルビィがなんとなく察したように納得する。まあこの話題は深掘りされても困るぜ。


「ということで、三つ用意したけど、ルビィはどれがいい?」


「わたくしですか?」


「うん、個人的にはぶっちゃけどれ着てもコスプレ感あるからどれでもいいよ。もちろん真ん中のでもオッケー」


ルビィが選んだやつならもし国際問題になろうとも俺は一向に構わん。


「あとルビィがこういうのが良いっていうのがあったらそれでもいいし」


「それは難しいですわね」


まあそうか。ダンジョンの中には参考になるものがないしね。


「あー、そうだ。こういうのもあるよ」


ということで横にもう一着追加する。


「これは、三着目と似ていますわね」


「そだね」


ということで用意したのは執事服。


スーツとの具体的な違いは?


俺にもわからん。なんとなくイメージで作っただけだし。


強いて言うならこっちは白と黒のコントラストがカチッとしてるかな。


「ちなみにこれは偉い人に仕えるための格好だよ」


「それは主様の役割にはそぐわないのではありませんか?」


「いっそ俺がこれを着て、ルビィがダンジョンマスターってことにするのはどう? 名案じゃない?」


「わたくしに主様の代役は出来ませんわ」


「そっかー、残念」


顔だけ見てどっちの方が偉い人か聞いたら10:0でルビィが選ばれるだろうから名案だと思ったんだけどな。


「まあいいや、それでどれにする?」


「そうですわね……、やはり一番無難なのは一つ目でしょうか」


「無難なのじゃなくてルビィの好きなのを選んでいいよ」


「よろしいのですか?」


「うん、不安ならあとで問題があるか確認することもできるしね」


「それでしたら……、こちらでしょうか」


そしてルビィが選びなおしたのは二つ目の和服。


「じゃあこれで決定で」


「よろしいのですか?」


「うん」


見た目が気に入ったのかそれもと別の理由があるのかは知らないけれど、特に文句はない。


「それじゃ今度こそルビィの着てく服を選ぼうか」


ということで次はルビィのターン。ある意味俺のターンでもある。

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